LaVern Baker・コンサート・リポート

1995年9月15日、The Cinegrill (ハリウッド)
LaVern Baker

アトランテイックでの最初の女性ロックンロール・シンガーの一人、ラヴァーン・ベイカー。"Jim Dandy"、"Tweedlee Dee"などのヒットで知られる彼女の名前は、ロックンロール・ホール・オヴ・フェイムにも刻まれている。

この日会場となったクラブ、シネグリルは、彼女にとって20年振りとなった西海岸での公演を収録したライヴ・アルバム"Live in Hollywood `91"(Rhino R2 70565)の会場でもあった。ここ最近糖尿病による闘病生活を送っていたため、この公演は2年振りの顔見せとなった。

バンドのメンバーに紹介されてステージにあげられた彼女は車椅子に乗っていた。両脚とも膝から下がない。糖尿病で厳しい日々を送っていたことは聞いてはいたが、まさか両足切断というところまで行ってしまっていたとは!

だが、この日の彼女にはそういう自分の現状に悲観するようなネガティヴな側面は全くと言っていいほどなかった。「人は私に、辛いでしょう、と同情の言葉をなげかけてくれるんだけど。」と彼女は切り出す。「でも、私には神様がついていてくれるんだもの、そんなに辛い気持ちなる訳がないでしょ。」彼女はあっけらかんとそういってのけた。

ユーモアたっぷりのお喋りを挟みながら新旧取り混ぜた彼女の代表曲が次々と飛び出す。闘病生活でやせて別人のようになってしまった彼女だが、その表現力、声のつやは不思議なくらい健在であった。辛いことがあっても、与えられた人を常に肯定的に捉えてエンジョイする。そんな彼女の姿勢に感銘を受けたコンサートだった。

お待たせの"Jim Dandy"では、思わずそばの黒人のおじさんが踊りだした。リトル・リチャードの"Shake A Hand"では、メンバーの合唱に観衆も加わり、一体感が生まれていた。90分に及ぶ彼女のショーは、彼女の健在ぶりをたっぷり見ることのできる貴重なひとときだった。

この日バックの演奏を務めたメンバーは、オルガンがロイ・アレクサンダー。ロイ・ゲインズとの活動でも知られる人だ。ギターには、バリー・マーシャルとワッツ地区出身のレイ・ベイリー。ベイリーは、最近ズー・エンターテインメント・レーベルからデビュー作がリリースされて注目を浴びている人だ。一歩下がって黙々と弾いていたが、メリハリの効いたリードは、さすがだと思った。 (陶守 正寛)




訃報!!(5/25/97追記)
ラヴァーン・ベイカーが亡くなったというニュースが飛び込んできました。やはり、糖尿病が悪化し、それが原因だったようです。1997年3月10日、ニューヨーク市で死去したそうです。享年67歳。苦しみにもめげず、最高なライブを見せてくれたラヴァーン・ベイカー。もう見れないと思うと残念でしょうがありません。合掌!

LaVern Baker
一緒に撮った写真もいい思い出です。
アルバム紹介

LAVERN BAKER




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