ベスト10ていつも悩むんだよな。しかもミレニアム、Y2Kなんて言って全世界的に大きな区切りを迎えようとしている昨今、1999年リリース作品だけでも熾烈な順位争いが自分の中で繰り広げられたのだ。最終的に40タイトルぐらいまで絞ってやっとこさの思いで上の10枚を選んだ次第。『Chess Story』、『マックスウェル・ストリートの伝説』やゲイトマウス、ラッキー・ピータースン、ポール・ジョーンズの新作もすっごく良くって大好きなんだけど、他の方たちが選ぶだろうと、『胆』とジャイヴの2本立てをテーマに、持ち前のヒネクレ具合が前面に出た10枚になったと思う。
1. (Living Coutry Blues An Anthology)はドイツのL+Rから出ていた6枚のLPから編集された80年録音のサザン・カントリー・ブルース集。ミシシッピ、ピードモント、アーカンソーその他地域の3枚にまとめられている。ジェイムス・サン・トーマス、セデル・デイヴィス、サム・チャットマン、シーファス&ウィギンス、そしてジャッケットのオサー・ターナー(ファイフ大好き!)を始め、天然素材のカントリー・ブルースを贅沢に堪能できます。
アラン・ロマックス録音の5. (Deep River Of Song)は、1.に直接繋がる濃厚な内容。ウィリアム・ブラウン、サン・ハウス、マディ、ウィリー・フォードなど現地録音ならではの開放感と深味をこの戦前録音集で感じて欲しい。色々な形でCDが出ている米議会図書館音源だが、この『Deep River Of Song』のシリーズを決定盤と呼びたい。60年代後半から70年代前半にかけて録音されたエイス音源の4.。ここでは『胆』の入ったバンド・サウンドが満載。サム・マイヤーズ、バッド・スミッティ、ギター弾きではないシンガー、エルモア・ジェイムスJr.ことアーネスト・ジョンスンらを収録。LPに追加してのCD化だが、フレッド・マクダウェルがオミットされたのが惜しい。
ミシシッピ・ブルースの新録では3. (FRANK FROST & SAM CARR)と6. (ASIE PAYTON)を。フランク・フロストの訃報は、サザン・ハープ・ジャンキーズこと安田明由氏がブルース&ソウル・レコーズで追悼記事を書かれているのでそちらを参照していただきたい。来日時のインタビューに僕も同席したのだが、とてもジェントルな雰囲気だったことが忘れられない。やたらと気持ちいいサザン・ビートを届けてくれた本作がはからずも遺作となってしまった。一方エイジー・ペイトンは、これがデビューにして遺作。モダン・ブルースを取り上げながら、ロウ・ファイなサウンドが魅力。ドラムはもうひとりのジェリー・ロール・キング、サム・カー。
ジャイヴものはなんと言っても2. (CATS & THE FIDDLE)。ジャイヴ・ファンならもちろん2枚ともゲットすることをおすすめする。メロディ、リズムが生き生きとした楽しさ溢れるジャイヴだ。小型8弦ギターのティプルがカッコ良く、ちょっと欲しくなっちゃいました。タイニー・グライムスのギターも聴ける。9. のウクレレ・アイクはディズニーのアニメ『ピノキオ』で活躍するコウロギの声を演じた人。僕はヤズーのLPで大のお気に入りになった人。ウクレレさばきとカズーを真似たスキャットがジャイヴ気分を高めてくれる。このCDには「星に願いを」のオリジナル・ヴァージョンも収録。
10.は漫画『フリッツ・ザ・キャット』やジャニス・ジョプリンの『チープ・スリル』のジャケを手がけたことでも知られるカルト漫画家ロバート・クラムが選曲、イラストを含む装丁を担当した20年代アメリカン・ダンス・オーケストラのオムニバス。ノスタルジックに響くキッチュなサウンドに酔い知れることができる。ちなみにクラムが手がけたヤズーやブルー・グースなどのLPはマニアの間で相当な高値で取り引きされている。売りやしないけど、ヤズーのLPが好きで買い集めた僕はちょっと誇らしげな気分(^^)/。一方、我が国のジャイヴだって負けちゃいない。7.、8.はCDかけてよく一緒に歌ってました、ハイ。日本語のジャイヴ、とっても好きです。
ということで1999年のブルース・ベスト10、僕にとってはいつでも『胆』と4ビートという別にミレニアムでもY2Kでもない、いつもながらのものでした。ここらへんのブルースってやけにマニアっぽくみえるかも知れないけど、本当に楽しんで聴いてます。同好の方、もしくは興味もたれた方はぶるぎんにでもお便り下さい。一緒に楽しみましょう!
追伸:(2000年)3/19にまたも渋谷のブルース・バー「ブルー・ヒート」さんにてブルースのDJ会を企画してます。今回は各DJの方それぞれテーマを設けてブルースをかけていただこうと思ってます。とっても楽しい会になると思いますのでどうぞお誘い合わせの上お越しください。
|