みなべかん


Little Brother Montgomery


Robert Belfour


American Folk Music, Vol. 4


Billie & De De Pierce

  1. LITTLE BROTHER MONTGOMERY / No Special Rider (Genes GCD9913)
  2. OTHAR TURNER AND AFROSSIPPI ALLSTARS / same (Birdman BMR025)
  3. ROBERT BELFOUR / What's Wrong With You (Fat Possum/Epitaph 80336)
  4. V.A. / Best Of Country Blues Vol.3 (Wolf CD120.918)
  5. V.A ./ Arhoolie Records 40th Anniversary Collection 1960-2000 The Journey Of Chris Strachwitz (Arhoolie CD491)
  6. V.A. / Harry Smith's Anthology Of American Folk Music, Vol.4 (Revenant RVN211)
  7. 藤井康一×関ひとし / ウクレレでごめんね (Ichinomachi Club FS2000)
  8. BILLIE & DE DE PIERCE / Gulf Coast Blues (Arhoolie CD488)
  9. LITTLE WILLIE JACKSON / Jazz Me Blues (Ace CDCHD749)
  10. THE TEXAS TRUMPETS / same (Buffalo / Dialtone BUF501)

20世紀の締めくくりのブルース・ベスト10だが、こうして選んだ作品は我ながら相変わらずだねぇ。個人的には色々あった年ではあったけど…..。まぁ、世紀の変わり 目とか流行なんか気にせず、自分に忠実でいるのが気持ちいいや(頑固?)。

という訳で、2000年の一番のお気に入りは1.のモンゴメリーさん。このシンガー/ピアニストは僕のフェイバリット・ブルースマンのひとりなんだけど、69年シカゴ録音の本作はフォークウェイズの“Farro Street Jive”や“Bajes Copper Station”(Blues Beacon)(ともに未CD化といのが残念!)などに次ぐ出来。アコ・ギターにマイク・ステュワート、黒人女性シンガーのジーン・キャロルが曲により参加したもの。モンゴメリーが紡ぎ出すペーソスに悲喜こもごも込められた世界にうまく溶け込んでいる。タイトル曲始め、モンゴメリーの代表的ブルースとベッシー、マミーの両スミスの曲などを配した構成が心地好い。ホンキー・トンクにも響くピアノ、哀愁漂う乾いた唄の魅力を存分に捉えている。このゆったりとしたブルースは聴き飽きることはないね!

2., 3., 4.はミシシッピはヒル・カントリーもの。僕にとって、これらは無くてはならない最重要アイテム群だ。アフリカの楽器とファイフ・バンドのコラボレーションの2はポリリズムが怒涛のように押し寄せる臨場感溢れる作品。ファイフ・バンドを聴いてまず思い浮かべるアフリカの伝統的音楽との繋がりを、ストレートにやってし まった素直さが痛快!リズムの気持ち良さは特筆に価するし、ピュアなメロディーが 美しい曲にも心洗われるようだ。

4.は91年録音を中心にしたもの。ジェシー・メイ・ヘンフィル、ジュニア・キンブロウの他、トミー・ジョンスンと演奏していたというルーズヴェルト・ホルツ、スキップ・ジェイムスに多大な影響を与えたヘンリー・スタッキーの息子ジェイコブなど、貴重かつエグいブルースが聴ける。良くも悪くもそのまんまの音を録音するウルフ・レーベルの姿勢が功を奏した、ありのままのブルース集。

3.のベルフォアは40年ホーリー・スプリング生まれ。94年、デヴィッド・エヴァンスにより録音も残している(20曲は録音されたようだ)が、実質的には本作がデビュー・アルバムになる。一部ドラム入りもあるが、基本はアコ・ギターの弾き語り。独特のこぶしを持つ声の湿り具合、明確に演奏されるギターのヘヴィーでザラザラとした手触り。じっくりと聴かせるカントリー・ブルースだ。過剰な音の装飾もなく、実にピュアな味わいが滲み出た静謐かつエキサイティングなディープ・ブルースだ。

CD5枚組のボックス5.。タイトルが示す通り、アーフーリー主宰、ストラックウィッツの録音旅行の軌跡と言える内容。未発表と初CD化を含み、ほぼ録音年順に曲が並び、カントリー・ブルース、バンド・ブルース、ヒルビリー、ケイジャン、ザディコからテックス・メックス、ゴスペル、ニューオーリンズものやジャズもあればアフリカやインド音楽、クレズマーなど、実に様々な音楽を世に送り出していることが実感できる。それらすべての録音に、トラディショナルな音楽のありのままの姿を出来得る限り忠実かつ最上の形で伝えたいというストラックウィッツのポリシーが反映されているように感じる。アーフーリーの歩み、収録アーティスト/曲ごとの逸話などを載せた読み応えあるブックレットが有り難い。

97年、スミソニアン・フォークウェイズでCD化され、評判となったアンソロジーの完結編である2枚組CD、6.。本作は52年当時、企画されていたにも拘わらず事情によりお蔵入り。今回初めてジョン・フェイ(フェイヒ)のレーベルからリリースされた。ハードカヴァーのジャケット、古めかしい紙質のライナーに並々ならぬ愛情を感じさせる作りだ。収録曲は戦前のカントリー・ブルース、ヒルビリー、スピリチュアルズで、今となってはこれと言って珍しい曲ではない。しかしながら、ここに収録された曲をすべて集めるのには多大な労力を要するし、構成/編集の素晴らしさは各曲の持つ魅力を存分に伝えてくれるものだ。お宝!

7.は去年に続き、藤井&関のとっても楽しいジャイヴ作品。前作にも増してジャイヴしていて、なによりサウンド自体の厚み(楽器が増えたとか、オーヴァー・ダブしてるという意味ではない)がなんとも気持ち良いのだ。クールでアホらしく(誉め言葉ですよ、藤井さん)、ちょっぴりロマンティックな本作を聴いて幸せな気分を満喫しよう!

ニューオーリンズ・トラディショナル・ジャズ&ブルースが心にジーンと染みる8.。ピアノとトランペットの夫婦デュオ。50年代録音のCD化だ。奥さんのビリーはあのベッシー・スミスのバックを20年代に務め、本作にも収録されているベッシーの録音で知られる“Gulf Coast Blues”の作者でもある。郷愁を誘うピアノとボーディ・ソングもこなすきっぷのよい歌が魅力だ。夫のディー・ディーの枯れたトランペット、ゴワゴワの歌もパワーと至福を与えてくれる。『ピーナッツ売り』『セント・ジェームス病院』などの有名曲も良く、猥雑でいて、そこかしこにロマティックな雰囲気を匂わす味わい深い作品。

ルイ・ジョーダンやファッツ・ウォーラーなどと並び、僕のジャンプ/ジャイヴ・アイドルのジョー・リギンス。9.は彼のバンド、ハニードリッパーズで活躍したサックス奏者のモダーンへの47年のリーダー録音で、どっさり未発表を収録。ジョーを含むハニードリッパーズがバックでスィンギー、ムーディーなジャンプ作品。基本線はジョーの録音の延長とも言えるが、同じメンバーなのでそれは当然とも言えるだろう。とにかく楽しいったらありゃしないジャジーな極上ジャンプ/ジャイブなのだ。

10.はサムズのみんなが「グルーヴィーでとってもイナたい!」と教えてくれたトランペッター4人をフロントにした作品。JB’sばりのファンク・チューン、テキサス臭プンプンのブルースを快演しているのだが、彼ら特有のユルさがたまらん!年季の入った人たちばかりで酸いも甘いも知り尽くした貫禄とペーソス溢れる大人のファンクといったところ。こりゃ幅広い年齢層に受ける音だね。

この他、フレッド・マクダウェルの最晩年ライヴもCD化されているが、まだ手元に届いていないのが残念。次ぎの機会にいずれ。


赤色: 新録もの

緑色: 再発もの

みなべかん
現在、主にブルース&ソウル・レコーズに執筆。胆の入ったブルースが大好き!戦前ブルース、フィールド・レコーディングに強い興味を示す一方、ジャジーなジャンプ/ジャイヴもお気に入り。以前レコード店に勤めていたこともあり、ブルース全般に強い愛情を持っている。ブルースの原稿依頼待ってます!





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