2001年ベスト・アルバム10選
宮崎けい


Harry Hypolite


Chris Thomas King


Deborah Coleman


Etta James

今年出たCDでベスト10が揃うだろうか・・・?という漠然とした不安を抱きつつわが家のCDをかき集めてみた。すると・・・ご心配なく!結構ありました。と、余裕が出たところで、南部趣味丸出しの厳選10枚をご紹介しましょう。

  1. HARRY "BIG DADDY" HYPOLITE / Louisiana Country Boy (APO2016)
    これを聴いたとき、本当に嬉しかった。なんたってこのイナタいかっこよさ!そしてフィリップ・ウオーカーなんかにも通じるメキシコ湾岸風なちょっぴりおしゃれムード。特に’Just A Little Bit’ の味はベースがセカンドラインのノリでとても心地よいです。この人はザディコの王者クリフトン・シニアといっしょにやってたという、生粋のルイジアナ人ですが、‘Country Boy’ではジミー・ロジャースの息子がモロ、「シカゴ・バウンド」してるのも面白い。

  2. ROCKIN' DOPSIE AND THE ZYDECO TWISTERS / In New Orleans (Storyville STCD8052)
    Harry Hypoliteと同じようにルイジアナ州ラファイエット付近で活動を開始したが、その後どんどん流れに乗ってヨーロッパでも名を売ったアコーディオン兼ボーカリスト、ロッキン・ドプシーのデンマークレーベルから出たライブ版だ。クリフトン・シニアから王座を引き継ぐ4年前の84年のニュー・オーリンズの名門クラブ、メイプル・リーフでの演奏は実に活きがいい。惜しいことに93年に61歳でこの世を去っているが、その1年前にこの同じ店で彼のステージを見られた私はとても幸運だと思う。

  3. THE FABULOUS FANTOMS / Just Having A Party (Funky Delicacies DEL CD0035)
    ウオルター・ワシントンも一時在籍し、オハイオプレーヤーズやミーターズと同格の実力をもちながらもメジャーになれず、ついに全財産をつぎ込んでレコーディングしてもうまくいかなかった不運なバンド。まるでその恨みを訴えるようにジャケ写真も完璧にピンぼけだ。サウンドとしては60年代後半から70年代にかけての臭いニュー・オーリンズファンク。最高調のときはDevil's Den(悪魔の檻?!)なるクラブで演奏してたツワモノだが、「メリーさんの羊」みたいなイントロがかわいい。

  4. CHRIS THOMAS KING / It's A Cold Ass World (Arhoolie 9020)
    昨年このコーナーで取り上げたタビー・トーマスの息子のルイジアナロックサウンド。しかも‘South Side Shuffle’ではテキサスロッキンの味も出てる。

  5. CHRIS THOMAS KING / The Legend Of Tommy Johnson (21th Century Blues 21CD-2104)
    このクリス・トーマスが映画‘O Brother, Where Art Thou ? で、伝説のブルーズマンの役を演じたのがきっかけでこのCDができたとのこと。悪魔に魂を売った話はロバート・ジョンソンで有名だが、この伝説のトミー・ジョンソンが実は元祖「魂売り」だとか・・・。

  6. LYNN WHITE / More Of The Best (Blues Works BLW550)
    アラバマのレコード店のパートさんから身を起こし、次第にローカルミュージシャンとしてのキャリアを積みながら、ついにはB.B.キングとツアーをするまでにメジャーになった素敵な彼女。99年にミシシッピーのフェスティバルで撮影した太モモもあらわな生写真が私の宝。仕事を終え帰宅して聴く彼女の甘くブルージーな声に癒される今日このごろであります。

  7. ETTA JAMES / Blue Gardenia (Private Music 01934-11580-2)
    「激しく唸りまくるだけがエタじゃないよ!」という、完全ズージャな逸品です。これは別に「南部モノ」じゃないけど、ニュー・オーリンズで買ったので入れちゃいました。

  8. DEBORAH COLEMAN / Livin' On Love (Blind Pig BPCD5070)
    良くのびるギターサウンド、ほどよくかすれ艶のあるヴォーカル、体の芯にはブルーズの伝統をもちながら、全く伝統的でない味は次世代を予言する小気味いいやつです。ジャケ写真の表情にも色気が増して嬉しい限りです。

  9. ARBEE STIDHAM / Tired Of Wandering (Bluesville Records OBCCD-593-2(BV-1021))
    アーカンソーに生まれてメンフィへ出た、というところまではよくあるブルーズマンの経歴だが、この人はどこかジャズっぽい雰囲気がある。ジョー・ターナーみたいなボーカルに田舎じみたギターがやけにマッチしている。ちゃんとキング・カーチスがサックスで入っていて、しかも左右のチャンネルがきれいに別れているので、マイナス・ワンにも使える?

  10. MEM SHANNON / Memphis in the Morning (Shanachie 9031)
    ニュー・オーリンズのミュージシャンが慣れ親しんだ街を出てメンフィスでレコーディングした、温かみのあるヴォーカルとキレのあるギターが気持ちいい1枚です。



赤色: 新録もの

緑色: 再発もの

みやざきけい
ちょっと前まで、東京の武蔵野地区で「ブルース&ゴスペル・アワーズ」という日本では数少ないブルースのラジオ番組をやっていた宮崎さん。ブルース・ギタリストとして、JoJoサワドさん等と活躍するかたわら、吉祥寺のタウン情報紙「週刊きちじょうじ」のコラムも担当。年に数回は、奥様とアメリカへの音楽旅行にでかけてます。





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