2002年ベスト・アルバム10選
宮崎けい


Jimmy King


Magic Sam


Tommy Bankhead


Sax Kari

  1. JIMMY KING / Live At Monterey (Bullseye 11661-9612-2)
    また今年も何人かのブルーズマンがこの世を去った。その中でも私がひときわ驚 き、かつ無念に思ったのは、7月に37歳にして心臓発作で他界したジミー・キングだ。2000年秋のメンフィスのライブハウスが彼の生を見た最初で最後の体験となってしまった。その時の私は彼lこ関する知識、情報は全く持ち合わせていなかったが、真っ白なフライングVでアルバート・キングそのものの味を出しながら、かつ新しいエネルギーがみなぎっている大変素晴らしい演奏がとても印象的だった。さすがにメンフィスというところは凄いところだ、とつくづく感心し、またとても嬉しく思った。そして今年初め、地元吉祥寺駅のエスカレータを降りてすぐのレコード屋さんで偶然にこのCDを発見し、彼がレコーディングアーチストであることを初めて知った。奇遇な「再会」だったので迷わず買ったところ、ちょっとロックっぽい曲が多かったものの、あのときの感動が蘇る思いがした。そして8月、メンフィスのブルーズ・ファンデーションのホームページを開くと突然に現れた彼の死亡記事を前に、私は「あっ!」と叫んでしまった。・・・ジミー・ヘンドリックスとアルバート・キングから自分の名前を作ったという強い思いが、20歳にしてアルバート・キングのバンドメンバーとなる幸運を実現したのだと思うが、そのパワーをあまりにも短い時間で燃え尽くしてしまったように思う。

  2. MAGIC SAM / Rockin' Wild In Chicago (P-Vine PCD-24126)
    もう一人、32歳の若さで燃え尽きた男の未発表ライブ盤が出た。マジック・サムだ。「幻のマジック・サムライブ」の国内盤(もちろんアナログ)が出たのは今から20年以上も前のことであった。当時、発売が何回か延期になったこともあり、やっと手に入れたときの感動は今でも忘れられない。そしてその後、私は長い間「マジック・サム中毒」の時代へと入っていった。とにかく、バンドでやる曲は次から次へとそのライブ盤から決まるのだ。「マジック・サムは神様だ」くらいのありがたさでギターや歌をコピーしまくったものだ。その「病気」もその10年後くらいから徐々に治りかけ、今ではやっと平穏な市民生活を送れるようになったと思いきや、つい最近、突然こんなものが出てしまった・・・。小学生のとき、東京オリンピックをテレビで見ながら感動してたけど、ちょうど同じころ、シカゴではこんなのやってたんだね。でも、人生長生きしたければ「手抜き」も大事なのかも知れない(?)

  3. BARBARA CARR / The Best Woman (Ecko ECD1038)
    今年9月にミシシッピー州グリーンヴィルでブルーズフェスティバルを見た。ここのフェスティバルは今年で25回目を迎え、米国南部では最も古い歴史を誇るだけあり、今回もボビー・ブルー・ブランド、デニス・ラサール、マイティ・クラウズ・オブ・ジョイなど、日本でもおなじみのビッグアーチストが出演した。ブルーズ、ゴスペルが3つのステージで同時進行するという贅沢なイベントの中で、前夜祭と当日の2回にわたり、このバーバラ・カーを楽しむことができた。彼女のCDは以前のこのコーナーでも採り上げただけに、今回初めて生演奏に触れることができてとても嬉しかった。セントルイスに生まれ、教会で歌いながら、小学生のころからその才能を認められていたそうで、ときに甘く、そしてときに激しい歌は聴き応えがある。甘めのソウルっぽいのと、腰の入ったブルーズの両方楽しめるから好き!

  4. CARLA THOMAS AND FRIENDS / Live In Memphis (Memphis International Records DOT020)
    ルーファス・トーマスが亡くなって1年が過ぎたが、その娘、カーラ・トーマスのメンフィスでのライブ盤が出た。おはこ「B−A−B−Y」をはじめ、「These Arms Of Mine」などのオーソドックスなナンバーを仲間のミュージシャンたちと活き活きとやってる姿に、お父さんもさぞかし微笑んでいることだろう。

  5. TOMMY BANKHEAD / Please Accept My Love (Fedora FCD 5024)
    この人のCDは今回初めて買った。温か味のあるおじさんの姿に惹かれての「ジャケ買い」だったが、当たり!歌もギターも亡きロウエル・フルスンの雰囲気をみごとに引き継いでいる。

  6. SAM & THE SOUL MACHINE / Po'k Bones And Rice (Funky Delicacies Del 0039)
  7. EDDIE BO, SOUL MACHINE, etc. / Funky New Orleans 2 (Funky Delicacies Del 0018)
  8. SAX KARI / Fumigate Funky Broadway (Night Train International NTI CD 7131)
  9. ROBERT PARKER / The Wardell Quezerque Sessions (Night Train International NTI CD 7107)
  10. GEORGE PERKINS / Cryin' In The Streets (Night Train International NTI CD 7130)

    前回のベスト10から、70年代ニュー・オーリンズファンクがお気に入りになってきた。今回も6位以下がルイジアナ未発表ファンク、ソウル特集となった。その中の上位3枚を以下にご紹介しよう。

    まずはハモンド奏者サム・ヘンリーが率いるサム・アンド・ソウル・マシーンだ。ミーターズのような小気味良さを出しながら、もっとメロウでより温かみのあるサウンドが魅力的。今から30年前のニュー・オーリンズのライブハウスでは、このバンドが火曜から木曜までリハーサルをやりながら週末にライブをやっていたのだそうで、何だか想像しただけで興奮しちゃう〜。

    そしてその次は、そのソウル・マシーンはじめ、数々のニュー・オーリンズアーチストたちのレアな未発表ファンキーサウンドを集めた逸品だ。製作意図が、「ニュー・オーリンズファンクはミーターズ、ネヴィル・ブラザーズ、アラン・トューサンだけじゃないよ!」ということのようだが、その意気込みがはっきりと音で伝わってくる。なんたってテネシーワルツもファンクにしちゃうんだからお見事。

    8位は、プロデューサー、アレンジャー、ライター、ミュージシャン、エンジニア、と幅広い仕事をやりながら、シカゴ、デトロイト、フロリダ、ヒューストン、そしてニュー・オーリンズと米国の都市を股にかけて活躍する男、その名もサックス・カリという面白いおじさんだ。サックスのほかにギターもやっていて、「好きなギタリストはチャーリー・クリスチャン」だそうですが、4曲目ではまるでジョンリー・フッカーしてるから愉快。



赤色: 新録もの

緑色: 再発もの



Jimmy King
メンフィスで目撃したジミー・キングのライブ

みやざきけい
ちょっと前まで、東京の武蔵野地区で「ブルース&ゴスペル・アワーズ」という日本では数少ないブルースのラジオ番組をやっていた宮崎さん。ブルース・ギタリストとして、JoJoサワドさん等と活躍するかたわら、吉祥寺のタウン情報紙「週刊きちじょうじ」のコラムも担当。年に数回は、奥様とアメリカへの音楽旅行にでかけてます。





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