2004年ベスト・アルバム10選
宮崎けい


Albert King


Charles Caldwell


Jojo Sawado


The Boogiemen

あ、大変!今年買ったCDなんて、いったい何枚あったっけ?毎度お世話になっているブル銀ベスト10を前に、今年は特に慌ててしまった。FM番組の担当を離れて早4年が経ち、いつの間にか新譜を買うのことをサボるようになってしまったかのか?昼間の仕事が異常に多忙で、CDショップに行く時間が激減したからか?などと自問自答しながらバンド仲間の様子を聞いてみたら、みんな「最近ゼーンゼン買ってないよー」とのこと。これで安心!?ということで、今回は以下のとおりまとめさせていただいた。

まず、正直ベースで私の手元にある今年の新譜を並べてみると・・・

  1. ALBERT KING / The Complete King & Bobbin Recordings (Collectables COL-CD-2887)
    CDショップに行ってブルーズコーナーの前に立ち、自分の好きなブルーズマンのセクションを順番に見ながら新譜を見つけるのは嬉しいことである。キングとボビンの各レーベルでのヒット曲に加え、'Blues At Sunrise'などの数曲は別テイクのおまけ付き。スタックスも大好きだけど、それとはまた一味違った締まりのあるサウンドに力強さを感じる。1960年前後のセントルイスで、アルバート・キングやリトル・ミルトンが録音していたボビンというレーベルもとっても美味しそう。

  2. CHARLES CALDWELL / Remember Me (Fat Possum FP1011)
    このレーベル、ファットポッサムといえばミシシッピー州の北東部を中心にカバーする、こだわり派。このCharles Caldwellも、のどかさと粗野が同居するサウンドが魅力的。田舎道にぽつんと建つジュークジョイントの薄暗い店内で、硬いギターサウンドとダラリとしたドラムのビートにお客が腰を振って踊り明かす光景が目に浮かぶ。

  3. VARIOUS ARTISTS / 20th Anniversary CD (OB-FQF-03)
    ニュー・オーリンズの中心街はフレンチクオーターと呼ばれる長方形の一角。そこにはバー、レストラン、ライブハウス、アンティークを売るお店などが並び、通りには観光客があふれ、その中を観光用の馬車がパカポコと音をたてて通り過ぎる。ニュー・オーリンズは1年中街の中に音楽が溢れているが、フェスティバルとなれば、さらに楽しく盛り上がる。毎年4月に行われる「フレンチクオーター・フェスティバル」も今年で20回目を迎え、ミシシッピー川のほとり、街の中心の公園、そしてライブハウスやレストランで次々とバンドが演奏する。今回のフェス案内冊子の付録として地元情報誌「オフ・ビート」が企画した、地元ミュージシャンのオムニバスCDだ。以前来日したザディコ界の御曹司アルドワン兄弟のSean Ardoinも元気に参加している。

  4. JOJO SAWADO & SECOND LINERS / Second Line (MARUYOSHI-01)
    て、お次は「和製ニューオーリンズさうんど」の出来立てホヤホヤCDの登場。ジョジョ・サワド率いる「セカンドライナーズ」の楽しい演奏だ。ニュー・オーリンズのセカンドラインの雰囲気をこよなく愛し、かつ、誰でも聴いた人に温かみを感じさせる味付けが魅力だ。長年コンビを組むポニー・ボーイの職人ギターのサポートも聴き応えがある。また、'Mardi Gra Mambo'での日本語の歌詞もよくノッテいて成功している・・・あ、実はジョジョさんとポニーさんとは長いお付き合いで、現在私のバンド「PO−BOY」でお世話になっている。しかもジョジョさんは、何と!ドラムとボーカルで登場・・・ということで、営業協力!

  5. CHARLIE MUSSELWHITE / Sanctuary (Real World 70876 1847222)
    アメリカ各地のブルーズフェスティバルで活躍するハーピストが、いつの間にか白人中心となっている。チャーリー・マッスルホワイトもその中で大活躍の部類であろう。聴いてみて、これまでのマッスルホワイトの吹きまくりイメージとは随分ちがった、レイドバックした音作りだ。「サンクチュアリ」という言葉の響きどおり、なごみ系のサウンドで心が落ち着く。ちなみに、メンフィスのブルーズファンデーションの方から、これと、次にご紹介するCDをいただいた。感謝!

  6. THE BOOGIEMEN / A Little Trim (Modal King Records, no number)
    つづいて、こちらはサンディエゴのブルーズバンド、「ザ・ブギー・メン」の新譜。ルイ・ジョーダン風のおしゃれジャンプあり、シカゴ風あり、ファンクあり、とユニークで心地よい新しいサウンドである。

さて、今年は3月にクラークスデール、9月にグリーンヴィルと、2回ミシシッピー州を訪れた。新譜ではないが、そこで見たライブの人のもので、現地で入手したCDを以下にご紹介しよう。

  1. VICKIE BAKER / Don't Gimme No Lip (Paula Records PCD-9013)
    ミシシッピー州グリーンヴィルで行われているブルーズフェスティバルは、例年、ボビー・ブルー・ブランド、リトル・ミルトン、ボビー・ラッシュ、デニス・ラサールらの大御所をそろえての充実ぶりである。しかも主催団体は単なるブルーズソサエティではなく、地元人権擁護団体(「ミシシッピー地域教育活動」)である。しかし、どこにも限界はある。今年27回目にして、ついに資金難で中止!それは東京を出発1ヶ月前を切った時点でのショッキングなニュースだった。そして、その直後の「地元議会議員と地元企業による復活」という感動的な朗報に励まされて現地入りしてみると、にわか造りのステージで、充実した無料コンサートが楽しめた。その中でも、ヴィッキー・ベイカーの歌は魅力的だった。ミシシッピー大学での経歴もある知性派の彼女だが、ナチュラルなステージは好感がもてた。

  2. J. BLACKFOOT / Live! Selma, Alabama
    そのフェスティバルで最も盛り上がっていたのは、このJ・ブラックフットだった。そして、会場で売り歩いていたのがこのCD。音質はほとんど海賊版レベルの出来であるが、アラバマ州セルマといえば、公民権運動が激しかったころキング牧師と州兵の衝突で知られる場所でもあるので、無条件に買ってしまった。おなじみ、'Taxi'も入ってるよ!

  3. HOWL-N-MADD / Casino Dreams
    さて、ブルーズ巡礼の旅に欠かせないがミシシッピー州クラークスデールだろう。かつてはデルタの中心的な街として、数々のブルーズマンが演奏し、そしてロバート・ジョンソンらのクロスロード伝説がある土地でもある。今は、ブルーズ博物館と、「グランドゼロ」というライブハウスがあるほかはほとんどこれといったアトラクションもないが、ジュークジョイント風の店もわずかに残っており、タイミングがあえば、良い雰囲気を味わえる場所である。そのグランドゼロのハウスバンドである「ザ・ペリーズ」のリーダーであるボーカル、ギターがこの'Howl-N-Madd'である。ライブでは下品なくらいにトレブルのきいたギターサウンドでハウリン・ウルフなどのブルーズナンバーを次から次へと演奏するが、CDとなると、ちょっと甘めのソウルナンバーで固めるところはさすが!

そして、さらに、そのグリーンヴィルのフェスティバルでみた中で、Eddiえ Cotton が印象的だった。幼少のころからギターを弾き、まだ30代の若さでボーカル、ギターともにしっかりとしたものを持っている。ミシシッピー州周辺でコンスタントに活動しているらしく、4年前に州都ジャクソンのライブハウスでも見たのを思い出した。ステージパフォーマンスも気合が入っており、これからがますます楽しみである。

もうひとつおまけに、今年は地元吉祥寺でブルーズ映画祭があった。昨年(2003年)は、ブルーズの父、W.C.ハンディが初めてブルーズを楽譜で世に出してから100年を記念し、アメリカでもブルーズの映画が製作され、日本にも紹介された。この動きを受けて東京でもいくつかの企画が出たが、嬉しいことにここ吉祥寺でも「ブルーズ天国」というシリーズで4本が上映された。この中で、'The Road To Memphis'が一番おもしろかった。この撮影後まもなく他界したロスコー・ゴードンが、「(メンフィスの)ビール・ストリートはもはや昔のものではない。」と嘆いていたが、伝統から観光へと変わっていく現地のブルーズシーンを象徴するような気がした。また、ボビー・ラッシュにしても、B.B.キングにしても、バンドリーダーはバス1台で連日連夜メンバーと行動をともにし、すべてを切り盛りする点においては皆おなじような苦労をしていんだな、としみじみ感じた次第である。

さて、2005年も、現地(ミシシッピーデルタ周辺)と地元(吉祥寺)でのブルーズに大いに期待したい。


赤色: 新録もの

緑色: 再発もの








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