2005年ベスト・アルバム10選
上田有


ローリー・クック


Sunpie


Tin Men


Keith Frank

2005年は結局一年を通じて、店の開店準備及びそれにまつわる諸々に終始しておりました。そして年末になってのバイユーゲイト開店。怒濤の一年でありました。その間にはカトリーナによる災害があり、そしてクラレンス・ゲイトマウス・ブラウン氏の逝去。あまりにも記憶に留めるべきいろんな事の詰まった、忘れることのできない年となりました。それらを反映しているのかいないのか…。聴いた頻度を最重視して10枚選びました。

  1. ローリー・クック / 月とギターとベランダ (HERB-9/10)
    結局一番聴いたのはこのアルバムなのでした。前作ザ・ワルツの『OKINAWANN CHRISTMAS』も”全曲オリジナルのクリスマスアルバム”というやりたい放題の作品でしたが、今作も”ソロでの全曲オリジナル2枚組”という制御不能な名作。凄い人です。今回はローリー・クック名義。キャプテン・クックのようでカッコイイです(笑)魂兄弟を名乗っての渾身の大作なのです。 前作はストレートに「オキナワ・リズム&ブルースバンド」の姿を映し出す、ある意味解りやすい(それが良い方向に作用した)傑作だったのですが、ソロ名義の今作はもう大爆発。一筋縄ではいかない彼の音楽性が詰め込まれており、ジャンル等の括りにとらわれてしまいがちな人たちとっては極めて不親切な作品に仕上がっています。幅広い! ブルース&ソウルのシンガーでありジャンルを越えたギタリスト。その歌世界も、胸を熱くさせるソウルフルな曲や透明感ある叙情性、舌を出してロックするようなキンキーなもの…と一見多種多様です。しかしそれらの破片を拾い集め、味わっていると…大きく浮かびあがってくるのが「かの地」オキナワなのでした。 その土地の生み出すミュージック・マジック!僕にとっては「ローリー/ザ・ワルツ」はニューオーリンズのミュージシャンとの共通項を強く感じさせる存在です。声高に沖縄を売りにしたり、沖縄音楽を演るわけではない彼こそが、私にとって最もオキナワを強く感じさせてくれます。そして勿論最高のソウルマン。 その真摯さゆえ、沖縄でさえ万人に解りやすいとは言いがたい?ローリー氏。本土ではまだまだ知る人ぞ知るという存在です。しかし地元ミュージシャンたちから受ける熱い尊敬を目にするにつけ、同じ感性を持つであろう「まだ見ぬ誰か」に出会わぬままでいることが悔しくてならないと強く思っております。いつもながら熱烈におすすめいたします。そして2006年、ザ・ワルツは20th Anniversary Year!久しぶりの新作を期待しています。

    ●今作でローリー氏はドラムをプレイしていますが、パーディがジガブーに乗り移り〜沖縄に移住、泡盛浸け!のようなスットコファンキー具合は絶品です。
    ★詳細なアルバムレヴュー座談会です。ご興味ある方は是非。
    http://www.joy.hi-ho.ne.jp/rolly/nostalgie.html
  2. SUNPIE AND THE LOUISIANA SUNSPOTS / Zydeco's Got Soul (BFR 010105)
    サンパイの「ん?」という時さえある「なんでもアリ」な音楽性が良い方にあらわれた好盤。正直、近作はどれも今一つの印象だっただけにとても嬉しいです。実はサンパイは自分にとって「ザディコ初めてのヒト」なのです。それまでザデイコに心底ヤラレるということがなかった(ザディコLPは所持していたし、バックウィート来日公演にも足を運びましたが)、私に、ガツーンとカマしてくれたのが彼なのでした。97年に観た彼のライヴは私の耳を変えてしまい。その後はザディコのCDを聴いてもライヴの高揚感プラスで聴こえるようになってしまったのでした。本作、アコーディオンの使ったポップR&Bなのか?と思う程、演りたいように演れています。そういえば初めてライヴで聴いたのも、えらくポップでアッパーな「My Babe」だったもんなぁ…。朗々と歌う「Feel Like Going Home」なんて思わず一緒に歌ってしまい、胸がキューッとしてしまいます。。もっともっと活躍してほしいものです。頑張れサンパイ!ゲイトマウスさんの参加もとても嬉しい。今、書きながら聴き返しているけどこれは本当良いアルバムだなぁ。ゲイトマウス・ブラウンを好きな人ならきっと気に入るでしょう。「Old Dan Tucker」、最初から泣けます。そしてスイングします。
  3. ARETHA FRANKLIN & KING CURTIS / Don't Fight The Feeling: The Complete Aretha Franklin & King Curtis Live At Fillmore West (Rhino Handmade RHM2 7890) 
    しまった!どうしよう。バカのようになってしまう。…サイコーです。どうしようもありません。ライノさんから手元に届いた時の感激といったらもう。初日のデュプリーなんて悪人丸出しです。こんなの逮捕されます。「THEM CHANGES」のギターソロなんて抑えきれないカンジが素晴らしい。とにかく全編に渡ってモノ凄い音楽が繰り広げられています。3日間6ステージ。曲も重複しているのにまったく飽きさせません。勿論このリリースが、奇跡の瞬間を美しくパッケージしたあの2枚の価値を落とすものでは決してありませんが…「いやぁ俺って音楽が好きなんだなぁ」としみじみ思いましたよ。ファンキーとウタゴコロが一杯に詰まっています。
  4. TIN MEN / FREAKS FOR INDUSTRY! (no label, no number)
    聴いた回数で上位入賞です。1曲目から素晴らしい脱力感。裏ジャケの写真は本物なんでしょうかね。表ジャケもおちゃらけてるのかなんなのか…。フロントマン?Washboard Chazの来日公演は本当に楽しかったので、思い出しながら繰り返し聴いてしまったのでした。音の質感が好きです。声が好きです。また気軽に狭いところで観たいなぁ。また、本作には不参加ですがChazと一緒に来日したギタリストCHRIS MULE'のアルバムは(コッテリではないものの)ゴッタ煮具合と空気感が正にストライク!で素晴らしかったです。しかし2004年モノなので残念ながら選外となりました。
  5. KIRK JOSEPH'S BACKYARD GROOVE / Sousafunk Ave.(Audible Vision AVR-10501)
    カッコイイです!よく聴きました。ロック色もあるファンキーミュージックで、特にニュ−オーリンズサウンドコテコテというわけではないのだけど、正にあの街のサウンドに仕上がっていると思います。そういうのって素晴らしい。ゲストでドクター・ジョンが歌っている曲がありながらバンドのカラーの方が印象に残るのって、実際凄いことです。バンドアレンジの勝利かな。新しい店のオーディオセッテイングの時に何度も流しました。シャープでふくよか。単純にカッコいいなぁ。と思いましたね。来日祈願。
  6. VARIOUS ARTISTS / Our New Orleans 2005 (NONESUCH 79934-2)
    作品として素晴らしい。でも最初はとても冷静に聴けなかったのも事実です。予備知識なく聴き、トゥーサンに始まりベシー・スミスを歌うアーマ、バックウィートやエディ・ボ、キャロル・フラン、全て想いのこもった熱演に圧倒されました。アレンジされた「TIPITINA」の哀感に聴きいって、呆然としているところにランディが飛び出してきた時には本当に驚きました。ソウルフルな名盤。繰り返し聴くことによって、少しは冷静に聴くことができるようになりましたが、当然ながらそれは、この出来事が少し過去のことになってしまった。などとということではなく、かえって現実に引き戻されたりしています。
  7. RICHARD THOMPSON / Front Parlour Ballads (P-Vine PCD-23658)
    前作に続き今回もP−VINEからの日本盤リリース。歌詞、できれば注釈付きの対訳が欲しいタイプのミュージシャンなので丁寧な仕事がとても嬉しいです。サンキュー。前作も選んだのですが、今回は更に素晴らしい!単純な私にはアルバムの1曲目というものは大切なのですが、今作のオープニングは最高。個人的な近年の最高作(91年作ですが)『Rumor and Sigh』以来?の期待でワクワクしました。アコースティックアルバムゆえ手触りは少々地味ですがこれは名作です。祈・バンドで来日してくれ〜。
  8. KEITH FRANK AND THE SOILEAU ZYDECO BAND / Going To See Keith Frank (Soulwood SWR005)
    楽しい内容で愛聴しました。曲も粒揃い。音盤として飽きさせない作品です。でもやはりザディコはライヴを体験したいものです。ギターがガンガン煽るタイプのものも好きだけど、このシンプルなザディコバンドサウンドは楽しいことこの上なし。タイコの音の隙間がスッカンして気持ちいいです。SWEETにしてくれる!そうなので是非観たいです。
  9. JOE KROWN ORGAN COMBO / Livin' Large (Joe Krown JK 1001)
    オルガンコンボでの作品中、音盤として楽しめるという部分でこれまでの最高作ではないでしょうか?このバンドサウンドには細部に聴き所が満載です。タッチがリアルに感じられて好きですね。Gate's Expressが遂に終ってしまった今、更に充実した活動を期待します。ボーっとオルガンソロを聴いてると何度も観たゲイトマウスのステージが瞼の裏に浮かんだりもしますが、すぐにハッとするアレンジがでてきてバンドとしてのオリジナリティが感じられます。「これまでの感謝を込めて」ゲイトマウスさんのファンもみんな応援しているはずです。期待しています。
  10. KERMIT RUFFINS / Throwback (BASIN STREET RECORDS BSR 0105-2)
    リバースと共演!?と一瞬驚いたものの、実は別に驚くほどのことではないのでしょう。ダーティ・ダズンの来日メンバーにカーミットの名前がクレジットされてた、ということもありましたし(来なかったけど)。ストリート感覚溢れる作品です。ザラリとした音質、手触り。街のサウンドです。『BIG EASY』のポップで洗練された感覚を高く評価していたので「え?」という感じもありましたがコレはコレでイイです。音がギュウッと詰まってます。音を解放してあげなくちゃ!外で聴いてみたいです。

時点はVance KellyにStones。Vance Kellyは周囲で「前作より少し落ちる」という声もありましたが、やっぱりシカゴローカルの香りがプンプンして素晴らしい。来日してほしいなぁ。ストーンズは、好きです。


赤色: 新録もの

緑色: 再発もの




ベスト・ライブ





inserted by FC2 system