bsr誌に書いた3枚は外してあります。ことしは決定的な1枚というのが少ない代わりに、特にニューオーリンズ関連で、カトリーナなどハリケーン惨禍から力強く立ち直ろうというか、悲しみや怒りをエネルギーにした作品群に、「気」を感じたものが多かったです。アーマ・トーマス、ダーティ・ダズン、「アワ・ニューオーリンズ」など、本当に絞り込むのに苦労しました。またソウル系でもウィリー・ウォーカー、ジョニー・ロウルズなどは良く聴きましたし、「掘り出し」ものでもジュニア・ウェルズのライヴなんて、なんでこんなもんが残ってるのっていうのもありました。ロック系ではJJ・ケイル、ケリー・ジョー・フェルプス、デレク・トラックスあたりが気に入りました。でもそういうものを全部切り捨てて、下の10枚を選びました。でもこうしてみるとブルースが少ないなぁ。
- THE NEW ORLEANS SOCIAL CLUB / Sing Me Back Home (Burgundy 82876 80589-2)
ある意味ニューオーリンズのオールスター・キャストが作った、たっぷりと政府に対する批判を詰め込んだアルバムです。セカンドライン・フォンクと融合したゴスペルのエネルギーがパワーを3倍増しにしている感じ。
- ELVIS COSTELLO & ALLEN TOUSSAINT / The River In Reverse (Verve Forecast/Universal UCCB-9011)
来日は見に行けなかったんですが、コステロとトゥーサンの相性がこんなにいいとはちょっと想像できませんでした。こうして聴くとトゥーサンのソングライティングってすごいなぁ。
- AARON NEVILLE / Bring It On Home... The Soul Classics (Burgundy 82876 85489 2)
いにしえの名曲をアーロンが見事に料理した1枚です。メイヴィスとコーラスした「リスペクト・ユアセルフ」、さらにカーティス・メイフィールドの代表曲2曲など、彼の柔らかな声の後にある力強さを感じました。
- DR. JOHN / Mercernary (Blue Note 0946 3 54541 2 3)
今回はジョニー・マーサーの曲を料理したドクター。いつものバンドに支えられ、ゆったりとした、でも腰に来るリズムでスタンダードの数々を歌っていきます。ドクターの音、年々丸みを増しているように思います。
- J.PAUL JR. AND THE ZYDECO NUBREEDS / Scorpio (J.P. JR., no number)
2006年はザディコ革新の1年でした。bsrで上げた2枚の他、この新作もJ.ポールの従来の路線を集大成したような出来で素晴らしかったです。ダンスホールの都会派ザディコといった趣、板についていますね。
- SPENCER BOHREN / The Long Black Line ; Valve #6086
前作に続いてドイツはゾーリンゲンの寺院で録音したサウンドは、アコースティックの美しさを存分に引き出しています。その暗闇の中からひそかに湧き出るような音、目をつぶって聴くとずっしりとその重さを感じられます。
- TOMMY EMMANUEL / The Mystery (Favored Nations Acoustic FNA5130-2)
歌心溢れるギターが素晴らしいです。彼のエレキの音は僕は余り得意ではないんですが、こうしたアコースティックの響きはさすがと言うしかありません。サウンドの向こうにトミーの優しい人柄がにじみ出るようです。
- DAVID KIMBROUGH JR / Shell-Shocked (B.C. 1435)
久々にリアルなブルースに出会った気がします。ムショ帰りという看板に偽りのない、ドロドロの自分の想いをたっぷりと込めた歌は、ブルースの伝統と新しい世代とのひとつの理想的な融合のように思いました。
- ウルフルズ / You (Toshiba EMI TOCT-25921)
トータスのまっすぐな歌、今回もいいですね。ラヴソングもこのくらいストレートだと、甘さよりもパワーを感じてしまいます。硬骨漢て感じ。こねくり回した意味不明な歌詞の多いJ-POPの中で、このスタイルは貴重です。
- MITSUYOSHI AZUMA & THE SWINGING BOPPERS / Seven & Bi-decade (Victor VICL-42027)
あはは、やっぱりこれは外せません。どこかアマチュアっぽさを感じさせるサウンドに乗った、五十路の勤め人の喜怒哀楽がたっぷり詰まった吾妻ワールド、ますます盛んですね。本の復刊も嬉しかったし、またライヴも見に行くぞ!
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