2006年ベスト・アルバム10選
上田有


Ray Davies


Terence Simien


BeauSoleil


Swinging Boppers

やっぱり慌ただしかった2006年、新譜も聴きましたがアナログ旧譜中心の一年でありました。有り難いことに貧乏暇なしながらも〜なかなかに充実の日々を過ごすことができたので、残念ながら聴き逃してしまったCDが多いこともまぁ良し、としております。例年通り、他の方のランキングを覗いて購入リストとさせていただく予定。 分類は三ツ星の上位4枚、その他6枚の2つで、それぞれの中での順位は特につけていません。

  1. RAY DAVIES / Other People's Lives (V2 Records V2CP245)  ★★★
    愛するキンクスのレイ・デイヴィス初のソロアルバム。近年停滞気味の活動状況から考えると〜正直こわごわ聴いたのだけれどまったくの杞憂でした! 1曲目から『二日酔い』。「Things are gonna change♪This is the morningafter〜」と歌い出すともう一瞬でねじ伏せられてしまう。あーなんて性格の悪そうな声なんだろう(笑)最高。『フォビア』以来本当に久しぶりにこんなにも沢山の新曲を世に出したレイ。時間をかけただけあって?楽曲のクオリティは高く、満足度の高い一品。普通に聴いても素晴らしい作品でしょうし、自分のような人間にとっては待っておりました!の大傑作なのであります。10代20代を経て、三十路を迎える少し前くらいから更に熱が上がり始め、自身2度目(キンクスにとっては3度目)の来日公演をクラブチッタでかぶりつきで体験して以来キンキーな熱病はハイレヴェルで慢性化したまま、すっかり持病と化しているわけであります。この作品はニューオーリンズでの生活からインスピレーションを得ているそうで「プラスチックのVISAカードを持って〜♪どこへ行っても、ここを自分の住みかにしたいと言う」と歌われる『The Tourist』なんて曲もあります。そして『Next Door Neighbour』なんていかにも「らしい」内容の曲たちも。なのに、強く感じるのは焼き直しではない「まだまだやれるぜ感」。意外と古さを感じないのだ。もっとも、当時から「新しい」的な人ではなかったわけだけど…。先行して発表されたミニアルバム『Thanks Giving Day』もとんでもなく素晴らしい出来で(タイトル曲は名曲!未収録曲有り)、曲順やコンパクトさを評価してこちらを選ぼうか…とさえ考えたほどで、本当にまだイケるやん!!って感じです。デイヴは大病を患ったり、同世代人の中には世を去った人もいるというのに…フレンチクォーターで撃たれても死んだりしないレイ。実はしぶといのだ。キンクス活動再開を熱望します。
  2. IRMA THOMAS / After The Rain (Rounder 11661-2186-2)  ★★★
    このタイトルにこのジャケット、アーマの表情が穏やかに語りかけてきます。プレイヤーをオンにしたらもう最後までその歌世界から逃れることはできません。最初に挙げた2点に加えて楽曲、曲順そして歌唱。文句なしです。これほど全編を通じて「穏やかな視線の中に宿る強さ」というもの感じさせる彼女の作品はなかったのではないでしょうか。2006年を通じて最も多く聴いたアルバムのひとつです。冒頭の最初の音からそしてアーマの第一声。音盤に塗り込められた空気に引きずり込まれます。ベースとタンバリンだけで歌われる『I Count The Tears』、もうとても冷静ではいられない『I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free』などなど聴き所をあげればきりがありません。そして『Shelter In The Rain』を呆然と聴いているうちに終わりをむかえるのです。2005年、2006年のニューオーリンズを記憶に留める、静かでありながら雄弁な作品です。
  3. TERRANCE SIMIEN & THE ZYDECO EXPERIENCE / Across The Parish Line (AIM5014)  ★★★
    テレンスはまず声が好きなのであります。目の前にニューオーリンズの風景が浮かんできそうな歌声。メロディもちょっと甘酸っぱくって堪らないのです。過去には、ギターがラウドに鳴り響くサウンドで一瞬「うるさいなぁ」と思ったりしたこともありましたが、声とメロディでなんとなく許してしまったりしたものなのです。今作は最初と最後にイントロ、アウトロとして『INTERNATIONAL REMIX』なるものが収録されているなど、しっかりアルバムとして作り込まれた印象です。実際完成度も高く愛聴しております。David Hidalgoをはじめとしたゲスト参加曲もなかなかの充実具合。録音時期の異なる音源も収録されており1999年のRick Danko参加曲という掘り出し物も有り。しっかりアルバムとして繰り返し聴ける、彼のキャリアの中でも屈指の作品となったのではないでしょうか。でも宣伝文句にサム・クックを引き合いに出すのはどうかと思うぞ〜(笑)。CDを取り出したら現れる、砂漠でラクダに跨がった写真は要チェック。
  4. BEAUSOLEIL / Live In Louisiana (Way Down In Louisiana WDIL-1101) ★★★
    いやぁ最高です。カッコイイです。グレイト・ケイジャン・バンドの30周年記念作には「いぶし銀」とは無縁のワクワクさせる演奏がいっぱいです。ザディコナンバーもあり楽しいライヴ盤。曲間のお客さんの声を聞いていると、一度だけ観たライヴを思い出してしまいます。また生体験したい!と強く思わせてくれる好盤です。頭の中でフィドルがまだ鳴ってます。ジャケットもなかなか良い。トータル1時間を少し切るくらい、コンパクトに一気に楽しめます。お薦めです。
  5. LOS LOBOS / The Town And The City (Hollywood Records 2061 62661-2) ★★
    いつも素晴らしい作品を届けてくれるロス・ロボス。今回はいつにも増して素晴らしい!「またチャド・ブレイク?」と思ったのですが(勿論チャド絡みの作品は最高で大好きですが、違ったテイストのものがいいなぁ〜と漠然と思っていたため)これはまた新味、というか深化しています。すぐに口ずさめるようなキャッチーな楽曲が多いというわけではないのですが、ウタゴコロがいっぱいです。ギターの音色からして歌ってます。甘さと切なさにタフさが同居した、正しきポップ・ミュージック。噛めば噛むほどに味わいが増します。本当に素敵なバンドです。
  6. BRUCE COCKBURN / Life Short Call Now (Rounder 11661-3244-2) ★★
    常日頃「冬に聴く」「雪の日に似合う」という声を良く聞くブルース・コバーンの音楽ですが今回はそれを痛感。リリースからそんなに間をおかずに入手したのが8月でした。勿論大好きなミュージシャンなのですぐに気に入ったのですが、正直「うーん、最近の作品の中ではちょっと地味目かなぁ」と感じたものでした。しばらくの間は繰り返し聴いて、やがて棚に飾られたままとなってしまったのでありした。そして季節は変わりそろそろ暖房を使おうかな、などと思った頃に何気なく聴いてみると…!コレが皮膚に身体に染みわたるのです。「えっ!」と思いましたよ。いつにも増して素晴らしいのです。最初聴いた時より明らかに味わいが深い感じ。ひんやりした空気に触れた頬や腕に向けてスピーカーからコバーンさんが♪Life short 〜call now♪と歌いかけてくるのです。…沁みる。この1曲目から次の『See You Tomorrow』への流れにはすっかりヤラレております。季節モノのような聴き方って良くないとは思うのですが…。地味目、とは言いましたが『This Is Baghdad』『Jerusalem Poker』という彼らしいタイトルの曲も有り、全然枯れてなんかいません。ギターも堪能できます。これからの季節に是非!
  7. MITSUYOSHI AZUMA & THE SWINGING BOPPERS / Seven & Bi-decade (Victor VICL-42027) ★★
    最後まで楽しめる作品です。カッコイイ!サイコー!!これで終わってもいいような気さえします。聴く度に笑ってしまう『The Sidewinder』(有名盤ですが持ってなかったので「さぁーいこーだぁ♪」とリー・モーガンのアナログ盤を購入しました)。これまでのアルバムと全然違う!なーんてことはないのですが、歌詞でクスリと笑うだけでなく、いつも以上に演奏やコーラスの入り方やその人数などで笑いを誘われるように感じました。恥ずかしながら…キャッツ&ザ・フィドルも良く聴くものの、クレイジー・キャッツを思い出すところなどもあったのであります。そうそう、いろんな人が言っていますがベースの音がリアルに感じます。以前とそんなに全体の音像が違うわけじゃないけど、パソコンの小さいスピーカーで聴いてもそう感じるので僕は気に入ってます。いやぁ『アグリーウーマン』のカヴァーには感服です。
  8. JOE DOUCET / Houston's Third Ward Blues (P-Vine/Dialtone PCD-25041) ★★
    ダイアル・トーンって凄いなぁ。アメリカって広いんだなぁ。テキサスも広いんだろうなぁ。つくづくそう思います。このローカルブルーズマン発掘シリーズにはいつも驚かされます。内容もとんでもなく泥臭くイナタイし、ジャケも凄いし文句のつけようがありません。60代半ばまで、まったくのレコーディングルーキーというところが信じがたい。埋もれてるもんなんだなぁ〜と思うしか無いのです。とにかく1曲目から最高に素晴らしい、のだけれど同時に相当にドサクサでもあります。イナタいブルーズで始まり、いきなりワンコードブギー!そしてあまりにもオリジナルな世界観に涙、のギターザディコ。ザカザカ・ザディコ奏法に、これ以上無いくらいに相応しい歌唱。後半にはなぜか唐突にアコースティック弾き語りも有りというドサクサぶり。オーヴァープロデュースの、コレはその真逆にあります。でも「そのまんま手を加えない録音」こそがこの空気感を生んだのでしょう。曲間が短いのもGOOD!ブックレットの裏表紙の写真は必見です。
  9. 忌野清志郎 / 夢助 (Universal UPCH1520) ★★
    「あーるしぃサクセションがぁ聴こえーるぅ〜に♪」ヤラレてしまった人は多いことでしょう。『JUMP』を聴いた時からドキドキ感は続いていたのですが、やっぱりズルイシンガーです。少し聴いただけでどこかに引っかかって外れないのです。クロッパーさんもイイ仕事です。…そして耳を疑った闘病生活入り。(夏の野音のチケット、買ってました)改めて、こんなアルバムを聴いてしまうと復活、そしてゆっくりと長〜い活躍を心より期待してしまいます。昭和記念公園あたりでたくさん前座を率いての「RCサクセションライヴ」大コンサートなんて観てみたいもんです。
  10. WASHBOARD CHAZ BLUES TRIO /Hard Year Blues (No label, no number) ★★
    NewOrleansが誇る?癒し系??ブルーズトリオの新作は武蔵野の夜の空気を幾度も緩めてくれたものです。前作とは…殆ど、いやまったく変わっていません。タイトルを見て、ん?と思ったものでしたが『Wro〜ng Woman♪』と始まる1曲目からやっぱりユルイです。オリジナル・ナンバーは1曲、『Let's Runaway』。CHAZの声を聴くと「これでいいのだ」なーんて思ってしまったりするのだ。素晴らしいなぁ。ブルーズ・ミュージックのある一面を、わかりやすくリアルに体現している人でもあります。うーん…万人にお薦めはできないかな(笑)

    次点は2005年発売という理由もあり外すことになった自分にとっての2006年作、テキサス在住のUKパブロック・ラヴァー、エリザベス・マックイーンによるパブロック・カヴァーアルバム。重厚だったダーティ・ダズンなどなど。改めて振り返って思うのはやはり、2006年はザ・ワルツのローリーの作品が発表されなかったということ!3度も沖縄の外で聴ける機会があった年だというのに、本当に残念。あってもなくてもどーでもいいようなものが大量にリリースされて巷に溢れかえりながら、ナニユエ自分にはローリー氏のアルバムが供給されなかったのか?若干の物足りなさを抱えての年越しです。ライヴで体験した強烈な新作やCDに未収録のソウルナンバーを、2007年こそ多くの人が気軽に聴くことができるようになって欲しいと思います。レコード会社サンたちには「誰かホラ!ローリーを口説いてみろよきっと凄いものが出てくるぜ!」って感じです。


赤色: 新録もの

緑色: 再発もの




ベスト・ライブ
THE WALTZ 20周年記念ライヴ
(沖縄/新都心TOP NOTE, Feb. 10)

4時間以上に及ぶ脅威のロックショウ!いやソウル・レヴューか。ステージと客席両方の熱気にあてられフラフラになってしまいました。ローリー/ザ・ワルツがいかにオキナワの正しき(!)人々に愛されてきたかを実感できただけでも飛行機に乗ったかいがあったというものです。今更ながら立ち会うことのできた幸せを感じる、そんなライヴでした。

他には〜新装なったブルース&ソウル・カーニバルは期待以上の楽しさだったし、尖ってロックンロールな感じが個人的にはアタリ!だった東京でのローリーロールバンド等々。

加えて番外編・思い入れ大賞は7月29日のバイユーゲイトでのローリーLIVE。三鷹にこっそり初登場。時間も曲数もたっぷり、狭い店内で見せてくれた感動的な熱演に強烈な私的KO敗を喫したのでありました。





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