2006年ベスト・アルバム10選
中林由武


J. Paul Jr.


Les Amis Creole


Chris Ardoin


Same Ol' 2 Step

失礼してZYDECO,CAJUNのみのベスト10とさせて頂きます。
中には2005年後半発売のものもありますが、今年になって国内(もしくはルイジアナ外)に広く流通したものを対象としました。
順不同です。

  1. J.PAUL JR. AND THE ZYDECO NUBREEDS / Scorpio (J.P. JR., no number)
    楽曲、歌、アレンジ、全体の完成度、どれを取っても文句無しで今年のBEST ZYDECOです。ただ従来のZYDECOとは若干異なった音作りの為か、彼にはZYDECO界の反逆児というイメージがつきまとってしまい、一部の古くからのZYDECOファンには敬遠されがちな事実があるのは残念なことです。いつの時代もその時代に沿った変化はあるものです。どんな頑固オヤジでも少なからず変化はあるはずです。クリフトン・シェニエやバックウィート・ザディコ、ブーズー・チェイビスの時代が好きだった人達にも是非聴いて欲しいです。尚、斬新さが過大評価されてるアレンジに関しても冷静に聴いてみれば10年前のHIP HOPの手法にやっと追いついた程度だと思います。安心してください。
  2. LES AMIS CREOLE / Les Amis Creole (Arhoolie CD 529)
    ギリギリ、今月(12月)に届きました。ここんとこ毎日聴いています。ここ数年、南西ルイジアナではMarc Savoyの息子達の世代、Wilson Savoyさんなどを筆頭に「Creole Music回帰」な活動が目立っていますが、正直、僕はいまひとつまだガツンと来るものが無くて様子見でした。そんな中、やっと目の前が開かれるような感触を与えてくれたのがこのアルバムです。Les Amis Creoleは若手フィドラーCedric Watson、以前からプロダクション活動やラジオDJなどでもCreole Music界を支えてきたギターリストのJames Adams、そしてそろそろCreole界の生字引(まだ50代後半なのでそう呼ぶのは早いが)の域に達してきたフィドラー(このアルバムではアコーディオン)Edward Poullardの三人からなるユニットです。オリジナル曲とCanray FontenotやDennis McGeeなどトラディショナルな曲を交え、ルイジアナの情景を聴く者の目の前に再現してくれます。
  3. CHRIS ARDOIN & NUSTEP / M.V.P. (NuStep4Life Entertainment 2006)
    今年も順調にますます磨きのかかったアルバムを作ってくれました。一聴すると上記J.Paul Jr. - Scorpioと似た感触があるかもしれませんが、徹底的に違うのはJ.Paul Jr.は意識的にオリジナリティとしてトラディショナル色を排除するのとは逆にクリス君は「あまり気にしてない」点かと思います。オリジナル曲でもトラディショナル曲でもあまりスタイルを変えずにさらりと全てクリス節で演奏してしまうところがカッコ良いです。尚、このアルバムには二曲だけ惜しくも閉店してしまった老舗ザディコ・ナイトクラブ「Richard's Club」でのライブ録音が収録されています。しかも個人的に大好きな曲「Chicken Run」これがまた良い具合でナイトクラブの魅力が存分に伝わってきます。それと蛇足になりますが、何と言うか僕はこのアルバムにある種「怒りと諦め」のようなものを感じます。またそれが作品のクオリティを高めているのに作用しているとは思うのですが、、、何なんでしょう?ザディコを取巻くルイジアナの現状なのか?はたまたクリス君自身の個人的な状況なのか?
  4. SAME OL' 2 STEP / Something For The Young & Old
    ZYDECO新人賞をあげたいバンドです。若手と言うに相応しい、清々しく躍動感に満ち溢れたアルバムに仕上がっています。今年は車の中で一番良く聴いたような気がします。11月あたりに早くもセカンド。アルバムが出たらしいですが、まだ手元に届いてません(泣)
  5. T-BROUSSARD & THE ZYDECO STEPPERS / Knock Knock (Soul Wood SWR06)
    一聴すると、突っ掛かるような独特なリズムとブホブホしたアコーディオン、力の抜けた切ないボーカル。慣れてないと始めはちょっと可笑しく感じるかもしれません。とりあえずボリューム最大で聴いてみましょう。するとそのうちに腰が無理矢理動かされてきます。腰が動き出したら足を片方ずつでいいので前や横にスライドしてみましょう。ほら、これであなたもザディコ・ダンス・ステップ習得です!このアルバムはそんな不思議な魅力があります。
  6. SWAS / Vol. 2: Hit The Highway (Soul Wood SWR09)
    SOULWOOD ALL STARS(SWAS)名義になってますが、いつものKeith Frank & the Soileau Zydeco Bandとたいしてバンドメンバーの違いはありません。目立った変化としてはキーボードの参加ぐらいでしょうか?実際、今年もKeithのステージを二回観て来ましたが、このアルバムのバンドメンバーとほぼ同じでした。前作「GOING TO SEE KEITH FRANK」は最近のKeithのナイトクラブでの演奏内容(スタジオ録音ですが)をギュっと詰込んだ気っ風のいい内容でした。今作はそんな前作の中からの数曲のリミックスと新曲で構成されています。
  7. CURLEY TAYLOR & ZYDECO TROUBLE / Free Your Mind (Louisiana Soul, no number)
    前デビュー作も好評だったCurley Taylorのセカンド・アルバム。あいかわらず人柄の良さ、且つ、伊達男っぷりを見せつけてくれるカッコいいアルバムです。地元でも若手ザディコ・バンドからの人望も厚く良き兄さん的存在のようです。実はこれ、僕なんかが他人に薦めていいものなのか自信ないんです。というのは、このアルバムは二枚組でして、一枚目は大好きでハード・ローテーションしています。しかし、二枚目はまったくザディコでなく、いわゆるR&Bなんです。おそらく本人はこの二枚目に特別な思い入れがあると思うんですよ。なのに僕はこの二枚目の方はまったく聴いてません、、、。
  8. THOMAS "BIG HAT" FIELDS / Foot Stompin' Zydeco (Mardi Gras MG-1101)
    これは90年代にLanorから発売されていた「Louisiana Is The Place To See!」と「COME TO LOUISIANA」の再発二枚組です。この人の「勢い」と「ゆるい感じ」のブレンド具合は凄く気持ち良いです。個人的には「COME TO LOUISIANA」側の方がバカ騒ぎ感が伝わってきて好きです。どことなく雰囲気がRoy Carrierあたりに似てるかと思います。
  9. LEON CHAVIS & THE ZYDECO FLAMES / Heat Is On (no label, no number)
    デビューアルバムです。なかなかファットな音作りで、演奏も新人なんてことを感じさせません。彼はたしかブーズー・チェイビスの曾孫あたりの親戚だったかと思いますが、3ロー・アコーディオンの弾き方がそれとなくチェイビス家の味を感じさせてくれます。
  10. HORACE TRAHAN / Hard Pressed, But Never Crushed (Almena Films) [DVD]
    2001年に「That Butt Thing」というヒット曲を作ったHorace Trahanのインタビュー映像です。ケイジャン界では由緒あるTrahan家からデビュー、何を思い立ったのかある時にザディコへ転向、その後レゲエをもザディコに取り入れてみたりと波乱万丈な活動をしてきました。一般的にはケイジャンもザディコもまあ似たようなアコーディオンを使ったアメリカ南部の音楽でしょ?と思われるかもしれませんが、それなりに歴史・人種・風俗のブ厚い壁があります。なかなかHorace Trahanのようにクレオールな人達に受け入れられている白人ザディコ・ミュージシャンは居ないでしょう。そういった今までの活動を、タバコをブカブカふかしながら本人が語ってくれます。ちなみにインタビュー映像中心なので演奏シーンは少ししか入っていません。それと、このDVDの製作元であるALMENA PICTURESは南西ルイジアナ好きには結構興味のそそられる映像を他にも幾つか作っています。要チェックです。
※番外
日本コンフント協会 / i PURO CONJUNTO ! vol.2
番外ですのでZYDECO,CAJUNからちょっと外れさせてください!これは日本コンフント協会で作られているCONJUNTO(コンフント)の紹介CDです。TONY DE LA ROSAのようなベテラン勢から現在も活躍中のLINDA ESCOBARなど新旧織り交ぜられた内容となっています。会長さんの愛情たっぷりの解説書も付いています。コンフント、テックスメックスなんてどれから聴いたらいいんだかさっぱりワカランとお嘆きのあなたに是非お薦めします。正規ルートでは販売されてませんのでmixi内のコミュニティ「日本コンフント協会」に問合せしてみましょう。


赤色: 新録もの

緑色: 再発もの




ベスト・ライブ
BIG 8 TRAIL RIDE
(Branch, LA, May 20-21, 2006)

TRAIL RIDE(トレイル・ライド)と呼ばれる簡単に言えば週末などに南西ルイジアナ各地で行われるクレオール・カウボーイ達の「馬自慢大会」とでも良いでしょうか?そこでは出し物としてザディコ・バンドの演奏が行われます。今回の出演はChris Ardoin & NuStep、Leon Chavis & the Zydeco Flames、Terry & The Zydeco Bad Boysでした。馬と青空と粋なクレオール・カウボーイ達とビールとケイジャン料理とザディコ、そりゃもう最高です。





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