2007年ベスト・アルバム10選
宮崎けい


Phillip Walker


Keith Dunn


Burnside Exploration


Kei Miyazaki

  1. PHILLIP WALKER / Going Back Home (Delta Groove Productions DGPCD115)
    「ガルフコースト(湾岸)ブルーズマン」と呼んでいるタイプのミュージシャンがいる。ルイジアナ、テキサスのメキシコ湾岸沿いで活躍し、その延長で西海岸でも活躍する。フィリップ・ウオーカーはまさにその典型だ。ルイジアナR&Bあり、ライトニンを偲ばせるテキサスダウンホームあり、そしてこれまたテキサス風ジャズあり。おおらかで楽しいR&Bと素朴な田舎っぽさ、そしてちょっぴりおしゃれな大人の味も楽しめ、とても心地よい。昨年のこのコーナーではDVDを紹介させていただいたので、連続2回の「出場」となった。
  2. BURNSIDE EXPLORATION / The Record (P-Vine PCD-23962)
    ギターとドラムとのデュオ、あまりにシンプルな迫力が凄い!ロックっぽいサウンドなのに「許せる」のはなぜか?ルーズなドラムが黒っぽいからか?いや、「バーンサイドの末っ子と孫のコンビ」と聞けば、それだけですべての謎は解けるように思う。「You Don’t Love Me」はまるでクリームで、Poor Man’s Bluesはどこかマジックサム的だ。どれも私がかつて徹底的に思い入れた音なので生理的に相性がいいのだろう。
  3. Keith Dunn / Alone With The Blues (Deetone DCD5501)
    一見チェスっぽいジャケ写真を見て、無条件に購入。サニーボーイ系のみずみずしいハープと歌だけでこの完成度!歌もハープもうまく、息遣いが生々しく伝わる。「一発録り」と書いてあり、なるほどと思ったが、実はそれだけではなく、レトロな音を目指してオープンリールで録音したとは脱帽あるのみ。「ドンドン」と聞こえてくる足でビートを刻む音は、ジョンリーフッカーのLPと初めて出会ったときの衝撃を思い出す。
  4. RAY REED / Lookin' For The Blues (Dialtone/P-Vine PCD-25068)
    オープニングを最初に聴いたときは、「テキサスゲットーと言うわりにはシカゴっぽくない?」と思ったけれど、さすが「Woke Up This Morning」のノリは温かかった。ラフでぶっとい「Boogie Chillen」もいいし、さすがテキサス仕込の「Have You Ever Loved A Woman」は味わい深く、このアルバムでいちばん好きになった曲だ。
  5. DAVID BRINSTON/ Here I Go Again (Ecko ECO1095)
    メンフィスのCDショップで見かけて買ったもの。この人は1959年ミシシッピー生まれらしい。今年のこのコーナーでは、この年代のブルーズマンを複数取り上げる結果となっている。ブルーズ界の世代交代は、どうしても去るものを惜しむ話に傾きがちだが、このアルバムを聴いていると、代替わりに頼もしさを感じる。まともなソウルだ。1曲目の甘―い感じがとてもいい。
  6. AL GARNER / Get Out Blues (SPV 95842 CD)
    これもメンフィスでの「ジャケ買い」である。特に軽快な2曲目が楽しめる。この人はもともとフレディキングのバックでドラムを叩いていた。ドラムが出世してメインに出たのか?それとも、もともとドラムもボーカルもいつでも両方できる人なのか?吉祥寺のブルーズセッションなどでも、ドラム、ギター、ベースとなんでもできる人がいるが、とてもうらやましい。
  7. LUTHER ALLISON / Underground (RUF1132)
    Easy Baby がいいところでフェイドアウトしたりするので、「えー!これで2千5百円?」と嘆いたものの、息子さんのバーナードがこのアナログ版を見つけてくれたから発掘できた歴史的資料。ルーサー18歳にしての事実上のデビューアルバム。「Rock Me Baby」のボトルネック、とてもいい感じ。
  8. LURRIE BELL / Let's Talk About Love (P-Vine PCD-93044)
    そのルーサーのデビューアルバムが録音された1958年に生まれたのがこのルーリー・ベル。私と同世代であることもあり、82年の初来日以来、強いシンパシーを感じ続けてきたミュージシャンである。ご存知のとおり、その後はドラッグあり、家族との悲しい別れあり、というまさに波乱を経ての来日となった。目黒のライブに行くとき、90年にシカゴで撮った彼とのツーショットを記念に持っていこうかと探した。しかし、やっと見つけた写真の彼は「ドン底」の表情で写っていたのでそれはやめにした。あらためて音楽に真正面から取り組もうとする必死な姿勢を見たが、私にはとてもイタイタしく感じられた。演奏レベルはかなりのものだったが、ブルーズ的奔放さみたいなものがほとんど感じられず、残念ながら心の底から楽しむことはできなかった。どうしても初来日のときの伸びやかさと比べてしまう。かつての活きのいい「Everyday I Have The Blues」は「ブルース&ソウル・レコーズ」76号添付のCDの1曲目でも聴くことができる。
  9. ROSCOE SHELTON / Save Me (SPV 95812 CD)
    これもメンフィスで見つけたもの。全体としてバランスも良く、また現代的で小気味良い印象。ライブで見ると楽しめるタイプかもしれない。しかし、泥臭さというか、トロりとしたものがもう少し欲しいような気がした。

(番外) Kei Miyazaki / Blues Cradle (Cotton 001)
「ベスト10」のはずなのに十番目の代わりに番外で恐縮だが、今年は、音楽生活30年目にして初レコーディングが実現した特別な年なのでお許しいただきたい。しかも、録音した場所はあのアル・グリーンのビデオにも映っている天下のHiレーベルのスタジオ。今回の快挙は、スタジオの主であるウイリー・ミッチェル先生がたまたま現地バンド仲間のひとりの継父であるという幸運により実現したのである。しかも光栄なことに、その大先生が私のアルバムのマスタリングを覗きにきていただいたという光栄にもあずかった。私はボーカルとギター、そしてバンドは「The Soul Survivors」というベテランローカルバンドである。「I’ll Play The Blues For You」をはじめとしてすべてカバー曲。「You Don’t Love Me」は上記「2」よりもイナたく出来上がっているのだけは自信あり(?)。初回プレス100枚は手渡し完売間近。2回目プレスを密かに計画中なので、ご支援のほどよろしく〜!

赤色: 新録もの

緑色: 再発もの




ベスト・ライブ
メンフィスでは自分のレコーディングで忙しく、残念ながらライブを見て回る時間がなかった。東京で見たのはルーリー・ベルのみ。

(番外) Kei Miyazaki at Executive Inn Airport Memphis
そこでまたいきなり番外となるが悪しからず。レコーディングの合間に2回、現地でゲスト出演させてもらった。そのひとつとして、数年来の友達であるドラムから誘われて、メンフィスの古いホテルで行われたショーにギター持参で出かけた。まず、ミュージシャンも、お客さんも、まるでミシシッピーのまま。私は道すがら、「場所がホテルだから、是非ともDown Home Bluesをやろう」と心に決めていたところ、着いてみるともうバンドのボーカリストがZZ Hillパーフェクトバージョンで延々と歌っているではないか!私の番になったので、まず「Crosscut Saw」を演奏したところ、客席の熟年女性が腰をグリグリに揺らしながら踊ってくれた。ホテルがいつのまにかジュークジョイントと化していた。帰るとき、ピストルを腰にぶら下げたゴツイ用心棒のおっさんも「よかったぜ」と何回もうなずいてくれた。以上、ご報告、終わり!





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