2007年ベスト・アルバム10選
上田有


Johnny Sansone


Ray Davies


Kermit Ruffins


Paul Cebar

私的にはドトウの勢いで過ぎ去っていった2007年。昨年に引き続きアナログ旧譜が生活の中心ではありましたが、CD新譜ライフもなかなかに充実。そのうえアタリも多く、セレクトし、15枚まで絞るのでさえ苦労しました。基本的にバイユーゲイトでのヘヴィ・ローテーション具合と自分の聴き込み度を最優先しています。分類は1位が三ツ星で同率2枚、その他8枚が2ツ星です。ブルースやザディコ/ケイジャンものが結果的に選から漏れることになって『ぶる銀』的には非常に申し訳なく感じています。反省。

  1. RAY DAVIES / Working Man's Cafe (V2 VVR1048572)  ★★★
    2006年に引き続きレイのアルバムが1位というのは我ながら芸が無いとは思うけど、仕方ない。何故なら、サイコーだった前作より更にサイコーで素晴らしいからだ。 まずタイトルからして名作の予感が漂います。発売前に目にしてドキドキしたジャケ写もファン心をくすぐります。なにより、とにかく曲が良い!これには誰も抗えません。イジワル気味でキンキーな歌声も健在。 前作が初ソロ作ということで、かなり(新たなリスナーに向け?)力の入った作品だったのと比べると、今作はタイトルからもわかるようにイギリスの匂いも強く、『UKJIVE』〜『PHOBIA』に続くキンクスの新作という趣きさえ感じさせます。…でもこれって改めて「キンクスてレイのワンマンバンドだったんだなァー」ということを突きつけられて複雑な気分にもなってしまうのでした。 と、そんな年末に「キンクス2008年にオリジナルメンバーでリユニオン!」とのビッグ・ニュースが!! とはいえ、2度(3回)体験した来日公演時のラインナップに思い入れのある自分としては少々複雑でもあり…。なかなかに罪な男ですレイ。
  2. JOHNNY SANSONE / Poor Man's Paradise (ShortStack 1006)  ★★★
    罪な男レイ・デイヴィスにゴール前で並ばれ同率1位となったものの、このアルバムこそが2007年を代表する作品であり、最もプレイヤーに乗ったCDでありました。 インパクト十分のタイトル曲は、今後聴く度に2007年という年を思い出すことでしょう。天災であり人災であるハリケーン・カトリーナによる災害後のニューオーリンズを”貧しい者の楽園”というタイトルで表したこの曲はジョニー・サンスンの静かな怒りと”彼の地の音楽の香り”に満ちていて、7分近くをまったく飽きさせません。まだまだ復興の進まない現実や、傷つけられた楽都としての伝統について歌われるこの曲がニューオーリンズに関心のある多くの人々に聴かれることを願ってやみません。TVのニュースで耳にした「この災害に襲われたのが他の大都市だったならば、長きに渡ってこのような状態で放置されたりはしなかっただろう」という言葉が改めて思い出されました。この作品が2007年にリリースされたという事実が、喧伝されている「復興」がうわべの見せかけでしかないことを物語っているように思います。そしてこの重い現実を、このような豊かで柔軟なグルーヴに包まれたサウンドの「繰り返し聴ける(飽きさせない)作品」に仕上げたことが何より素晴らしいと思います。 しかし、ジョニー・サンスン。10年前の夜、僅かな差でライヴを見逃したことが今更ながら悔やまれます。
  3. KERMIT RUFFINS / Live At Vaughan's (Basin Street 0106) ★★
    ニューオーリンズの「木曜深夜のオタノシミ」と伝え聞く、ヴォーンズに於けるカーミットのライヴを収めたライヴ盤。とにかく胸躍る音楽が詰まっています。 ラフでファニーでファンキー!オーディエンスの歓声、嬌声。ブックレットの店内写真。全てがヴォーンズに誘っています。「あああ〜行きたい!」となるCDです。youtubeにこのアルバムの宣伝用?とおぼしきヴォーンズでのライヴ映像がいくつかあるのですがこれまた危険な誘いに満ち溢れています。
  4. VARIOUS ARTISTS / Goin' Home - A Tribute to Fats Domino (Vanguard 225/26-2) ★★
    安くて旨くて栄養がある。というか…メンツが良くて企画が良くて演奏内容が良い。昨今の乱発されるトリビュート盤の中では特筆ものの、演者と制作者両サイドの志が極めて高い名作だと思います。「流石、わかってらっしゃる!」と声を出したくなるような、まさに痒いところに手が届く人選。そのうえ大盛り、特盛りの2枚組30曲。 何故にアタマの曲のみ大有名既発テイク?という疑問は残りますが、聴けばそんな疑問も簡単に霧散する、長く楽しめそうな大満足の逸品です。
  5. TERRANCE SIMIEN & THE ZYDECO EXPERIENCE / Live! Worldwide (AIM 5016)  ★★
    入手後一聴して〜選曲も内容も含め(乱暴に言えば)特にヒネリのないライヴ盤という感想を持ったものでしたが、結局愛聴してしまうこととなりました。やっぱり自分はテレンスの声と歌が好きなんですね。ノー天気さ倍増のライヴ感がスピーカーから次々と漏れ出てきます。『You Should Know Your Way By Now』が特にヒットテイクです。一人集中して聴いて感銘を受ける、というような作品ではないけれど、店で流すのには名作でありました。お世話になりました!
  6. PAUL CEBAR / Tommorow Sound Now For Yes Music People ★★
    この方のことは良くは知りません。遠くミルウォーキーのローカルスターのようです。1、2曲目の破壊力は十分。ジャケットもタイトルも素晴らしい。よって購入したというわけです。かすかにロス・ロボスに通じるようなゴッタ煮感覚が、実はなんとなく微妙にイナタイ。そこが魅力なのですが、そのうえ更なるB級感がゆらゆらと立ちのぼっています。そんな本作は2007年、冒頭の2曲限定なら3ツ星クラスのヘヴィ・ローテーションでありました。
  7. LAFAYETTE RHYTHM DEVILS / Les Clefs De La Prison (Zaffaire) ★★
    このグループについても良く知りませんでした。しかし良く聴きました。どこが特筆して素晴らしいかと尋ねられるとなかなか困ってしまうのですが、なんというかこのヤサグレ感が2007年のバイユーには必要だったということでしょうか?とにかく頻繁にお世話になりました。2008年も度々聴くことになりそうです。
  8. PHILLIP WALKER / Going Back Home (Delta Groove Productions DGPCD115) ★★
    10年ぶりのスタジオ作。期待はしていたけれどこれほど良いアルバムが出て来るとは、失礼ながら思いもよりませんでした。ジャケット写真(なかなかカッコイイ)を見ると、もうかなり御大という風貌になってきておりますが内容は冴えに冴えてます。1曲目から「おお!」と盛り上がってしまいました。シャープでコンパクトで、僕があまり好まない冗長なブルース・アルバムとは一線を画す仕上がりとなっております。 16歳の頃、エディ・テイラーの大傑作『I FEEL SO BAD』(私的ブルースベスト10作にはいつ何時でも、必ず入ります)のバックを担当している最高のサイドマン、という出会い方をして以来いつも「センスの良い人だなぁ」と思っていたものですが、そんなところも今でも健在です。こういう人をこそ今年のブルース・カーニバルで観たいものです。
  9. JOHN FOGERTY / Revival (Fantasy 0888072300019) ★★
    とにかくプレイヤーにセットしてスタートすれば、それで楽しめること間違いなし。元気の出るアルバムです。後半少々(自分の好みギリギリの)ハードサウンドになるところはありますが、全体の印象で考えるとベスト10からは外せませんでした。勿論、「まんまCCRやん」との声もありそうですが、「それが悪いかえ?」って感じです。つくづく思います。声が良い人って得だなァ。 2007年は活発に(CCRナンバー連発の)ツアーをしていたようですし、是非なんとか今年は日本でLIVEを観たいものです。
  10. ROCKIE CHARLES / I Want First Class (Soulgate 2007) ★★
    実は10枚から外そうかどうか迷いました。一聴しただけでニューオーリンズの香りがモワッと漂ってくるこのロッキーの新作はとにかく力作です。が、制作サイド(本人?)があまりにもひどい。CD-R作品だって装丁はもっとマシだと思う。とにかくジャケットがヒドイ。酷すぎる。商品として紹介されていたジャケットとはまったく違うもので、しかも縮小モノをコラージュ?したカラーコピー。しかも斜めになったぞんざいなカラーコピー。そしてそれを極めてテキトーに折り曲げて(勿論斜めに折っている)無理矢理ケースに突っ込んだというシロモノ。クール! 聴いてるうちに曲順も適当に並べてるような気さえしてくる。…でもコレがいいんですよねー。ユルくって。いつもこの濃厚なルイジアナ感にヤラレてしまうのです。ちなみに2007年を彩った名曲である1曲目はそんなにユルくはないです。スキモノの方には熱烈にお薦めします。

次点は本当に力作だったグラハム・パーカー(彼はまだまだ尖ってます)。久しぶりにエレキ・ギターを弾き倒しているリチャード・トンプソン。気持ちの良いビート感で長く楽しませてくれたジョー・クラウン・トリオ。そして、最初はあまりの地味渋さゆえピンとこなかったものの〜どんどん好きになっていったニック・ロウ。あとは良く聴いたパイン・リーフ・ボーイズ。このへんまでが最終選考まで残りました。


赤色: 新録もの

緑色: 再発もの




ベスト・ライブ





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