2008年ベスト・アルバム10選
チュートン


Janet Klein


Soul Children


Gatemouth Brown


Niyaz

今更改めて言うまでも無く毎年のセレクションで露呈されてしまっておりますが、たまたま縁あってブルース銀座でベスト10に参加させていただいているものの、ブルース(特に最近のもの)にはかなり疎いです。
と言うよりも、若手のブルース・ミュージシャンや近年レコード店に並んでいるようなレイヴォーンやボニー・レイットの亜流みたいな白人系がどうも苦手で、そうした人たちを聴くくらいなら、スリーピー・ジョン・エスティスの発掘盤「On 80 Highway」を聴いている方がずっといいし、B.B.キングの最新ライヴDVDの方が和めてしまうのです。
自分が年取ってから、特にジャンルを問わず、その道を極めた人の音楽に惹かれてしまうことが多いのかもしれません。
ということで、選んでいくと、結局今年もこんな風になってしまいました。
例によって順不同です。

  1. DR. JOHN AND THE LOWER 911 / City That Care Forgot (429 Records FTN 17703)
    怒れるドクター全開といったところですが、勿論その怒りをただぶつけるだけのような青臭さなんて微塵もあるわけなく、ひとつひとつの楽曲の完成度の高さで、そのメッセージをより深いものにしている点がさすが.....なんてことは抜きにしても、やっぱり彼の音楽自体にはここでも心地よいグルーヴがあり、ただただ繰り返して聴いてしまうことになるのです。次回は是非とも楽しいアルバムが作れるような状況になってほしいものですね。

  2. LABELLE / Back To Now (Verve B001151102)
    解散後30年あまりたってからの復活(以前にもパティのソロに1曲だけ3人が揃ったことがあったけれど)で、正直今更という感じもあったのですが、いざ聴いてみると、このところオーソドックスな作品の多かったパティにも久々に刺激の多いプロジェクトであっただろうことの窺えるアルバムで、この3人ならではのマジックで満ち溢れています。80年代にはむしろパティよりもシーンの中心に居たノナ・ヘンドリックスがもう少し表に出てきてほしかった気もしますが.....。

  3. SOUL CHILDREN / Still Standing (JEA/Right Now 0020)
    近年のJ.ブラックフットのソロが充実していたので、これもまた今更何で?という思いもあったのですが、ちょっとサウンドのチープさは気になるものの、やはり往年の熱いヴォーカルのぶつかり合いが再現されており、ソウル・ミュージックのダイゴ味を存分に感じさせてくれるもので嬉しい限りでした。でも一番の聞き物がかつての名曲"The Sweeter He Is"の再演というのがちょっと不満でもあります。

  4. JANET KLEIN / Ready For You : Japan Tour 2008 July 24
    彼女は2008年の新作も出していますが、僕の51歳の誕生日に行なわれた至福のライヴをそのまま収録した、このオフィシャル・ブートレッグの方をあえて選びました。残念ながらイアン・ホイットコムは今回参加していないものの、彼女とパーラー・ボーイズのノスタルジックでヒップな歌と演奏はいつも聴き手を幸せな気分にしてくれます。カタコトの日本語で歌われる元祖ヘンな外人バートン・クレーンのカヴァー「酒が飲みたい」が可愛い♪

  5. JOHN BOUTTE / Good Neighbor (no label, no number)
    12月に入ってから手に入れたものですが、この味わい深い歌声は現在ヘヴィ・ローテーション。ニール・ヤングの"Southern Man"のカヴァーにはビックリでしたが、そんな異色の曲をやっても、全体的にはニュー・オーリンズの香りがプンプンするアルバム。 オリジナル曲もなかなか魅力のある作品が多く、彼のソングライターとしての力量も感じられます。

  6. AMOS GARRETT / Get Way Back -A Tribute to Percy Mayfield- (Stony Plain SPCD 1330)
    すでに前年の来日公演時から予告されていたようにパーシー・メイフィールドのトリビュート・アルバムとなりましたが、彼の持ち味がこれほど発揮されたアルバムって今までなかったくらい、よく練り上げられた作品集だと思います。彼のヴォーカルが以前に比べると少し弱くなってしまったのがちょっと残念ですが、その分円熟を増したギターが存分に歌ってくれていますよね。

  7. CLARENCE "GATEMOUTH" BROWN / Live From Austin TX (New West NW80529) [DVD]
    アメリカの人気テレビ番組の中から、これは嬉しいDVD化。まだ元気だった1996年のゲイトの勇姿がたっぷり見られるのは勿論のこと、おなじみのジョー・クラウンをはじめとするバンドとのコンビネーションも楽しさでいっぱいです。普段カントリー系の出演者が多いプログラムということもあってか、後半はフィドルを弾きまくっていますが、彼って機嫌のいいときほどフィドルを持つ時間が長かったようにも思うので、多分絶好調だったのでは?

  8. ウズマキマズウ(小川美潮) / 宇宙人 (AGOGA 001)
    何故に小川美潮?という声もあるかと思いますが、まぁ、よくJIROKICHIでライヴをやっていることですし(笑)。現在の日本の音楽シーンの中では最も存在感のある女性ヴォーカリストの久々のオフィシャル・アルバム。このところ活動を共にしている人達が録音に参加し、曲目もすでに彼女のライヴではおなじみの作品ばかりで、長い間あたためられてきたものだけに、聴き応え充分でした。

  9. NIYAZ / Nine Heavens (Six Degrees/Music Camp MCS-3072)
    在米イラン人を中心としたユニットのセカンド・アルバム。ヴォーカリスト:アザム・アリの濃厚な色香にやられてしまいました。 一時期のツェッペリンを聴いているような気分にもなりますが、多分純粋な民族音楽を愛好する人には全く受け入れられないであろうミクスチャー的なところが僕のような門外漢にはフィットしたようです。そこから更に原点となる音楽を聴いてみたくなる気にさせるという点では、日本で言えばOKIみたいな存在なのかも?

  10. JUANA MOLINA / Un Dia (Domino WIGCD 227)
    これまた全くブルースからかけ離れたアルゼンチンの音響派と言われている人ですが、たまたまCDショップで試聴して以来ハマってしまい、11月にはライヴまで見に行ってしまいました。 テクノロジーなくしては有り得ない音楽ではありますが、そこにどれだけ人の血を通わせることが出来るのかを体現した作品だと思うのです。

勿論ここで洩れてしまった中にも、ランディ・ニューマン、エリカ・バドゥ、スティーヴ・ウィンウッド、ティッシュ・ヒノホサ、ソロモン・バーク、ジョン・クリアリー他素敵な作品が沢山ありましたし、また逆にアーマ・トーマスは今回ちょっと馴染めませんでした。
またDVDのドキュメンタリー物に傑作が多く、カーティス・メイフィールドのインプレッションズからソロへ至った時代の絶頂期の映像を数多く収録した「Move On Up」、サム&デイヴの歩みを追った「Soul Men」などは、本当に嬉しいリリースでした。
また相変わらず素晴らしい編集物を出し続ける英国Proper Boxシリーズの「Steelin' It」(スティール・ギターの名演を集めた4枚組)も忘れられません。

赤色: 新録もの

紺色: 再発もの




ベスト・ライブ
ザ・フー
(日本武道館, Nov. 17)

他の日も含め彼等のステージが素晴らしかったのは勿論のことですが、この日は武道館を満杯にした観衆の凄まじい熱気、更にそれに応えるかのような彼等の熱演との相乗効果で、正に会場が興奮の坩堝と化しており、そんな中に居られたことをとても幸運に思っています。





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