ブルース銀座: 2009年ベスト・アルバム10選: チュートン



2009年ベスト・アルバム10選
チュートン


Dan Hicks


Jim Kweskin


Bela Fleck


Eddi Reader

一昨年から遅まきながらデジタル・オーディオ・プレイヤーを購入し、新譜を中心に取り込んで外出時に聴いているのですが、やはり便利ですね。何でもっと早くそうしなかったんだろうと後悔しています。 ということで、今回のベスト10もほとんど通勤・帰宅の電車の中や休日街中を歩きながら聴いているものばかり。逆に家でじっくり聴く時間が激減してしまっているけれど、自分の趣向にはあまり影響は無いみたいです。
  1. DAN HICKS & THE HOT LICKS / Tangled Tales (Surfdog SFR517618)
    曲目が発表された時点ではAcoustic Warriors等で既に発表済みの歌が多かったのでちょっと期待薄の感もありましたが、実際聴いてみると、それらの曲にもHot Licksならではの華やかさが加味されていて、更にユニークなカヴァーもあり、新鮮に感じることができました。
    アルバムの完成度としては前作の方が断然上なのですが、今回はこの数年メンバーが固定されたバンドとしての音を前面に出していることで、Danの今のHot Licksに対する信頼感と充実度が伺えます。
    それにしても、この趣味の悪いジャケットだけはもうちょっと何とかして欲しかった......(苦笑)。

  2. MARIA MULDAUR / Maria Muldaur & Her Garden Of Joy (Stony Plain SPCD1332)
    そのDan Hicksもゴキゲンなデュエットを聴かせて自らの作品も提供しているMariaの新作は、彼女の原点であったジャグ・バンド・スタイルで、戦前のブルースを中心に楽しく歌われていますが、"Good Time Music For Hard Times"というサブタイトルからも判るように、明らかに今の不況にあえぐアメリカに向けてのメッセージがこめられているように思います。
    かつての盟友ジョン・セバスチャンやデイヴィッド・グリスマンらの好サポートもあり、リラックスした彼女の歌声は本当に水を得た魚のよう。このレコーディング風景を覗いてみたかったものです。

  3. JIM KWESKIN / Enjoy Yourself (It's Later Than You Think) (Blix Street G210091)
    そのMariaもかつて活動を共にしDan Hicksにも多大な影響を与えたJim Kweskinの新作も、また彼らしいノスタルジックな中にも洗練されたセンスの良さが発揮された好盤でした。バックのメンバーは馴染みの無い人ばかりですが、いずれも達者な演奏。 トラッドの"John Henry"、Berlinの"Blue Skies"、Ellingtonの"C Jam Blues"とかなり無節操に思える選曲で進む中にも、ちっとも不自然さや唐突さを感じさせないのはさすがです。

  4. ALLEN TOUSSAINT / The Bright Mississippi (Nonesuch WPCR-13336)
    「カトリーナ」以降精力的な活動が続いていますが、「おお、今度はそう来ましたか!?」と思わず膝をポンと叩いてしまうような企画アルバム。こうしたトラディショナルなジャズをやっても単なる懐古趣味にならず、独自のしゃれっ気ある音楽にしてしまうところが、この人の凄いところですね。
    それもEllingtonやMonk、Mortonといったアメリカの音楽だけでなくDjango Reinhardtのレパートリーまで登場するとは思いもよりませんでした。

  5. JOHN FOGERTY / The Blue Ridge Rangers Rides Again (Fortunate Son/Verve Forecast B0013286-02)
    昔の同バンド名義のアルバムは彼のマルチ・プレイヤーぶりが鼻についたこともあってあまり好きではなかったのですが、今回は達者なメンバーを揃えたこともあり、スンナリ耳に入ってきて、すっかりお気に入りの1枚となってしまいました。
    カントリー・アルバムといっても、Buck OwensからDelanie & Bonnieまで素材はかなり幅広く、John Denverの"Back Home Again"のような曲がとても味わい深く歌われていたりして、こちらもつい口ずさんでしまいたくなるほどです。

  6. ROBERT CRAY / This Time (Nozzle/Vanguard 79960-2)
    ブルース・カーニヴァルでの異例の長尺ステージでもその好調ぶりが伝わってきただけに楽しみにしていた新作でしたが、楽曲・歌・演奏全てが期待していた以上に粒ぞろいで、これまで聴いてきた彼のアルバムの中でも一番なのではないかと思います。余計な音が入っていないので、バンドの充実感がそのままアルバムに表れています。 Jim Pughのキーボード(特にオルガン)がまたいい味を出している上、彼を含むバンドの各メンバーが提供している曲が、いつものワンパターンぶりから脱却させて新鮮な音作りをする上でかなり貢献しているように思えました。

  7. BELA FLECK / Throw Down Your Heart, Tales From The Acoustic Planet: Vol.3 (Rounder 11661-0634-2)
    彼がアフリカ中をまわり現地のミュージシャンとセッションをしていく同名の記録映画からのサウンドトラックということなのですが、その映画はまだ未見ですので、あくまでも音だけでの印象からの選出です。
    おそらくはバンジョーという楽器のルーツを探訪する目的もあったのでしょうが、これらのセッションから聞こえてくるのは、そうした学術研究的なことではなく、現地での音楽的交流を純粋に楽しんでいる様子でした。ベラ自身も特別アフリカらしいことをやっているわけではなく、彼が普段やっていることをそのまま相手に向けて、お互い手探りで距離を縮めながら融合していくような面白さを、各トラックから感じるのです。

  8. EDDI READER / Love Is The Way (Rough Trade)
    この辺になると、このサイトで取り上げていいものかいつも迷うのですが、やはり基本的にジャンルの制限は設けないということですので、遠慮なく選ばせていただきました(笑)。
    この人の場合、アルバムによって随分とポップなものがあったり、逆にかなり堅苦しい作品もあったりしますが、本作はその辺のバランスがうまく取れていて、アコースティックを基調にした良質のポップ・アルバムという趣の作品に仕上がっており、彼女の歌もいつも以上に自然体で包容力を感じます。デビューして20年以上になるのに瑞々しさを失っていないのも魅力。

  9. CRISETTE MICHELE / Epiphany (Def Jam)
    昨年もソウル系の女性シンガーに力作が多かったけれど、中でも特によく聴いたのがこのアルバムでした。
    声を聞いただけでだけで泣けてくる人がいますが、彼女も正にそんな感じ。ソウル界のBillie Holidayといったイメージです。
    2年前の1stアルバムも好きでしたが、その当時のぎこちなさみたいなものが払拭され、早2作目にして自信と貫禄に満ちた歌声を聞かせてくれる一方で、若い歌手ならではの切なさもあり、その辺が何ともたまりません。

  10. ソウル・フラワー・ユニオン / Exile On Main Beach (スリーディーシステム)
    昨年も多くの敬愛するミュージシャンが亡くなってしまいましたが、そうした志半ばで逝ってしまった同胞の分までしぶとく歌い続けていこうという彼らの逞しさと使命感みたいなものに心打たれました。
    アルバムを捧げられた一人である故宇野世志恵にもきっと届いていることでしょう。 ライヴ盤ということで耳馴染みの曲が多いけれど、それらの曲が新たな生命を吹き込まれたかのように新鮮に感じるのは、決してメンバー・チェンジなどによるものだけではないと思います。

赤色: 新録もの

紺色: 再発もの




ベスト・ライブ
DAN HICKS & THE HOT LICKS (横浜サムズアップ, Jun. 5)
ASHFORD & SIMPSON (ブルーノート東京, Nov. 22)
今回も2つ同率首位とさせていただきました。
Dan Hicks & The Hot Licksはこれまでの来日公演の中でもベストでしたし、長年来日を待ち焦がれていたAshford & Simpsonは期待以上のパフォーマンスで本当に素晴らしかったです。





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