ブルース銀座: 2009年ベスト・アルバム10選: 宮崎けい



2009年ベスト・アルバム10選
宮崎けい


Shirley Brown


Theodis Ealey


Karen Wolfe


Luther Lackey

今年も、現地メンフィスと地元吉祥寺のCDショップで手に入れた「2009」表示のものからご紹介しよう。
  1. SHIRLEY BROWN / Unleashed (Malaco MCD7535)
    「スタックスのアレサ・フランクリン」と言われ、今やマラコの看板スターとなっているシャーリー・ブラウンの久々の新録。2000年のこのベスト10でご紹介した「Holding My Own」の出だしから挑発的な雰囲気に比べると、今回はおとなし目。ちょっぴりさびしい感じもするが、仕事帰りの電車で疲れを癒すのにはとても心地よい。99年のミシシッピー州のフェスティバル以来、生のステージはごぶさただが、是非また貫禄の姿を見たいものである。

  2. THEODIS EALEY / Live (Ifgam IFG19)
    アルバムオープニングが「Blues Is Alright」というのがうれしい。私がいつもお世話になっている「武蔵野ジュークジョイント」こと、吉祥寺「ブラック・アンド・ブルー」のブルースセッションでは必ずこの曲をトリにさせていただいている。この人はさきほどのシャーリー・ブラウンと同年代(還暦ちょい過ぎ)で、ミシシッピー出身らしいくデルタの香りがプンプン。このライブが収録された「ブラインド・ウイリー」はアトランタ市内の大きなライブハウスだ。私は2006年の12月にルーサー・ジョンソンを観たが、直近のスケジュールをチェックしたところ、マディー・ウオーターズの息子も出演している。

  3. KAREN WOLFE/ A Woman Needs A Strong Man (B&J KD846)
    草食系が増えている昨今、「女は強い男が必要なの」とのタイトル、頼もしい響きである。それにふさわしくパワフルなボーカル。そしてさすがアーカンソー生まれの土着の味わい!シャーリー・ブラウンよりさらに一回り若い世代として今後の活躍をますます期待したい。

  4. VARIOUS ARTISTS / ECKO Sampler (Ecko ECD2003)
    メンフィスの地場ミュージシャンがレコーディングしているEckoレーベルのオムニバス。有名どころでは、デニス・ラサールの「Pay Before You Pump」が入っている。O.B.ブキャナの曲に参加しているクィーン・アン・ハインズという姉御は、7月にメンフィスのホテルのパーティーで彼女が歌っていたところに、私がギターでゲスト出演させてもらったご縁。昔来日して歌ったことがあるらしく、東京から来た私を「アカサカミツケ・・・」を連呼しながらステージで歓迎してくれたのがいい思い出となっている。

  5. LUTHER LACKEY / Jody's Got My Problem (Ecko ECD1114)
    先ほどのオムニバスにも登場したルーサー・ラッキーの、同じくEckoからの単独アルバムだ。しかもこの人はO.B. ブキャナと兄弟とのこと。そして、今回のセレクトで気が付いたのは、シャーリー・ブラウンのアルバムの最後の2曲の作者にこのルーサー・ラッキーがクレジットされているではないか!デルタも狭き良き世界だな、と感じた次第。

  6. VARIOUS ARTISTS / Memphis 60: Soul, R&B And Proto Funk from Soul City USA (ACE/BGP CDBGPD201)
    いかにも「ろくじゅーねんだいー!」という音だ。特に7曲目のなんとものどかなギターリフが象徴的である。そして、私もレパートリーに入れているウイリー・コブスの「You Don’t Love Me」も収められている。2007年にメンフィスのロイヤル・スタジオ(あのHiレコードの!)で、私が現地のバンドとレコーディングした初アルバム「Blues Cradle」にもこのバージョンの「You Don’t Love Me」を入れた。ミキシング中に、ウイリー・ミッチェル氏がうれしそうに「あ、ウイリー・コブスのだね!」と駆け寄ってきてくれたのが忘れられない思い出となっている。そのミッチェル氏もこの1月6日についに帰らぬ人となってしまった。アーメン!

  7. BOBBY JONES / Comin' Back Hard (Delta Groove DGPCD129)
    おっと、これはさらに50年代に遡る雰囲気。それも新録というところがおもしろい。5曲目の「Get It Over Baby」はアイク・ターナー・アンド・キング・オブ・リズムそのもので、ちゃんとギターのアームのギュイーンも付いている。サンレコードのノリを思い出す「Mystery Train」もいい雰囲気だ。

以上で書き終えたつもりが、ふむ・・・7枚しかない!2009年の日本のCDの生産額は前年比16%減で、11年連続減少の中でも最大の落ち込みだそうだが、関係あるかも?

赤色: 新録もの

紺色: 再発もの




ベスト・ライブ
SOUL OF AMERICA
(Memphis, TN; Jul. 4)

2009年の思い出に残るライブは、7月4日の独立記念日にメンフィスで行われた「Soul Of America」だ。米国史上初の黒人大統領のもとで迎える初めての独立記念日。地元のブラックの家族連れに混ざってミシシッピー川のほとりで花火大会を見た後、その足で向かったのは「Stop 345」というライブハウス。ハウスバンドは10年来の知り合いとなっているドン・ヴァレンティン率いるハリウッド・オールスターズだ。出演者はジョイス・ヘンダーソン、ウイリー・コビントン・・・うーん、初めて見る名前ばかりだが、どれもパワフルで、歌がうまい!こういう人たちが次から次へと登場するとは、さすがメンフィス。前売り券10ドルでこれだけ堪能して、しかも、オープニングのゲスト出演で「Further Up The Road」を演奏させていただき、まさに夢のような体験であった。

Willie Mitchell
ウィリー・ミッチェルと宮崎夫妻(2008年9月メンフィスにて)





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