ブルース銀座: 2009年ベスト・アルバム10選: 上田有



2009年ベスト・アルバム10選
上田有
http://bayougate.voxx.jp/


Robert Cray


Corey Ledet


町田謙介


ローリークック

2009年という年は忌野清志郎を失った年としてずっと記憶されることになると思います。たとえばジョンの時のように。ただ、まだ中学生だった1980年よりもずっずっと衝撃、喪失感は大きく。自分がこんなにも「キヨシローがいる!」ということに依存していたんだ、と愚かにも初めて気づかされたのでした。悲しいお別れが幾つか有り、決していいことばかりではなかった年でしたが、音楽には日々の活力をいただきました。そんな感謝を込めつつ選んだ10枚は、いつも通りバイユーゲイトでのヘヴイローテーション具合と自分の聞き込み度中心です。1位が三ツ星。残り9枚が星二つですが2位、3位のみ順位をつけています。

1位 ★★★
  • ROBERT CRAY / This Time (Nozzle/Vanguard 79960-2)
    誰もが選ぶであろうことはわかっています。しかし選ばずにはいられません。2009年の一等賞はこのアルバムです。大化けしたロバート・クレイ!とでもいいましょうか(失礼!)。内容でもヘヴイローテーション度でも圧勝です。既に一流として、スターとしてそこそこの地位に落ち着いたという感があったクレイ。あの『Phone Booth』や『スモーキン・ガン』(あえてカタカナ、当時日本盤の7インチシングル盤を買いました!)から20数年経っての大爆発!こんなことがあるんですねー。とにかく熱気とドキドキ感に溢れた傑作です。盟友といえるベースのリチャード・カズンズが20年近く振りに復帰。遥か遠いあの夏の日の昭和記念公園で僕の胸を熱くさせてくれたコンビネーションも復活。鍵盤とドラムスとの絡みも素晴しく、バンドサウンドのマジックに溢れています。すぐに一緒に口ずさめる!というわけではないですが耳にこびりついて残ります。重量感たっぷり、誰もが熱く語るであろうオープニングナンバーは間違いなく2009年の代表曲のひとつです。とにかく、ブルースやソウルに興味のある方なら絶対の必聴盤です。

    2位 ★★
  • COREY LEDET / A Matter Of Time (no number)
    ザディコはコレです!!とにかく最初の音で気分もお店の雰囲気も変えてしまう強力な1枚。ヘヴィローテーション度は高く。バイユーのお客様はもう聴き飽きてしまったのでは?というくらいです。オールドスタイルながらシャープでモダン。モダンでありながら牧歌的な南西ルイジアナの風景が浮かんできそうな音像。アコーディオンは勿論素晴しいのですがギターも素晴しい!音色、フレーズに絡み度。ザディコにおけるエレキギターの理想的なスタイルでは?という感じがします。その上ビートが良くて曲が良い。最高で言うことなしです。曲中に『Dancing in the Street』が挿入されるのもなんともカッコイイ!!じっとしてはいられない1枚。

    3位 ★★
  • 町田謙介 / Future Blues (P-Vine PCD-26029)
    これはもう冒頭から圧倒される強力な音盤。ブルース未来系というよりはマチケン印全開のエモーショナルで濃密な時間を体験できます。あまりにも独特な「声」素晴しい「ギター」そして独自すぎる空気感。それらが既に確立されていたマチケンが10年振りに放った作品の素晴しさは、近年のライヴでの充実振りからすると「極めて予想通り」なのかもしれませんが、実はなかなかそうはいかないのがアルバム制作というもの。これほどの作品として結実するとはまさに奇跡のような1枚。間違いなく彼の最高傑作です。強烈に生々しくありながらしっかりとスタジオ作品として作り込まれています。ブルースという枠はとっくの昔にはみ出しているマチケン。端正でありながらアナーキー!2009年の必聴盤です。そして是非、生マチケンの体験をお薦めします。

    ★★
  • THE BLOCKHEADS / Staring Down The Barrel (EMI 0413RK11514)
    イアン・デューリー亡き後も活動を続けるブロックヘッズの2枚目のスタジオ作。前作は素晴しい演奏ながら、やはり主を失ったバックバンド的な匂いが感じられる作品ではありました。しかし今回はしっかりと「バンド」のアルバムとなっています。新ボーカリストがイアンを激しく意識したボーカルを聴かせているところには賛否が別れるのかもしれませんが、このバンドが大好きな僕は満足です。否定的な見方も理解できますが、過去の作風に歩み寄ったが故に今を生きている(生き残った)ミュージシャンの息づかいがリアルに聴こえてきて刺激的です。IAN DURY & THE BLOCKHEADSの亡霊のような作品なのかもしれませんが、嗚呼!正しきパブロック!!胸が高鳴ります。というわけで残念ながら万人には無理にお薦めいたしません。 ジャケットデザインは『サージェント・ペパーズ…』を手がけたピーター・ブレイク。

    ★★
  • KERMIT RUFFINS / Livin' A Treme Life (Basin Street BSR-0107-2)
    CDをセットして冒頭の20秒で気分はニューオーリーンズです。良い意味で(特に彼の場合は)いつものオールド・ニューオーリンズスタイルのブラスサウンドが詰まったカーミットの09年盤はユルさもありつつ切れ味鋭い充実盤です。この少し強めのビート感は屋外向けですね。どうだ!といった風情のタイトル通りの作品です(トレメは彼のホームタウン)。なんといっても耳に残るのはジミー・クリフの名曲『I Can See Clearly Now』。もうこの曲を選曲した時点で勝利ですね。メロディ、歌詞。カーミット・ラフインズ・バンドの魅力と地域性、そして佇まいがありありと浮かび上がる素敵な1曲です。グッときます。冬に出たクリスマスアルバムも楽しかった!

    ★★
  • BONSOIR CATIN / Vive L'Amour (Valcour VAL-CD-0007)
    「熟女ケイジャン」!?として三鷹北口に旋風を巻き起こしたボンソワール・カテン。アコーディオンにフィドル、ウッドベースにアコースティックギターで土臭い香りを巻き散らしつつトラディショナルを演ったり、ザディコマナーを感じさせるジャンプナンバーを演ったりと飽きさせません。音に彼女たち独特の色あいがありなんとも魅力的な1枚です。決して派手なケイジャンではないし、ボーカルのトーンもどちらかといえば渋めで落ち着いているのですが…そこは女性バンド。そこはかとなく漂う華やかさ。それも小娘の浅はかなソレとは大きく異なる、ゆる〜りとした「華」があります。フェロモン?ととでもいうのでしょうか?ライヴが観たい!と思ったものです。

    ★★
  • ERIC LINDELL / Gulf Coast Highway (Alligator/P-Vine PCD-93290)
    少しづつ注目度が高まってきたエリック・リンデル。遂に日本盤もリリースされたとのこと。ファンキーで歌ゴコロある演奏には彼ならではの個性が感じられます。曲も良いです。ほんのりルイジアナの香りも漂います。ギターも良い。ブルージーでファンキーなシンガーソングライター。だ・け・ど、今回最も耳に残ったのは大名曲『Crying Time』のファンキーでダンサブルなカヴァー!耳にこびりついてはなれません。カッチョイー!

    ★★
  • LINDISFARNE / At The BBC: The Charisma Years 1971-1973 (EMI PGL-15229)
    むさ苦しい男こそが、涙するような名曲満載。イナタい香りに加え、英国地方都市のローカル臭をもまき散らす愛すべき名バンドの発掘ライヴ盤。とにかく「リンデスファーン最高!」という感じです。ちょっと情けなくもきらめくメロディに、ブリティッシュ・トラッドも含めたルーツミュージックベースのバンドサウンド。荒くれセンチで儚い歌声にヤラれます。そんな名曲の数々がたっぷり聴ける2枚組。うーん。キンクスが好きな人にはお薦めしてみます!

    ★★
  • THE SUBDUDES / Flower Petals (429 Records FTN 17746)
    ベテランゴッタ煮ルーツロックバンドによる、残暑の日々を彩った控えめな名盤。ギター、ベース、ドラムにアコーディオン、マンドリン、そしてオルガン等々が大きなうねりをともなった繊細な音を奏で、歌心も豊かに迫ってきます。雷鳴(イメージとしては深夜の)とともにゆったりと始まる本作。ミディアムテンポ中心で、一見控えめな各楽器が素晴しく歌っています。他にも選びたい盤が有り最後の3枚はかなり迷ったのですが…やはりこれは外せませんでした。2009年を思い出すときに浮かんできそうなアルバムなのです。

    ★★
  • ローリークック / It's a beautiful day (Love Land LLR0002)
    自ら制作に関わった盤は選ばない、というのがこうい場での正しい姿勢かとは思うのですが。これが僕にとっての2009年。結局、リスナーとしてもこの作品は外すことはできませんでした。オキナワ・コザのシンガー/ギタリスト、ソングライターのミニアルバム。あえて誤解や偏見を恐れず、ありのままに作り上げられた故にローリーの強靭さがいかんなく発揮されているように思います。僅か5曲の中に様々なスタイルの楽曲が並び、コンパクトに「Thsi is Rolly Cooke」と呼べるような作品となりました。とにかく強力な楽曲!に「声」。音楽を奏でるリアリティというものに溢れた極めてロック的な音盤。是非、多くの方に聴いていただきたいと強く思っています。



    ■ 次点は最後まで迷ったいつも充実のボーソレイユにロス・ロボスのディズニーカヴァー集。そして08年作であった為に選外としたフーターズの素晴しい2枚組ライヴ盤!
    また、バッパーズのライヴ盤、アレックス・マクマレー、ザディコキックス、マグノリア・シスターズ、ルーサー・ケント、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドも遜色のない作品で良く聴きました。

  • 赤色: 新録もの

    紺色: 再発もの




    ベスト・ライブ
    バイユーゲイト3周年記念ライヴ:吾妻光良トリオ他
    (東京/吉祥寺プラネットK, Jan. 31)

    2008年暮れに無事3周年を迎えたバイユーの分不相応に贅沢な記念ライヴ。吾妻光良トリオをメインアクトにゲストとしてROIKI、コージー大内、ザディコキックス、shy、ノーズウォーターズのマスト、はいからさんを迎えて賑やかに行われました。素晴しい夜でした。出演者とお客様に感謝。やっぱりこれがベストです。

    番外編
    ローリークック
    (東京/高円寺JIROKICHI, Oct. 11)

    この日のローリーはバッパーズの岡地さんとノーズウォーターズのベーシスト、ヘンザンとのトリオ。縦横無尽にエレキギターを弾き倒すローリー。ホーンが居る時や、もう一人ギター奏者が居る時には見せないスリリングなギタープレイの連続に客席に駆けつけたミュージシャンの方々からは驚嘆の声があがりました。なんともソウルフルでロックンロールな夜でした。凄かった!





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