「宮崎さん、ブラックが好きなら、これ知ってますか〜？」と、同じ職場の女性から貸してもらったのが、ライアン・ショウの１作目「ディス・イズ・ライアン・ショウ」（2008年）であった。いえ、知りませんでした、全然。ラップかファンクかな？くらいに思って自宅で聴いてみると、実にビックリ！これ本当に2008年なの？というくらい、一瞬のうちに60年代の心地よい世界に引っ張り込まれる快感があった。そしてうれしいことに、今年2枚目が出ていたのを地元吉祥寺で発見した。
前作でもウイルソン・ピケットの「I Found A Love」をモロそのままやっていたが、今回もエディ・フロイドの「Knock On Wood」をこれまたみごとにソノマンマやっている。このほか5曲目以外は全てオリジナルなのだが、ほとんどの曲が60〜70年代の香りプンプンなのだ。ライアン・ショウは1980年にアメリカ南部ジョージア州で生まれ、最近はニュー・ヨークを拠点に活動している。ニュー・ヨークの高層ビル街を歩いていたら、急にスルっとタイムスリップしていきなり60年代のアメリカ南部の風景に・・・そんな不思議さと魅力を感じるシンガーである。彼の好きなミュージシャンがダニー・ハザウエイとサム・クックと聞けば、私が生理的に好きになる理由も納得。4曲目、6曲目などのファンキーなノリのほか、2曲目ではサム・クック系の甘めの雰囲気を味わうことができる。今年7月に2度目の来日をしているのを後から知り、あー残念。
デルマークの倉庫に眠るテープが世に出た。ジュニア・ウエルズがエイシズをバックに演奏したライブ録音だ。フレッド・ビロウの骨太ドラムと、それにピッタリからむデイヴ・マイヤーズのベースに体の芯からドドドドドドっと揺さぶられる。そして、職人ルイスのギターとジュニア・ウエルズのみずみずしいボーカル。人種問題が熱く燃える1966年のアメリカ社会の中で、マサチューセッツ州の白人聴衆を前にこのような素晴らしい音楽状況があったかと想像するとゾクゾクする。1曲目の「Feeling Good」ではみごとにジュニア・パーカーを彷彿とさせる。このCDは曲の間でのトークもたっぷり入っていて、親切なことにその和訳も付いている。
さて、次はジミヘンである。このCDは以前から出ていたが、今回DVDとセットで再発された。ジミヘンのブルーズというと「Red House」の印象が強いが、「Once I Had A Woman」などにみられる表情豊かなフレージングと直情的なギターワークを聴くと、あらためてこの人はギターを弾くために生まれてきたんだなという感を強くする。DVDでは、モンタレーなどのライブ映像のクリップの間に、ジミヘン自身をはじめ、B.B.キング、バディ・ガイ、ヒューバート・サムリンなどのインタビューも聴ける。
アメリカのブラックミュージック専門テレビ番組「ソウルトレイン」が3枚組みDVDで発売された。まず、オープニングテーマの「ソウルトレ〜ィン、ソウルトレ〜ィン♪♪♪・・・」を聴くと、30年以上前に12チャンネルで見ていたころを思い出し、とても懐かしい。口パクも多いが、The Isley Brothersなどのスタジオライブは、70年代ソウルシーンの音が生々しく伝わってくる。3枚目はジャクソン・ファイブの初々しい演奏で締めくくられる。
最近、買いたいと思うＣＤと出会える機会がめっきり減っているのに加え、諸般の状況から今年は恒例のアメリカ現地の旅に行けなかった。さらに、地元の「定点観測地点」であった「こだわり派ＣＤショップ」が駅ビルモール改装とともに姿を消し、私がこのベスト１０に参加させていただいた中で、今回はおそらく最悪の条件となってしまった。しかし一方、黒人音楽の伝統を現代において素直に表現したRyan Shawのようなミューシャンの存在を知ったことは、今年の大きな成果だと言える。・・・と、以上をもってネタの少なさの言い訳とさせていただこう。99年以来の「皆勤賞」に免じて、「ま、こういう年もあったね」と、大目に見ていただければ幸いである。
- RYAN SHAW / It Gets Better (Go! Entertainment GO70402)
- JUNIOR WELLS & THE ACES / Live In Boston 1966 (Delmark/P-Vine PCD-93378)
- JIMI HENDRIX / Blues (MCA 88697 74516 2)
- VARIOUS ARTISTS / The Best Of Soul Train (Time Life Entertainment 25391-3) [DVD]
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