2013/10/4
新しいバンドで来日したDr. John ニューオーリンズ
昨年末、自身のバンド、ロウワー911を突然解雇し、2013年より新たなバンドで活動を開始したDr.ジョン。
ロウワー911は、ドラマーこそ、2011年にレイモンド・ウェバーに交替していましたが、とても安定感のあるバンドだったし、特にベースのデイヴィッド・バラードはもう20年以上彼と活動していたので、気心が知れた人だったはず。そんなバンドを敢えて総入れ替えするということは、新たな音を展開するということなのか、それもしかと確認したいと思っていました。
新しいことをやろうという姿勢は昨年のアルバム「Locked Down」にも現れています。ブラックキーズのダン・オーバックを迎え、レーベルも乗り換えて、従来とは違う方向性を示した意欲作だと思います。果たして、この路線でライヴも行くのか?
9月30日ビルボードライブ東京の第2部。この日のライブを見て、彼の意図が何となくわかったような気がしました。ベースとドラムスのリズム・セクションは、これまでに以上に、タイトでファンキーな印象でした。そして、新たにトロンボーンとオルガンを加えました。これも、全体の音を厚くし、ファンキーな音を強化する一環のように感じました。
それが端的に表れたのが、デューク・エリントンの"Caravan"。よく知られた主旋律はなりを潜め、リズムを主体に独自のサウンドを展開。ベースはチョッパーでファンキーなグルーヴを生み出し、それにトロンボーンが華を添えます。非常に有名な曲ですがこんな演奏は、今のDr.ジョンならではでしょう。
Dr.ジョン本人は、歳のせいかだいぶよれた感じもありましたが、要所は押さえていました。途中1曲ギターを弾いたアール・キングの"Mama & Papa"は、歌いだしからゆるゆるで一瞬何の曲かと思いましたが、そのゆるさがたまらなくかっこよかった。アールの精神を引き継いだ演奏と言えるでしょう。
"Renegade"では、途中ラップが入るという展開も。しかし、ラップだか、ノムさん流に言えばボヤキなのか、どっちとも言い難いところがやはり彼らしい。彼にシャキシャキ切れのいいラップをやられたら引いてしまいますもんね(笑)。
ロウワー911はメンバー全員ニューオーリンズの知れたミュージシャンでしたが、今回のバンド(The Nite Trippersと言っていました)は、ニューオーリンズを拠点としているのは恐らくギターのシェイン・テリオだけ。ニューオーリンズの枠に捕われないサウンドを狙ったということなのでしょうか。しかし、この日のセットは古いニューオーリンズ的な曲が中心でした。冒頭"Iko Iko"をやったのも嬉しかったですが、やりそうでやらないことも多い"Such A Night"がラストで飛び出したのには観客も大喜びです。
彼のオドロオドロしい面を強調したアルバム「Gris-Gris」の色が濃かったのも興味深いです。"Mama Roux"はまだしも、"Gris-Gris Gumbo Ya Ya"までやるとは思いませんでした。
ギターのシェインは、プレイヤーのタイプとしては、前任のジョン・フォールと同様、ブルースをベースにした非常にバランスの取れた感じでしたね。そういう意味では敢えて交替させる必要はなかったのかも知れませんが、とりあえず全員入れ替えたかったんでしょうね。
ちょっと謎だったのは、トロンボーンのサラ・モロウという人。バンドのミュージカル・ディレクトレスと紹介されていましたが、他のメンバーに比べて、明らかにプレイがぴりっとしないのです。メンバーに加えるだけならまだしも、リーダーにしたのはなぜなのか?ちょっとDr.ジョンの意図が読めませんでした。足に怪我をしているようで松葉づえで登場した彼女ですが、ステージ上ではつえは付かずに歩き回ってメンバーに指示を出していましたが、どうも空回りしている感じ。それでも金管の音が入っただけで、サウンドは随分いい感じにはなりましたけどね。メンバー紹介のときのソロで、声を出しながら吹いていたのは、彼女の十八番スタイルなのでしょうか?ちょっと妙でした。
しかし、もう73歳になろうというDr.ジョン。安住の地を求めず新たな試みを続ける姿勢は大したものです。その魅力はまだまだ衰えません。
Dr. John & The Nite Trippers
@Billboard Live Tokyo
Mon., Sept. 30, 2013 (2nd show)
21:34-22:56
[Setlist]
1. Doctor Iz In
2. Iko Iko
〜Shoo Fly, Don't Bother Me
3. Let's Make A Better World
4. Locked Down
5. Caravan
6. How Come My Dog Don't Bark (When You Come 'Round)
7. Mama Roux
8. Renegade
10. Mama & Papa (Dr. John - Telecaster guitar)
11. Mardi Gras Day
12. Witchy Red
〜Gris-Gris Gumbo Ya Ya
13. Such A Night
[Personnel]
Dr. John - p., key., gt., vo.
Ben Alleman - org., backing vo.
Shane Theriot - gt., backing vo.
Sarah Morrow - trombone, backing vo.
Dwight Bailey - b., backing vo.
Reggie Jackson - ds., backing vo.
今回の来日について写真付きレポート
※9/30の第1部についてのものです。
ドクター・ジョン グラミー受賞作を引っさげての来日公演スタート
Billboard Japan, 2013/09/30
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/15384
過去の来日レポート
【2012年来日時】
Dr. John @ Billboard Live東京セットリスト (2012/2/16)
http://black.ap.teacup.com/sumori/990.html
Dr.ジョン2012年来日公演セットリストまとめ (2012/2/17)
http://black.ap.teacup.com/sumori/993.html
【2010年来日時】
Dr. John@Billboard Live Tokyoライブ・レポート (2010/10/21)
http://black.ap.teacup.com/sumori/488.html
ドクター・ジョン来日公演セットリストまとめ (2010/10/25)
http://black.ap.teacup.com/sumori/494.html
【2005年来日時】
ドクタージョン@ブルーノート東京 (2005/9/17)
http://black.ap.teacup.com/sumori/10.html
ドクタージョンも出席したハリケーン・エイド・ジャパン記者会見の様子 (2005/9/21)
http://black.ap.teacup.com/sumori/13.html
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