2015/12/3
徹底したエンターテインメント精神:ビッグ・ジェイ・マクニーリー来日公演レポート ブルース

先月もいいライヴをいくつか見ましたが、ひとつだけ選ぶとすれば、ビッグ・ジェイ・マクニーリーで決まりです。ちょうど3年前の2012年11月、16年ぶりに来日した際、既にかなりのご高齢だったのでもう見納めと思いましたが、再びやって来ました。前回と同様、バックを付けたのは伊東ミキオ(key.)をゲストに迎えたブラサキことBloodest Saxophoneです。
ビッグ・ジェイ御年88歳。たかだか3年と言えど、この年齢の人にとっての3年は決して短くはないはず。前回は驚異的に元気なところを見せてくれましたが、今回は大丈夫だろうか。そんな心配もしつつ、公演当日を待ちました。
しかし、ひと言で言えば予想以上、期待以上でした。約20分のブラサキの演奏の後、御大は登場しました。確実に歳は取っていますが、いったんサックスをブロウすれば、その音の強力なこと!バンドの誰よりも段違いに音がでかく、とんがっています。歌だってバリバリ。とにかく、演奏に関しては、「おじいちゃん頑張ってるね」というような弱々しい雰囲気は全くありません。キビキビしすぎで88歳とは思えません。
いつもライヴでは、フロアを練り歩いて登場するスタイルのビッグ・ジェイ。今回もやってくれましたよ。もう殆ど自力では歩けないようで、スタッフに支えられながらではありましたが、バンドの演奏に乗って客で混雑するフロアを後方からゆっくり歩いて姿を現すと、お客さんは大喜び。さすがに前回のように歩きながら歌ったりブロウしたりはしなかったものの、やはりこの登場の仕方はこだわりなんでしょうね。ステージによじ登るのは傍から見ていて大変そうでしたが、それが判っていてもやっちゃうんですね。

冒頭の”I Can't Stop Loving You”で既にお客さんは大合唱。“Pretty Girls Everywhere”は、目まぐるしいまでにアップテンポでファンキーに疾走し、”Big Fat Mama”ではバンドと一丸となってスウィングしまくりました。バンドの面々もコーラスを添えとても楽しそうです。
ラテン風味の効いた”You Are My Life”で熱く愛を語る様は、まるで愛の伝道師か教祖様かといった感じ。サックスのプレイも熱がこもっていましたね。
勢いのすごさが印象に残るライヴでしたが、”What A Wonderful World”で聴かせたメローな音色も忘れられません。スローなプレイでも艶を失っていないんですよね。素晴らしい!
何かにつけて「Right!?(そうだろ?)」と呼びかけるビッグ・ジェイ。「男にとって一番大切なのは女だ、そうだろ?」と茶目っ気たっぷりに出目金のような目をギョロギョロさせるビッグ・ジェイ。面白すぎます、いやほんと。そんじょそこらのゆるキャラよりよっぽどインパクトあります(笑)。
やった曲は前回とそう大差はありません。でもいいんです。爽快なまでに自分の力を120%出して全力疾走するライヴは理屈抜きで楽しめました。まさに生粋のエンターテイナーです。特にステージ後半にやった”3-D”の飛ばし方は極めつけでした。アップテンポでグイグイ来ます。そして、いったん終わったと見せてまだまだ続けるしつこさは爆笑ものでした。もう誰か止めてぇ〜(笑)。まるで関西のお笑い芸人のようなねちっこさです。
一番の代表曲”Deacon’s Hop”をやり終えた時点で、時刻は10時を超え、ビッグ・ジェイが登場してから2時間を過ぎていました。もうこれで終わりだなと思ったら、彼はバンドのメンバーに「あとどれくらいやっていいんだ?」と確認。まだ続けてもOKとわかると、更にライヴは続行したのです。それから40分近くもやりました。途中休憩なしのノンストップで3時間弱。いやぁ、すごい爺さんです。
ステージからの退場もやはりステージ袖からではなく、フロアに降りてました。その後カートで移動し、下の階でサイン会。極限まで無理をしてでもお客さんを楽しませたいという気概に溢れています。
今回の来日は、ブラサキとの新譜レコーディングがメインだったようで、ライヴはこの日一夜のみ。前日までに山中湖のスタジオで15曲を録り終えたそうです。今回の飛ばし方を見る限り、新譜も期待していいのではないかな。
新譜からは、インストを1曲やりました。ジュウェル・ブラウンが”買い物ブギ”をやったように、ビッグ・ジェイも日本の曲を何かやったらしいですが、それが何かは出てのお楽しみとのこと。なんでしょうね。
前回2012年の来日時に収録したライヴ盤が2016年1月20日リリースとなりますが、この日はその特別先行販売もありました。僕も買ってきましたが、あのライヴの熱気が伝わるいい内容ですよ。(BIG JAY McNEELY WITH BLOODEST SAXOPHONE/LIVE IN JAPAN Blue Balls Records FAMC-214)
この日セットリストはおおまかではありますが、だいたいこんな感じです:
Big Jay McNeely feat. Bloodest Saxophone
Monday, November 16, 2015
Shibuya Club Quattro
-Bloodest Saxophone- (19:35-19:55)
Caravan
SNK Shuffle
Twilight Time (The Platters)
Long Vacation
-Big Jay with Bloodest Saxophone- (19:55-22:40)
Big Jay Blows In (intro)
I Can't Stop Loving You
Pretty Girls Everywhere
(new tune)
Get Up Let's Boogie
You Are My Life
Everybody Wants Somebody
What A Wonderful World
Party
There Is Something on Your Mind
C C Rider
Sad Sad World
Big Fat Mama
Insect Ball
The Goof
Cherry Pie
Nervous Man Nervous
3-D
Deacon's Hop
Let the Good Times Roll
Deacon in Minor
Rock n Roll All Night Long
3-D

おどけた表情を見せるビッグ・ジェイ
