2019/6/11
訃報: Dr. John 1941-2019 ニューオーリンズ
Dr. John at New Orleans Jazz & Heritage Festival, 2006
Photo by Masahiro Sumori. All rights reserved.
ニューオーリンズ・ピアノの第一人者として半世紀以上にわたって活躍を続けたドクター・ジョン(本名:マルコム・レベナック)が6月6日早朝、亡くなったそうです。1941年11月20日生まれなので、77歳だったということになります。ここ1年半以上公の場に姿を現さず、ほぼ毎年参加していたニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテッジ・フェスティバル(ジャズフェス)にも、去年と今年は出演していませんでした。来日も2013年を最後になかったので、心配しておりましたが、残念でなりません。
1972年のアルバム「Dr. John’s Gumbo」を聴いてニューオーリンズの音楽に興味を持ったという人が多いのではないかと思います。僕もそうでした。あの作品はプロフェッサー・ロングヘアやヒューイ・スミス、アール・キングなど、ニューオーリンズR&Bのおいしいところを紹介するバイブルのような作品としてファンに愛されています。その続編的な内容の「Goin’ Back To New Orleans」(1992年)では更にニューオーリンズ音楽を広く深く掘り、描きだしてくれました。
若い頃から麻薬に手を出していたこともあり、健康的なイメージはありませんでしたが、特に90年代以降は2年に一度くらいのペースで新譜も出し、来日も度々するなど精力的な活動を続けていました。近年のアルバムでもザ・ブラック・キーズのダン・オーバックをプロデューサーに迎え新たなサウンドを展開した「Locked Down」(2012年)、大胆な解釈でルイ・アームストロングの楽曲を演奏した「Ske-Dat-De-Dat: The Spirit of Satch」(2014年)など、創作意欲が衰えなかったのはすごいことだと思います。ライヴでも毎回セットリストを変えてくるなど、何が出てくるかわからないワクワク感がありました。毎回ベスト・ヒット的な同じ内容を繰り返した方が楽だっただろうと思いますが、そうはしない拘りを感じさせてくれました。
ドクター・ジョンは1950年代後半、まだ10代の頃からプロデューサー、セッション・ギタリストと働き始め、またマック・レベナック名義で自分のシングルもリリースするようになりました。しかし、1960年代に入ってから銃撃事故により左手薬指を負傷し、ピアノに転向したのでした。しかし、元々ギタリストだったこともあり、ライヴでは近年も時々味のあるギターも披露していました。プロフェッサー・ロングヘアのラスト作「Crawfish Fiesta」ではギタリストとして全面参加しています。
1968年、芸名Dr. Johnを名乗り、ヴードゥー教の色彩を押し出したアルバム「Gris-Gris」でアルバム・デビューを果たします。1972年には前述の「Dr. John’s Gumbo」をリリース、ついで「In the Right Place」(1973年)、「Desitively Bonnaroo」(1974年)と名作を相次いでリリースしました。
1984年には初来日。以後は数年に一度のペースで来日を重ねています。後年はビルボードライブでのクラブギグで2010年、2012年、2013年と続けて来日していましたが、2013年が最後となってしまいました。
アルバムも5年ほど出していなかったのですが、どうやら生前新作のレコーディングを進めていた様です。恐らく、近いうちにリリースとなるのでしょう。期待したいですね。
ドクター・ジョンが亡くなったというニュースは、すごくショッキングなことでした。ある程度想定できたことではありますが、彼の存在はあまりにも大きく、心にぽっかり穴があいてしまった様な喪失感を味わっています。そう感じているのは僕だけではないでしょう。
ニューオーリンズでは彼が亡くなった翌日に、セカンドライン・パレードが盛大に行われています。また、WWOZ-FMでは、ずっと彼の音源を流し続けました。
きっと、来年のジャズフェスはドクター・ジョン祭りになるのでしょうね。マック、素晴らしい音楽を本当にありがとう!安らかにお眠りください。
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過去の来日レポート
【2012年来日時】
Dr. John @ Billboard Live東京セットリスト (2012/2/16)
http://black.ap.teacup.com/sumori/990.html
Dr.ジョン2012年来日公演セットリストまとめ (2012/2/17)
http://black.ap.teacup.com/sumori/993.html
【2010年来日時】
Dr. John@Billboard Live Tokyoライブ・レポート (2010/10/21)
http://black.ap.teacup.com/sumori/488.html
ドクター・ジョン来日公演セットリストまとめ (2010/10/25)
http://black.ap.teacup.com/sumori/494.html
【2005年来日時】
ドクタージョン@ブルーノート東京 (2005/9/17)
http://black.ap.teacup.com/sumori/10.html
ドクタージョンも出席したハリケーン・エイド・ジャパン記者会見の様子 (2005/9/21)
http://black.ap.teacup.com/sumori/13.html
その他ドクター・ジョンに関する書き込み
おさるのジョージ (2008/11/2)
https://black.ap.teacup.com/sumori/188.html
ドクター・ジョンはどうしているんでしょう? (2018/12/28)
https://black.ap.teacup.com/sumori/1815.html
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