2019/8/14
クリスタル・トーマス、存在感を見せた再来日公演 ブルース
Crystal Thomas
2018年、Bloodest Saxophone(ブラサキ)のアルバム「I Just Want To Make Love To You」でフィーチャーされたクリスタル・トーマスが来日公演を行いました。「I Just Want〜」はクリスタルを含む5人の女性ブルース・シンガーをフロントに立て、テキサス州のオースティンでレコーディングされた作品でした。クリスタルは、昨年12月、その新譜リリースに合わせて初来日。今回は、それに続く2度目の来日です。
その間、クリスタルはブラサキとの作品とは別に自身の新譜「Don’t Worry About the Blues」の制作を進めていました。今回の来日はそのリリースに合わせたもの。来日公演はフジロックフェスティバルも含め計4公演が組まれましたが、僕は7月31日(水)の渋谷クラブクアトロ公演を見ました。クリスタルは再度ブラサキと合流し、更にこの晩のみスペシャルゲストに吾妻光良を迎えるという豪華なラインアップ。これは見逃せません。
このライヴは「ブルース&ソウル・レコーズ創刊25周年記念」と銘打たれていました。まずブルース&ソウル・レコーズの濱田廣也編集長が音楽ライターの高地明氏とトークライヴを行いました。高地氏は日暮泰文氏と組み、クリスタルを日本に紹介する主導的な役割を果たした人です。ライヴ前に聴衆の期待感を高め、満を持してライヴのスタートとなりました。
ブラサキがスウィング&ブルース数曲で場を暖めたあと、クリスタル登場。共演作で歌っていた”You Don’t Move Me No More”でスタート。ルンバのリズムがご機嫌です。クリスタルは力の抜けた歌い方をしていましたが、声は艶やかでノリノリ。続くジャニス・ジョップリンのスロー・ブルース”One Good Man”でも迫力のある歌声を聴かせ、聴衆を魅了していきました。暖かい雰囲気に包まれた山下達郎の”Your Eyes”もよかったです。
前回の来日ではブラサキのゲストとして数曲歌うにとどまっていたのですが、この日は主役として堂々たるパフォーマンスを見せました。特に口数が多いわけでもないし、目だったアクションをするわけでもないのですが、確かな存在感がありました。
クリスタルは、ソロ・デビューする以前はトロンボーン奏者として活躍し、ジョニー・テイラーのバンドにも在籍していたことがあるそうです。今回は、トロンボーンも持ち出し、ブラサキのインストのレパートリーで数曲プレイしました。しかし、ソロは取らなかったし、殆どプレイしているのかどうか、わからない感じでした。一発派手にブロウしてくれるかと期待したのですが、ちょっとそれは残念でした。
でも、ライヴ自体は見どころ満載です。クリスタルと入れ替わりで吾妻光良登場。エディ・ボーの”Dinky Doo”やペパーミント・ハリスの”I Got Loaded”といった名曲をユーモア溢れる日本語歌詞を織り交ぜて歌うところはまさに吾妻ワールド。もう最高でした。吾妻さんは「平日は仕事で来れないかもしれないから」あくまでも出演「予定」だったとのことですが、無事出演できたよかった。
クリスタルが呼び戻され、吾妻氏とデュエットで”Let’s Go Get Stoned”を。クリスタルが新譜でラッキー・ピーターソンとデュエットしたレイ・チャールズの名曲です。演奏に先立つ2人の会話もかみ合っているんだかいないんだかで笑えました。多分、かみ合っていない…。クリスタルは他の出演者よりも若い42歳で、意外とブルースのシンガーを知らないという話になり吾妻さんが”Do you know Esther Phillips?"とか聞いてみるとクリスタルは”No”と答え、えーほんと??みたいな雰囲気になったり。
Crystal Thomas & Mitsuyoshi Azuma
ライヴ後半は再びクリスタルが主役となり新譜の曲を披露。新譜ではチャック・レイニー(bass)やラッキー・ピーターソン(key.)らを含むバンドでやっているんですが、ブラサキがやるとまた一味違うスウィング感を生み出していました。
新譜は8月7日発売ですが、この日は先行発売があり、終演後サイン会も行われました。ブラサキとの共演盤とともに、この新譜、クリスタルの実力が発揮された好盤となっています。おすすめです。
まだ本国アメリカでも殆ど知られていないクリスタルですが、日本発のこれらの作品をきっかけに今後彼女が大きく羽ばたくことを期待したいと思います。
Crystal Thomas & Mitsuyoshi Azuma with Bloodest Saxophone
※All photos by Masahiro Sumori. All rights reserved.
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以下、ざっくりとしたセットリストです:
Bloodest Saxophone
with Crystal Thomas
featuring special guest Mitsuyoshi Azuma
Shibuya Club Quattro
Wednesday, July 31, 2019
19:46-21:46 (encore 21:35 - )
[Bloodest Saxophone]
Blues from Louisiana
Flying Home
[Crystal Thomas with Bloodest Saxophone]
You Don’t Move Me No More
One Good Man
Just Like A Fish
The Blues Ain’t Nothing But Some Pain
Your Eyes
Cockroach Run (Crystal Thomas -tb.)
Go Power (Crystal Thomas - tb.)
[Mitsuyoshi Azuma with Bloodest Saxophone]
When the Saints Go Marching In (intro theme)
Dinky Doo
I Got Loaded
[Mitsuyoshi Azuma & Crystal Thomas with Bloodest Saxophone]
Let’s Get Stoned
[Crystal Thomas with Bloodest Saxophone]
No Cure for the Blues
I Don’t Worry Myself
Can’t You See What You’re Doing To Me
Take Yo’ Praise
Long Vacation (Crystal Thomas - tb.)
Pork Chop Chick (Crystal Thomas - tb.)
-encore-
I Just Want To Make Love To You (with Mitsuyoshi Azuma & Crystal Thomas)
Li'l Darlin’ (Bloodest Saxophone outro-theme)
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【リリース情報】
Crystal Thomas featuring Chuck Rainey and Lucky Peterson
Don’t Worry About the Blues
(Mr. Daddy-O SPACE-021)
2019年8月7日発売
1.I’m A Fool For You Baby 3:30
2.Can’t You See What You’re Doing To Me 3:26
3.One Good Man 3:42
4.I Don’t Worry Myself 3:15
5.Got My Mojo Workin’ 3:07
6.No Cure For The Blues 4:22
7.Let’s Go Get Stoned 2:56
8.The Blues Funk (instrumental) 3:15
9.Baby Don’t Leave Me 4:17
10.The Blues Ain’t Noting But Some Pain 4:53
11.Take Yo’ Praise 3:46
12.These Kind Of Blues 3:46
13.It’ll All Be Over 3:21
14.Hey Baby 4:40
15.Got My Mojo Workin’ 2:13 ※ボーナストラック
ブルース・フィーリングたっぷりにかつファンキーに決めた至宝の15曲。テキサスの名手ジョニー&ジェイソン・モラー兄弟のサポートも光っています。このCDから10曲を選曲したLPもPヴァインより発売中。タイトルは「It’s the Blues Funk!」(P-Vine PLP-6960)
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Bloodest Saxophone feat. Texas Blues Ladies
I Just Want To Make Love To You
(Mr. Daddy-O SPACE-016)
2018年11月21日発売
1. I’ve Got A Feeling (vo.-Duinna Greenleaf)
2. I’ll Be There (vo.-Lauren Cervantes & Angela Miller of the Soul Supporters)
3. I Just Want To Make Love To You (vo.-Diunna Greenleaf, Crystal Thomas, Lauren Cervantes & Angela Miller & Jai Malano)
4. Your Eyes (vo.-Crystal Thomas)
5. Walking the Dog (vo.-Jai Malano)
6. Feeling Alright (vo.-Lauren Cervantes & Angela Miller of the Soul Supporters)
7. I Done Done It (vo.-Jai Malano)
8. One Good Man (vo.-Crystal Thomas)
9. The Grape Vine (vo.-Lauren Cervantes & Angela Miller of the Soul Supporters)
10. You Don’t Move Me No More (vo.-Crystal Thomas)
11. Just Like A Fish (vo.-Crystal Thomas)
12. I Got Sumpin’ For You (vo.-Duinna Greenleaf)
13. Don’t Hit Me No More (vo.-Lauren Cervantes & Angela Miller of the Soul Supporters)
14. It’s Your Voodoo Working (vo.-Jai Malano)
15. A Losing Battle (vo.-Crystal Thomas)
ブラサキ初のアメリカ録音。現地5人の女性シンガーとの共演。クリスタルもテキサス・レディーズに入っていますが、実は彼女はルイジアナ州出身です。
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