2021/7/17

取り消されたノミネーション  ブルース

今年3月の話ですが、2021年の米ブルース・ミュージック・アワードのケニー・ウェイン・シェパードのノミネーションの取り消しが発表されました。これは、過去に彼が南軍旗をあしらった車やギターを使用していたことを問題視した措置でした。ご承知の通り、南軍は南北戦争で敗退するまで奴隷制を推し進めたことで知られています。

アワードを主宰するブルース・ファウンデーションの人種差別ステートメントでは「あらゆる形式の人種差別的表現を明確に非難する」としており、ケニー・ウェインはこれに反する行為を行ったというのがその理由です。ファウンデーションの毅然たる姿勢を称賛する声も上がりましたが、僕は釈然としないものが残りました。本当にそれでいいのか、と。

もちろん、人種差別は許してはならないことです。差別的行為には声を上げていくことは絶対に必要だと思います。

しかし!です。今回のファウンデーションの対応にはいくつかの点で問題があると考えています。

まず、ケニー・ウェインが人種差別的意図があったのかという問題です。問題の車とギターは、1980年代の人気アクション・コメディ番組「The Dukes of Hazzard(邦題:爆発!デューク)」に登場する車を模したものでした。本人によると彼は番組の大ファンだったと言いますが、南軍旗が問題があると気づいてからは使っていないとのことです。ギターに関しては、自動車メーカーのドッジから贈呈されたものであり、そもそも一度もステージでは使用したことないそうです。

近年BLM運動などにより、南軍関連のモニュメントや旗が相次いで撤去されてきているのは事実ですが、これは本当に最近の話です。昔から問題視する声はありましたが、「爆発!デューク」が全米で人気番組だったことからも判る通り、そういう認識が一般的だったとは言えません。

ケニー・ウェインが黒人の音楽文化に敬意を持っていたことはこれまでの活動を見れば十分わかります。彼自身も今回の取り消しに対し、人種差別には反対であることを表明し、意図せず傷つけてしまった人たち対し謝罪もしています。

どう考えても彼に人種差別的意図があったとは思えません。「爆発!デューク」の車の問題を語らずして、ケニー・ウェインに非を押し付けるのは矛先が違うように思います。

また、もう一つの問題は、今年のノミネーション取り消しの理由に、昔の話を持ち出していることです。過去1年の彼の行動を問題としているのならば取り消しも理解できなくもありません。しかし、そうではないということは筋が通りません。彼の今後の態度に関わらず、永久追放しようということでしょうか。彼はそこまでの措置を受ける悪事を働いたのでしょうか?

僕には彼がスケープゴートにされているようにしか見えません。

さらに言えば、彼は過去2008年と2011年にブルース・ミュージック・アワードを受賞しています。彼の車やギターが制作されたのは2004年のことだそうですから、いずれもその後です。それには触れず今回ノミネーションを取り消すのはおかしくないでしょうか?

今回、ケニー・ウェインのノミネーション取り消しと同時に、ファウンデーションは、組織の役員だった彼の父親ケンの辞任も求めたそうです。この対応も腑に落ちません。なぜ、父親であるというだけで辞任なのでしょうか?彼は2020年12月に新しく役員になったばかりだったそうです。実際に顔を合わせての役員会はまだ一度も出たことがなかったとのことです。彼は「なぜ自分を辞めさせるのか全くわからない」とコメントしています。

僕は人種差別に反対する運動は基本的に全面的に支持しますが、これはちょっと違うんでないの?そう思うんです。

ケニー・ウェインは非常に人気があるので、ノミネーションが取り消されてもさほど影響はないのかも知れません。しかし、このように歪んだ考え方でアーティストが非難されることを看過できません。ブルースの世界では権威のあるブルース・ミュージック・アワードだけに、いっそう強くそう思います。

参考までに、ケニー・ウェインはブルース・ロック・アーティスト部門にノミネートされていましたが、結局この部門の今年の勝者はマイク・ジトでした。彼にはもちろん罪はありません。おめでとうございます。
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2021/7/13

マディ・ウォーターズ初期の未発表ライヴ音源リリース  ブルース

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Muddy Waters Live in Los Angeles 1954
(GNP Crescendo GNP9057)

凄いものが出てしまいました。マディ・ウォーターズの完全未発表のライヴ音源です。何が凄いかって、レコーディングされたのは1954年9月25日、これまでブルースのライヴ・アルバム先駆けと言われていたマディのニューポートでのライヴ盤(1960年)よりも6年も早いのです。時間は20分弱。短いですがフェスティバルでの演奏なので、恐らくこれで全部なのでしょう。

リリース元はGNPクレッシェンド。10インチのアナログ・レコードのみのリリースです。今のところ日本国内で売っているショップはなく、下記2つのサイトでのみ購入できます。(販売状況については末尾の追記参照ください)
http://store.gnpcrescendo.com/new/product_info.php?cPath=36&products_id=273
https://bluebeatmusic.com/product_info.php?products_id=23928

1960年代以降はマディもロック・ミュージシャンにもカバーされ、ヨーロッパにしばしば出かけるなど活動の幅を広げましたが、そういう時代よりもだいぶ前です。まだ30代と若く、ギラギラしています。

【収録曲】
Baby Please Don’t Go (スタジオ録音日:1953年5月4日)
Hoochie Coochie Man (スタジオ録音日:1954年1月7日)
I Just Want To Make Love To You (スタジオ録音日:1954年4月13日)
I’m Ready (スタジオ録音日:1954年9月1日)
-Interview-
Oh Yeah (スタジオ録音日:1954年4月13日)

代表曲を中心に上記5曲をやっていますが、これらの5曲のうち4曲はこの1954年にレコーディングされています。残る1曲”Baby Please Don’t Go”も前年の1953年レコーディング。つまり、僕らがブルースの古典として知っているこれらの楽曲が出来立てほやほやの新曲として演奏されているんですよ。それだけでもわくわくしませんか?特に”I’m Ready”に至っては、このライヴの僅か24日前にレコーディングされています。

メンバーは、スタジオ・レコーディングの面々が中心となっていますが、異なるのは、ハーモニカ。レコードではいずれもリトル・ウォルターですが、ここではジョージ・スミス(リトル・ジョージ)がプレイしているのです。彼は何度かマディのバンドを出入りしていますが、これは恐らくマディのバンドに最初に入った直後だったのではと思います。彼が参加したマディ名義のスタジオ・レコーディングは残っておらず、その意味でも貴重な音源です。

【メンバー】
Muddy Waters – vocal, guitar
Jimmy Rogers – guitar
Little George – harmonica
Otis Spann – piano
Elgin Evans – drums

場所はロサンゼルスのシュライン・オーディトリアム。アカデミー賞の授賞式にも使われた今も現役の歴史ある大ホールです。GNPクレッシェンド・レーベルの創設者であり、DJ/コンサート・プロモーターとしても活躍したジーン・ノーマンが主宰したイベント「The World Series of The Blues」のヘッドライナーの一人として出演したのがマディだったのです。

ノーマンの息子ニールによると、彼は自ら主宰したコンサートをしばしばプロ機材を使ってレコーディングしていたそうで、この音源もその一つでした。その後リリースされることはなく、ノーマンの自宅ガレージに保存されているのを1990年代になってニールが発見したのだそうです。

時代が時代だけにライヴ会場でのレコーディングというのはそう簡単ではなかったはずです。マディのヴォーカルとオーティス・スパンのピアノが前面にはっきりと聞こえ、他の楽器と客席の音は奥まっている感じで、音のバランス的にはよいとは言えません。恐らく、そんなに何本もマイクは使わなかったのでしょう。

しかし、音質は非常にクリアです。マディの気迫のヴォーカル、そして前のめりにガンガン弾きまくるスパンのピアノに完全にノックアウトされてしまいました。まさに彼らの全盛期のサウンド、それがライヴの熱気の中で展開されているのです。

ベーシストはいません。スタジオ盤ではイントロのベースが印象的な”I Just Want To Make Love To You”はジミー・ロジャーズがギターでそのパートを弾いているようです。スタジオ盤ではリトル・ウォルターのプレイがまったりと響き、曲の主導権を握っている感がありますが、ここではオーティス・スパンが存在感を示しています。特に彼とジョージ・スミスが煽りあうように盛り上げるソロ部は必聴です。

マディはスライド・ソロは弾いていませんが、”Baby Please Don’t Go”でメロディ・ラインをなぞったリードを弾いているのがマディでしょうか。その後ろでガッカガッガとリズムギターが響いていますので、そちらがジミー・ロジャーズかな。全体的にロジャーズは、スタジオ盤に忠実にプレイしている印象です。

“Interview”とあるのは実際にはインタビューというほどのものではなく、メンバー紹介です。ジーン・ノーマンがマディを紹介し、マディが各メンバーを紹介しています。

短い音源ではありますが、短いゆえに聴きだしたら止まらず、僕はもう無限ループで聴いてはまっています。マディもバンドも脂が乗っています。これが今リリースされること自体奇跡と言えるでしょう。せっかくの音源なので、願わくばもっと聴きやすいCDやダウンロードでも出てほしいです。聴かないと損ですよ、これ。

尚、この晩のイベントには他にギター・スリム、ジョニー・ギター・ワトソンも自分のバンドで出ているようです。そっちはレコーディングしなかったのかなぁ?聴いてみたいんですけど。晩年はボロボロだったと言われるスリムですが、1954年と言えば最大のヒット曲”Things That I Used to Do”をリリースした年。悪いはずがありません。

などと妄想も膨らむ新リリースでした。

マディと言えば、彼が長年住んでいたシカゴの家を今年になってシカゴ市が歴史的建造物に指定する方向で動き出したというニュースも入ってきました。以前からこの家をミュージアムにする計画があり、一時は頓挫しかかっていましたが、これが追い風になるのかもしれませんね。シカゴの新たな観光名所になったら素晴らしいですね。

[2021/10/14追記]
「日本国内で売っているショップはなく」と書きましたが、8月になってから名古屋のWalter's Jukeさんが販売を始めました。海外から購入するよりも若干お安く買えますし、待つ時間も短く済みそうです。何度か再入荷もしているようです。タワーレコードのオンラインショップでも販売されています。
このレコードについては、10/25発売のブルース&ソウル・レコーズ162号で大きく取り上げられています。内容について詳しく知りたい方はそちらもどうぞ。
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