2021/11/29
半世紀後に再現されたLayla 新譜情報

Tedeschi Trucks Band featuring Trey Anastasio
Layla Revisited (Live at LOCKN')
デレク&ザ・ドミノスの1970年のアルバム「Layla And Other Assorted Love Songs」。
半世紀上経った2021年、テデスキ・トラックス・バンドがライヴ・アルバムという形でその完全な再現を試みました。僕の周囲でもこれは大きな話題になっています。
僕がこのデレク&ザ・ドミノスのアルバムをを手に入れたのは中3のときでした。2枚組のLPで購入。ターンテーブルで聴いていたのに加え、カセットテープにも録音し、通学、合宿先でも毎日のようにウォークマンに入れて聴いていました。本当に耳にタコができるくらいに。大好きでした。今でもその気持ちは変わりません。
そんな作品を、これまた大好きなテデスキ・トラックス・バンドが正面から取り組んだのですから、当然関心は湧きます。
きっとデレク・トラックスを始め、テデスキ・トラックス・バンドの面々にとっても思い入れのある作品なのでしょう。このような形の作品を出すのは彼らとしてはごく自然なことだろうと思います。でも、正直僕には響くものはありませんでした。
自然だとは思いますが、あまりにもやりそうなことすぎて、まず新鮮味がなかった。これが大きいです。もちろんやっている曲は死ぬほど聴きまくったものばかりですから、その点も新鮮味はないですし。
そして、このような形でやられてはオリジナルと比べるなというのは無理な話です。どうしても比べてしまいます。その結果、「オリジナルがあればいいだろう」という結論になってしまうのです。
彼らの演奏が悪いわけではありません。彼らのカラーも感じることができます。オリジナルではデュエイン・オールマンがゲスト参加して活躍していますが、TTBのこの作品ではフィッシュのトレイ・アナスタシオが入り好演しています。デレク&ザ・ドミノスもライヴでは演奏しなかったであろう”Thorn Tree In The Garden”は、デレク・トラックスとスーザン・デデスキがスタジオで演奏する形で収録しています。オリジナル作品では、メインのヴォーカルはクラプトンだったのに対し、TTBはスーザン・テデスキ。キーを彼女の声域に合わせて変えるという手もあったでしょうが、全部オリジナルのキーでやっているのも凄い。
こだわりは十分に感じます。しかし、それも僕にはこれまでのTTBの作品を聴いて感じたほどのワクワク感は与えてくれませんでした。
なぜだろう?と考えると、やはりオリジナルの作品に思い入れがありすぎるからなんだろうなと思います。どんなに素晴らしい仕事をTTBがやってくれたところで、オリジナルを前には勝ち目がないんないんです。
デレク&ザ・ドミノスではクラプトンが声が出ていないところがあったりもするし、完成度で言えばTTBの方が高いでしょう。でも、オリジナルの方は不完全な部分も含めて、ある意味完璧なんです。これはこうでなければならないと思ってしまうんです、どうしても。一曲や二曲取り上げるのならそんな固いことを言う気にもならないんです。でも丸ごとだとね。
もっとアレンジなどを大胆に変えてオリジナリティを出すという手もあったかも知れませんが、それをやられたら僕にはなおさら受け入れがたいものになっていたかも。なにせ以前オリジナル作のリミックス版が出た際、音のバランスが違っていることに違和感が拭えなかったくらいですから。保守的になってしまっていることは認めつつ、これはどう考えても企画自体が僕にとってはムリだったんだろうなと思いました。
多分、そこまで考えずに「いいんじゃん」と素直に楽しんでいる人の方が多いでしょうが、こんな意見もあるということで書いてみました。
