2019/3/18

Dan Penn & Spooner Oldham 20年ぶりの来日公演レポート  R&B/ソウル

ダン・ペン&スプーナー・オールダムの来日公演、最終回を見てきました。シンプルに2人だけで淡々と名曲の数々を歌うコンサート。それは僕が今まで見たことがあるライヴの中でも最も地味な部類のものだと思います。一方間違えば場末な雰囲気になってしまいそうな飾り気のないコンサートには大勢のお客さんが詰め掛け、熱気にあふれていました。

ダンは9年前に一度来日していますが、この2人で来日するのは1999年以来実に20年ぶりです。

ステージ前半は、2人でやったライヴ盤「Moments from This Theatre」からの選曲を中心に、後半はもう少し変わり種の曲を混ぜ込んだ展開でした。盛り上げどころというものも特にないマイペースな2人。持ち歌も多いだけに、このまま永遠にやっているのでは?という感じもしましたが、開始後75分ほど経ち、MCの人が出てきて締め、一度終了。その後アンコールを2回やり、終わった頃にはビルボードライブでの1ステージとしては長めな90分近い時間が過ぎていました。途中、ボックストップスの話をしながら2人でアカペラで歌った”The Letter”はおまけのようなものでしょうが、一応フルコーラス歌っていたので、セットリストに入れました。すると、全部で19曲。結構これって多いですよね?

ドニー・フリッツとの共作の"Rainbow Road"や"Memphis Women And Chicken"も飛び出しました。ドニーの久々の来日公演は、同じこの会場で2週間後あります。遥々と米南部からこういう人が立て続けに来るのは嬉しいですが、不思議な感じもしました。

終盤になって「一番はじめに書いた曲のひとつ」と言って"Is A Bluebird Blue"を歌いました。渋くゆるいシャッフルはダン・ペンいわく「ジミー・リードが大好きだったから、そんな感じをイメージした」んだそう。

この日の選曲の中でも個人的には”I’m Living Good”が染みたなぁ。ダンが「これって誰がやってたっけ?」とブツブツ言うと、スプーナーが「オヴェーションズだよ」と返します。「ああ、オヴェーションズだったな」。2人の会話はMCというよりは、なんだか独り言のようで、半分オフマイクだったりするので、何を言っているのかわからないところも(笑)。そんなのんびりほのぼのした時間でした。

とりあえず、メモっていたセットリストを上げておきます。この日の一部は、アンコールはなかったそうですが、最終回だったからか、2回のアンコールに応えてくれました。ステージ進行は、1曲が終わると2人顔を見合わせながら、歌帳らしきものをペラペラとめくる感じで、カチッとしたセットリストはなかった模様です。

途中リクエストの声も挙がりましたが"My Heart's In Memphis"のリクエストに対して、ダンは「あぁ、アーマ・トーマスが歌ったやつか。あれはできないんだよね」とあっさりスルー(笑)。一応、用意している曲からの選曲なんですね。当たり前か。。。

20年前の来日公演や前述のライヴ盤と雰囲気は殆ど変わらないんですが、あとあと考えてみるとライヴ盤に入っていた曲でも”Met Her In Church”や”It Tears Me Up”など、意外とやっていない曲もありました。でも、押さえるところは押さえていたし、たっぷりやったので、不満はないですけどね。

----

Dan Penn & Spooner Oldham
Sun., March 17, 2019 (2nd show 19:30)
Billboard Live Tokyo
19:30- 20:57 (encore 20:48- )

Setlist
1. I’m Your Puppet
2. Sweet Inspiration 
3. The Letter (The Box Tops - a cappella)
4. Cry Like A Baby
5. Do Right Woman, Do Right Man
6. You Left the Water Running 
7. The Dark End of the Street 
8. Nobody’s Fool 
9. I’m Living Good 
10. Ol’ Folks 
11. I Do 
12. Rainbow Road
13. You Really Know How To Hurt A Guy
14. Take A Good Look 
15. Memphis Women And Chicken 
16. Is A Bluebird Blue
17. Nine Pound Steel
-encore1-
18. Long Ago
-encore2-
19. Raining in Memphis

[Personnel]
Dan Penn - lead vocals, acoustic guitar
Spooner Oldham - keyboards, harmony vocals
6
inserted by FC2 system "; var ifrd = ifr.contentWindow.document; ifrd.open(); ifrd.write(htmlcode); ifrd.close(); } } var CriteoAdUnits = { "placements": [{ "slotid": criteoSlotId, "zoneid": criteoZoneId }]}; window.Criteo = window.Criteo || {}; window.Criteo.events = window.Criteo.events || []; var processCdbBid = function() { var bids = Criteo.GetBidsForAdUnit(criteoSlotId); if (bids.length > 0) { var bidFound = bids[0]; Criteo.RenderAd({ bidId: bidFound.id, containerId: bidFound.impressionId }); } else { passback(); } }; Criteo.events.push(function() { Criteo.RequestBids(CriteoAdUnits, processCdbBid, 2000);}); }();

2018/11/15

祝初来日!ウィリー・ハイタワー公演レポート  R&B/ソウル

クリックすると元のサイズで表示します

ビルボードライブではときどき、すごい来日企画が飛び出しますが、まさかウィリー・ハイタワーの来日が実現するとは思いませんでした。

1960年代にフューリー、フェイム、キャピトルといったレーベルからディープソウルのシングル盤をリリースし、その存在はソウル・ファンの間では長らく伝説となっていましたが、近年までアルバムはこれらのシングルを集めたキャピトル盤「If I Had A Hammer」(1969年)1枚のみ。1970年代以降は消息すらわかっていなかったような状況だったのですから、来日決定と聞いても「待ってました!」というよりは、「本当?」というのが率直な感想でした。

しかし、2017年にイタリアのポレッタ・ソウル・フェスティヴァルに出演。来日直前にはキャピトル盤以来の新譜アルバム「Out Of The Blue」をリリースするなど、70代半ばという年齢になってから、本格的な復活への道を歩み始めたのでした。

今回の来日は、「メンフィス meets マッスル・ショールズ」をタイトルに掲げ、メンフィスからリロイ&チャールズ・ホッジズ兄弟(ハイ・リズム・セクション)に、MGズで活躍したスティーヴ・クロッパーまでバンドに加わる豪華な布陣。否応なしに期待が高まります。

ハイタワーはマッスル・ショールズ出身ではありませんが、同じ州内ギャズデンの生まれで、フェイムから作品を出していたので、マッスル・ショールズ代表としたのでしょう。

来日決定後、一度は「アーティストのスケジュールの都合」との理由で延期になりましたが、すぐに約1週間後の新日程が発表となり、無事公演は行われました。

東京で行われた3夜の公演の中日2部を見に行きました。東京だけで計6公演もやるので、観客もばらけそうなものですが、会場を見回すと知り合いのソウル・ファンがあちこちに、いい具合に埋まっています。

演奏は、まずハイタワー登場前にスティーヴ・クロッパーがリードする形でMGズの”Green Onions”から始まりました。お題の「メンフィス」にピッタリな幕開けですが、ホッジズ兄弟がこの曲をやるのに違和感を感じたのは僕だけでしょうか?同じメンフィスでも、彼らのハイ・サウンドと、MGズのスタックス系はちょっと毛色が違うので、そう感じたのかも。

その後も”In The Midnight Hour”などクロッパーの定番ナンバーが続きます。そう言えば僕はクロッパーを見るのは結構久しぶりでしたが、随分老けこんだように思いました。年を確認したら、彼ももう77歳。ハイタワーよりひとつ若いだけです。そりゃ老けて見えても無理はないですよね。プレイは問題なかったのですが、以前より声もおじいちゃんになった感があり、ちょっと心配になりました。

クロッパーが4曲20分弱やったところで、いよいよメインアクトのハイタワーが登場です。彼のショウは、スウィング感溢れるミッドテンポの”Nobody But You”でスタートしました。大物然としたところはありませんでしたが、軽快な動きといい、外見といい78歳とは思えないほど若々しいのが印象的でした。その後も”Ooh Baby How I Love You”、”Somebody Have Mercy”といったノリのいいナンバーが続き、いい感じのソウル・ショウに。

特に大きな歓声が上がったのは、バラード”Time Has Brought About A Change”でしょうか。その深みのある声は最高でした。”You Used Me”もしかり。こういうじっくり聞かせるナンバーでは実力が出ますね。

そして、彼の最大のヒット曲”Walk A Mile In My Shoes”で雰囲気も最高潮に。色々な人がやっている曲ですが、僕にはハイタワーと言えばこれという感じがします。これで締めるのかと思いきや、続いて”If I Had A Hammer”を歌いフィナーレとなりました。ここでは、ハイタワーが客席に歌うように促したのですが、その指示がどうもわかりにくくて、なかなかみんな歌えない(笑)。でも最終的にはラストらしい大合唱になっていましたよ。

ホッジズ兄弟は7月のカーラ・トーマスの来日公演から僅か3ヶ月での再来日でしたが、今回の方が彼らの演奏は大人しかったような気がします。サウンドの要となっていたのは、ホーン・セクションの二人でした。彼らもカーラの公演でもプレイしていましたが、今回はメンフィス・ホーンズばりのプレイがアクセントになっていました。

ハイタワーは、さすがに連日の公演で疲れ気味なのか、声は思ったよりもハスキーな感じでしたが、表現力も深みも十分でした。やったのはアンコールの”Soul Man”を除いては全てキャピトルのファースト・アルバム収録の曲でしたが、いきいきと生で蘇る名曲の数々に感動しました。せっかく充実した新譜を出したので、そちらからも1、2曲は聴きたかったなぁと思いましたが。

終演後はサイン会もありましたが、夜も遅く、列もえらく長かったので、僕はそのまま帰りました。

歳が歳だけに、また来てくれるかはわかりませんが、よくはるばる日本まで来てくれたなと思いました。今後の活動にも期待したいです。

----

Memphis Meets Muscle Shoals
featuring Willie Hightower, Steve Cropper& Hi Rhythm
Mon. Oct. 29, 2018, 21:30 (2nd set)
Billboard Live Tokyo

Steve Cropper & band (21:32-21:50)
1. Green Onions
2. In the Midnight Hour
3. (Sittin’ On) The Dock Of The Bay
4. Ninety-Nine And A Half Won’t Do

Willie Hightower with Steve Cropper & band (21:50-22:40)
5. Nobody But You
6. Ooh Baby How I Love You
7. It’s A Miracle
8. Somebody Have Mercy
9. Time Has Brought About A Change
10. I Love You (Yes I Do)
11. You Used Me
12. Walk A Mile In My Shoes
13. If I Had A Hammer
-encore-
14. Soul Man

----

【来日公演日程】
メンフィス meets マッスル・ショールズ featuring ウィリー・ハイタワー, スティーヴ・クロッパー & ハイ・リズム
Memphis Meets Muscle Shoals featuring Willie Hightower, Steve Cropper & Hi Rhythm
2018/10/25(木)ビルボードライブ大阪
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=11130&shop=2
10/25(Thu)1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
Service Area : \12,000 / Casual Area : \11,000

2018/10/27(土)、29(月) 30(火)ビルボードライブ東京
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=11128&shop=1
10/27(Sat)1st Stage Open 15:30 Start 16:30 / 2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
10/29(Mon)1st Stage Open 17:30 Start 19:00 / 2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
10/30(Tue)1st Stage Open 17:30 Start 19:00 / 2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
Service Area : \12,000 / Casual Area : \11,000

《Personnel》
Steve Cropper - guitar, vocals
Willie Hightower - vocals
Charles Hodges - Hammond B-3 organ, keyboards
Leroy Hodges - bass
Luis Valle - trumpet
Andy Wulf - saxophone
Steve Potts - drums
2

2018/11/2

キャンディ・ステイトンが乳ガンに  R&B/ソウル

今年78歳となったソウル・シンガー、キャンディ・ステイトン。先月、乳ガンと診断されたことを公表しました。彼女は8月に新譜「Unstoppable」をリリースしツアーも予定されていました。7月に左胸にしこりがあることに気づき、検査を行ったところ乳ガンと診断されたそうです。予定されていた年末までのツアーキャンセルし、化学療法に入るそうで、その後2019年に入り手術を受けるとのことです。

ガンがどの程度進行しているのかはわかりませんが、完治して活動に戻ってほしいです。現役バリバリに活動している最中にこのような展開になって非常に残念です。
キャンディ本人は「ガンに命を奪われたりはしない。戦うわ」と表明しています。
頑張れ、キャンディ!

Candi Staton Isn’t About to Stop Now
https://www.rollingstone.com/music/music-features/candi-staton-unstoppable-interview-745657/
2
タグ: candi staton

2018/9/18

The Impressions、最初で最後の来日公演  R&B/ソウル

クリックすると元のサイズで表示します

カーティス・メイフィールドがメンバーから抜けて50年近く経った2018年。ジ・インプレッションズが初来日を果たしました。僕は正直言うと、彼らが未だ現役だったことすら認識していなかったので、「来日決定」と聞いても何だかピンと来ませんでした。

でも、ヴェテラン・バンドの中には、「いまだ現役」といいつつ殆どメンバーが入れ替わってしまったいる例も少なくない中、今回来日したインプレッションズは、初期のメンバー2人(サム・グッデンとフレッド・キャッシュ)が含まれていました。彼らは、カーティスが在籍した全盛期に活動を共にした人たちです。そして、彼らは今回のツアーを最後に引退することを既に表明しています。歴史的グループを目の当たりにする最初で最後のチャンスということで、観に行って来ました。

現在のインプレッションズは、ヴェテラン・メンバー2人に加え、30代の若手ジャーメイン・ピュリフォリーが加わった3人です。彼らをサポートするのは3管を含む7人編成の豪華なバンドでした。

来日公演初回の9月11日ファーストを見ました。定刻19時にバンドが登場すると、”Amen”のイントロをプレイし始め、その演奏に乗って3人が登場しました。そして、ステージは名曲”It’s All Right”でスタート。主にジャーメインがリードを取りグッデンとキャッシュがコーラスを付ける形です。ジャーメインのヴォーカルはカーティスに似ている訳ではないのですが、そこにグッデンとキャッシュがハーモニーを加えてくるとそれは確かに、インプレッションズのサウンドでした。バンドもインプレッションズ・サウンドを完璧に紡ぎだします。

カーティス在籍時、1960年代の名曲が次々と演奏されました。3人は声域は幅広く歌っている感じで、揃ってハイトーンで歌うと、特にそのハーモニーはカーティス在籍時を彷彿させました。バラード”I’m So Proud”ではジャーメインがしっとりと歌い上げ実力を発揮。特に終盤では、ソロでフィーチャーされ、その熱唱が光りました。

MCは主にグッデンが担当。カーティスのことにも触れながら進行しました。彼とキャッシュも、ところどころでリードも歌っていました。一段と大きな歓声が上がったのは"Gypsy Woman"が歌われたとき。グッデンとキャッシュによる低音域のコーラスもしびれました。

ステージ終盤になるとカーティスのソロ時代に焦点を当てると言って、3人が一度下がり、Freddie’s Deadなど彼のソロ作品のメドレーをバンドのみでインストで演奏しました。これは彼らの休憩のためだったのかもしれませんが、流れとしてはちょっと蛇足な感じもしました。

そして3人が戻ってきて最初にやったのは"I'm A Changed Man (Finally Got Myself Together)”。この日初めてのカーティス脱退後の選曲で、70年代の雰囲気漂うファンキーな一曲です。それまでの雰囲気とは明らかに違う、意外な選曲でもありました。でも、ホーンが効いていてカッコよく、カーティスのソロ・メドレーからの流れとしてはうまくつながった感じもしました。

そして最大の見せ場である"People Get Ready”へ。インプレッションズとカーティスの歴史に残る名曲に会場は和やかなムードに包まれました。ジャーメインの熱唱ぶりも素晴らしかったです。

このセット最後に歌われたのはインプレッションズのナンバーではなく、エディー・ケンドリックスの"He’s A Friend”でした。ちょっと意外な選曲ではありましたが、"People Get Ready”からのゴスペル調の流れということなのでしょうか。

ちょうど1時間ぴったりでアンコールもなしという短さはやや残念ではありましたが、物足りなさはなかったです。欲を言えば、"Keep On Pushing”や”This Is My Country”などなど、他にも聴きたい曲はありましたが、この来日公演が実現したこと自体が奇跡のようなものなので、細かいことは言わないでおきたいと思います。もう引退とのことですがグッデンもキャッシュも声はよく出ていてまだまだ足取りも軽く、引退間際という気がしませんでした。グッデンはもう84歳とご高齢なんですが。もう来日はないでしょうが、これからも元気でいてほしいですね。

----

The Impressions
Billboard Live Tokyo
Tue., Sept. 11, 2018 (1st set, 19:00-20:00)

(Intro-Amen)
1. It’s All Right [1963]
2. Nothing Can Stop Me [1968]
3. I’m So Proud [1964]
4. I Need You [1965]
5. I Loved And I Lost [1968]
6. Gypsy Woman [1961]
7. Stay Close To Me [1968]
8. I’ve Been Trying [1965]
9. Mighty Mighty (Spade & Whitey) [1969]
10. Choice of Colors [1969]
(Curtis Mayfield medley)
11. I'm A Changed Man (Finally Got Myself Together) [1974]
12. People Get Ready [1965]
13. He’s A Friend

----

【Personnel】
Fred Cash - vocals
Sam Gooden - vocals
Jermaine Purifory - vocals
Joe Herrera - trumpet
Reggie Pace - trombone
Matt Rippetoe - saxophone
Bill Dempsey - keyboards
Zach Cutler - guitar
Eliot Seppa - bass
Marty Bouchard - drums

【来日公演日程】
2018年9月11日(火)19:00/21:30 ビルボードライブ東京
2018年9月13日(木)19:00/21:30 ビルボードライブ東京
2018年9月15日(土)16:30/19:30 ビルボードライブ大阪
5

2018/8/22

R&Bの真髄を見せつけたカーラ・トーマス来日公演レポート  R&B/ソウル

カーラ・トーマスの来日公演。来日が発表された際には本当?とびっくりしたファンも多かったんではないでしょうか。それもそのはず。1980年代に父親のルーファス・トーマスに同行する形での来日はあったものの、デビュー後50年以上経った今までカーラ自身名義での来日はなかったし、1970年代にスタックス・レーベルがなくなって以降作品も出ていないのです。近年は、活動が伝わって来ることすら少なかったのですから、想定外の来日と言ってもいいと思います。

フジロックフェスティバルへの出演がまず発表され、その後の東京、大阪公演のビルボードライブでの公演も決まりました。しかも、彼女をサポートするのはメンフィス最強のホッジズ兄弟(ハイ・リズム・セクション)とスティーヴ・ポッツ(ds.)。更には妹のヴァニースまで同行するという豪華な布陣。

カーラはあまり体調が良くないのでは?などと心配する声もあったし、長いブランクを経て今何をやるんだろう?と首を傾げる人もいたでしょう。

東京2日間の最後の公演を見に行きました。この来日公演、蓋を開けてみたら、期待を上回る素晴らしさでした。まずカーラが元気だったし、ヴァニースとの仲良しぶりも微笑ましくて暖かい雰囲気に包まれていました。

あと、本当にバンドは鉄壁でしたね。ホッジズ兄弟も良かったんですが、特にギタリストのスコット・シャラードのプレイは特筆に価します。ブルース系のソロもソウルナンバーでリズムギターも実にツボを得たプレイを聴かせてくれました。彼はグレッグ・オールマンのバンドでの活躍で知られる人ですが、グレッグが彼を評価していたのも頷ける、そんなプレイでしたよ。

バンドだけで一曲やったあと、まずヴァニースが登場。彼女は近年のソロ作からの3曲を披露しました。彼女自身「色々やって最終的にブルースに落ち着いた」と語っていたように、ブルース・フィーリング溢れるステージでした。「メンフィスは音楽に溢れて、いたるところでパーティーをやっている楽しい街よ」と語り歌ったシャッフル”Saturday Night on the River”はそんな街の盛り上がりが感じられるような楽しい曲でした。

そして、カーラ登場。公演の宣伝に使われていた写真はいつのもの?とびっくりしてしまうほど容姿は変わっていましたが、歌声には張りはあるし、終始笑顔で上機嫌。この公演を彼女自身が楽しんいるのが見ていて伝わって来ました。

外見は変わったとは言え、よくよく見ると、やはり若い頃の面影はしっかりあり、しかもどことなく父親ルーファスにも似ていました。彼女のステージはかつてオーティス・レディングとやった”Lovey Dovey”からスタート。カーラの歌声もバンドも躍動感に溢れ、もう最高。声質も若い頃の可憐な感じではなかったものの、今のカーラが自然に出ていて、これでいいんだと思いました。

続いて南部の雰囲気ムンムンで熱唱したのは1964年のシングル”No Time To Lose”。歌ったあとには、この曲を書いたディーニー・パーカーについて語る一幕も。「彼女は元々アーティストとしてスタックスに来たけど、あまり日が当たることがなく、最終的にスタックスの広告担当になった。しかし、彼女はこの素晴らしい曲を書いたんです」とその功績を称えました。

「日本のファンはブルースが好きだよね?ブルースをやるね。」と言ってやったのは”Little Red Rooster”。後半は”Blues Is All Right”の一節も出て客席も一緒になって歌いました。カーラはブルースよりはR&Bのイメージが強いですが、ブルースの歌いっぷりもあっぱれでした。

そして、お待ちかねの代表曲”B-A-B-Y”で盛り上がりは最高潮に。もう50年以上前のヒット曲ですが、これぞメンフィス・ソウルといった感じで、やはりいいですわ。

でもまだ終わりません。続いてはヴァニースがステージに戻り、姉妹の共演タイムに。ヴァニースの持ち歌”Wrong Turn”をやったあとに、父親ルーファスへのトリビュート・タイムと題してまずは”Night Time Is The Right Time”を。カーラがルーファスとスタックスに吹き込んだレイ・チャールズで有名なあの名曲です。そして、ラストはルーファスの看板曲、”Walking The Dog”で賑々しくしめました。カーラもヴァニースも父親への尊敬が半端ないことがよーくわかりました。偉大な存在だったのは揺るぎない事実とは言え、実の父親をここまで躊躇なく持ち上げることができるのは、ある意味羨ましいなとさえ思いました。客席からルーファスの写真を贈られると二人はそれを眺めて本当に嬉しそうにしていたのが印象的でした。

東京では2晩4公演があり、ファンはどれを見に行くかはばらけただろうと思いますが、それでも当たりを見回すと、知り合いの熱心なファンがわんさかいる、そんな状態でした。皆、楽しみにしていたんですね。公演、そんなお客さんの満足げな笑顔があちこちで見られました。僕もその一人です。

カーラは1942年生まれ、今年誕生日を迎えれば76歳になります。これは先日亡くなったアレサ・フランクリンと同い年なんですよね。もう若くはないですが、今後も元気に活動してほしい、そう思いました。できれば久々の新作も、ね?

ヴァニースは、カーラの10歳下とは言え、実に若々しく現役感をバリバリ示していました。彼女もまた見たいなと思いましたよ。また来てね!

----

Carla Thomas & "The Memphis All Star Review”
featuring The Hodges Brothers (Hi Rhythm Section)
and Vaneese Thomas
Tue., July 31, 2018 (2nd set, 21:31-22:46)

Setlist
1. Instrumental
—Vaneese Thomas—
2. Mystified
3. Corner of Heartache and Pain
4. Saturday Night on the River
—Carla Thomas—
5. Lovey Dovey
6. I’ve Got No Time To Lose
7. I Like What You’re Doing (To Me)
8. Little Red Rooster〜The Blues Is Alright
9. B-A-B-Y
—Carla & Vaneese Thomas—
10. Wrong Turn
11. Night Time Is the Right Time
12. Walking the Dog

----

[Personnel]
カーラ・トーマス / Carla Thomas(Vocals)
バニーズ・トーマス / Vaneese Thomas(Vocals)
チャールズ・ホッジズ / Charles Hodges(Hammond B-3 Organ, Keyboards)
リロイ・ホッジズ / Leroy Hodges(Bass)
ベルネタ・マイルズ / Berneta Miles(Background Vocals)
アージー・ファイン・マーティン / Argie Phine Martin(Background Vocals)
ルイス・バジェ / Luis Valle(Trumpet)
アンディー・ウルフ / Andy Wulf(Saxophone)
スコット・シャラルド / Scott Sharrard(Guitar)
スティーブ・ポッツ / Steve Potts(Drums)

-----

【来日公演日程】
2018年7月28日(土)フジロックフェスティバル
2018年7月30日(月)ビルボードライブ東京
2018年7月31日(火)ビルボードライブ東京
2018年8月2日(木)ビルボードライブ大阪

【公演レポート(写真付き)】
ライター林剛さんによる東京公演初日のレポートです。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw3716834
0
inserted by FC2 system "; var ifrd = ifr.contentWindow.document; ifrd.open(); ifrd.write(htmlcode); ifrd.close(); } } var CriteoAdUnits = { "placements": [{ "slotid": criteoSlotId, "zoneid": criteoZoneId }]}; window.Criteo = window.Criteo || {}; window.Criteo.events = window.Criteo.events || []; var processCdbBid = function() { var bids = Criteo.GetBidsForAdUnit(criteoSlotId); if (bids.length > 0) { var bidFound = bids[0]; Criteo.RenderAd({ bidId: bidFound.id, containerId: bidFound.impressionId }); } else { passback(); } }; Criteo.events.push(function() { Criteo.RequestBids(CriteoAdUnits, processCdbBid, 2000);}); }();



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ
inserted by FC2 system