2014/9/20

プロフェッサー・ロングヘア、サンスー・セッションズの謎  ニューオーリンズ

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先月、米Fuel 2000より、プロフェッサー・ロングヘアの新しいCDが出ました。タイトルは「Let's Go To New Orleans」。実はそのタイトルよりも、副題の"The Sansu Sessions"に目を奪われたのでした。さ、さんすうぅ?算数ではありません。サンスー。アラン・トゥーサンとマーシャル・シホーンが興したニューオーリンズのレコード・レーベルです。

フェスがサンスーにレコーディングを残していたなんて、聞いたことがありません。これが事実ならば大発見。どんな内容なのか、ネット情報で調べましたが、どうもよくわからない。サンスーがレコードを出していたのは1965年のベティ・ハリスを皮切りに、1982年頃まで。フェスは1971年くらいまでは引退状態、1980年に亡くなっていますから、未発表音源があるとすれば、1970年代と言うことになります。

曲目はよく知られたフェスのレパートリーが中心。特に「未発表」と謳われている訳でもなし。うーむ、ウェブで見ていても謎が深まるばかり。ならば買って確かめてみるしかねーだろ、と発注。日本一のフェス・ファン、関西のぐらちゃんも同様に即買いに走ったようです(笑)。

で、結論。これは全曲ライヴ録音です。サンスー・レーベルのセッションではありません。しかも、ひとつのライヴではなく、明らかに寄せ集め。期待したライナーには、フェスのバイオが詳しく書かれているものの、このCDや音源については一切言及なし。レコーディングに関するデータも記載はありません。

これがなんの音源なのか?確認するのもめんどいなーと思っていたら、ぐらちゃんが何と早速チェックしてくれました。そこに便乗して情報を追加しながら、まとめたいと思います。(Special thanks to Gura-chan)

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収録曲は全20曲:
1. Tipitina
2. Big Chief
3. Goin' To The Mardi Gras
4. Doin' It
5. Gone So Long
6. Her Mind Is Gone
7. Tell Me Pretty Baby
8. Woke Up This Morning (My Baby She Was Gone)
9. Lovely Lady
10. Is Everything All Right
11. Every Day I Have The Blues
12. Bald Head
13. How Long Has That Train Been Gone
14. Stagger Lee
15. Messin' Around
16. I'm Movin' On
17. Jambalaya
18. Hey Little Girl
19. Cry To Me
20. Mardi Gras In New Orleans

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1、20: アルバム「New Orleans Jazz & Heritage Festival 1976」より
 Fair Grounds Race Course, New Orleans, Apr. 11, 1976
 バンド不明
2、3、9、11、12、18: アルバム「The London Concert」より
 New London Theatre, London, England, Mar. 28, 1978
 Professor Longhair (p, vo), Alfred "Uganda" Roberts (congas)
7、14、16、19: アルバム「Live On The Queen Mary」より
 Queen Mary, Long Beach, CA, Mar. 24, 1975
 バンド不明(同じライヴに出演していたミーターズの可能性あり)
4、5、6、13、15: 没後「The Big Easy」、「Live 1977」などのCDで発表されて
いたライヴ音源
 The Boarding House, San Francisco, CA or Catalyst Club, Santa Cruz, CA,1977
 バンド不明(ネヴィル・ブラザーズのメンバーが入っていた可能性あり)
8: フェスの演奏ではない
音がかなり悪いので聴き取りにくいものの、ピアノは入っていないようで、ヴォーカルもフェスとは思えません。曲はB.B.キングのもので、僕が知る限りフェスのレパートリーにはありません。フェス登場前にバックバンドがプレイしたものが紛れ込んだか?
10、17: 未発表音源?
今回、チェックした限りでは、これまで発表されたレコード、CDには、同じ音源は確認できませんでした。どちらもフェスの演奏であることには間違いなく、これらの曲の演奏は他にも残っているのですが、明らかに演奏が違います。17は、まるでゲイトマウス・ブラウンのようなフィドルがフィーチャーされており、これが一体誰で、一体なんのライヴなのか非常に気になるところです。ゲイトマウスはフェスのアルバム「Rock 'n' Roll Gumbo」で客演して、この曲もやってはいますが、フェスと親交があった訳ではなさそう。実際ライヴで共演したことがあるのかは不明です。しかし、フレージングが非常に似ています。

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尚、3(Goin' To The Mardi Gras)の曲名は間違いで、実際は"Rum And Coke"や"Crawfish Fiesta"として知られるインスト・ナンバー。この音源が収録されている「The London Concert」では"Rockin' With Fess"という曲名で収録されています。

10は、"Meet Me Tomorrow Night"で、「Rock 'n' Roll Gumbo」に収録された曲と同曲です。

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という訳で、少なくとも出自が判らない3曲を除き、これらのレコーディングの大半がサンスー・レーベル音源ではないことが判りましたので、看板は虚偽であったと言うことになります。

では、何故これらの音源がサンスー・セッションズとしてリリースされてしまったのかについて考えてみたいと思います。このCDの記載事項を見ると、音源のライセンス元は「GCM」と書かれています。これは、Gulf Coast Musicのことと思われます。サンスー音源の権利を保有していたマーシャル・シホーンが1996年に破産し、その破産管財人として連邦裁判所によって設立された団体です。その実体は知りませんが、今日もサンスー音源は、基本的にGCMが権利を有する形となっている模様です。

シホーンの保有していたマスターテープ類は、リスト化されGCMの管理下に置かれたものと思われます。その多くは彼が権利を持っていた音源でしょうが、そうでないプライベートなテープが紛れ込んでいたとしても不思議ではありません。このライヴ集はそういう音源ではないかと思うのです。

そのリストがフュエル2000の目に触れ、リリースされることになったのではないでしょうか?サンスー音源のリスト記載のものならば、"Sansu Sessions"と銘打つのも頷けます。しかし、フュエル2000が取り寄せてみると、何も詳細が判らない。そこで、出来合いのフェスのバイオをライナーとして付けて体裁を整えた、そんなところではないでしょうか?「出来合い」と推測した理由は、このライナーが結構長い文章ながらCDについて全く触れていないからです。執筆しているビル・ダール氏は、ブルース系のライターとしては名の知れた人です。書き下ろしであれば、推測レベルでも、少しはこのCDについて触れていたのではと思うのです。

また、前述の既発CD(あるいはそのマスター)からコピーしたのでないのはまず確実です。それは、音質が今回のフュエル2000盤の方がよかったり、曲の前後の歓声の部分がフュエル2000盤の方が長く取られていたりするものもあるので、恐らく別ルートでシホーンが独自に入手したテープからの起こしなのではないかと想像しています。

参考までにこれらの音源の権利を有していると思われる権利者は以下の通りです。その後変わっている可能性もありますが。
・「New Orleans Jazz & Heritage Festival 1976」Island Records (or Red Dog Express, Inc.)
・「The London Concert」 JSP Records
・「Live On The Queen Mary」Capitol Records
・「The Big Easy」Home Cooking Records

このCDを買おうか迷っておられる人は参考にしてみてください。寄せ集め音源のCDなので、演奏や音質にはばらつきはありますが、それなりに楽しめる内容だと思います。

PROFESSOR LONGHAIR
Let's Go To New Orleans - The Sansu Sessions-
(Fuel 2000 0302 062 001 8)
Released in Aug, 2014
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