2021/7/13

マディ・ウォーターズ初期の未発表ライヴ音源リリース  ブルース

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Muddy Waters Live in Los Angeles 1954
(GNP Crescendo GNP9057)

凄いものが出てしまいました。マディ・ウォーターズの完全未発表のライヴ音源です。何が凄いかって、レコーディングされたのは1954年9月25日、これまでブルースのライヴ・アルバム先駆けと言われていたマディのニューポートでのライヴ盤(1960年)よりも6年も早いのです。時間は20分弱。短いですがフェスティバルでの演奏なので、恐らくこれで全部なのでしょう。

リリース元はGNPクレッシェンド。10インチのアナログ・レコードのみのリリースです。今のところ日本国内で売っているショップはなく、下記2つのサイトでのみ購入できます。(販売状況については末尾の追記参照ください)
http://store.gnpcrescendo.com/new/product_info.php?cPath=36&products_id=273
https://bluebeatmusic.com/product_info.php?products_id=23928

1960年代以降はマディもロック・ミュージシャンにもカバーされ、ヨーロッパにしばしば出かけるなど活動の幅を広げましたが、そういう時代よりもだいぶ前です。まだ30代と若く、ギラギラしています。

【収録曲】
Baby Please Don’t Go (スタジオ録音日:1953年5月4日)
Hoochie Coochie Man (スタジオ録音日:1954年1月7日)
I Just Want To Make Love To You (スタジオ録音日:1954年4月13日)
I’m Ready (スタジオ録音日:1954年9月1日)
-Interview-
Oh Yeah (スタジオ録音日:1954年4月13日)

代表曲を中心に上記5曲をやっていますが、これらの5曲のうち4曲はこの1954年にレコーディングされています。残る1曲”Baby Please Don’t Go”も前年の1953年レコーディング。つまり、僕らがブルースの古典として知っているこれらの楽曲が出来立てほやほやの新曲として演奏されているんですよ。それだけでもわくわくしませんか?特に”I’m Ready”に至っては、このライヴの僅か24日前にレコーディングされています。

メンバーは、スタジオ・レコーディングの面々が中心となっていますが、異なるのは、ハーモニカ。レコードではいずれもリトル・ウォルターですが、ここではジョージ・スミス(リトル・ジョージ)がプレイしているのです。彼は何度かマディのバンドを出入りしていますが、これは恐らくマディのバンドに最初に入った直後だったのではと思います。彼が参加したマディ名義のスタジオ・レコーディングは残っておらず、その意味でも貴重な音源です。

【メンバー】
Muddy Waters – vocal, guitar
Jimmy Rogers – guitar
Little George – harmonica
Otis Spann – piano
Elgin Evans – drums

場所はロサンゼルスのシュライン・オーディトリアム。アカデミー賞の授賞式にも使われた今も現役の歴史ある大ホールです。GNPクレッシェンド・レーベルの創設者であり、DJ/コンサート・プロモーターとしても活躍したジーン・ノーマンが主宰したイベント「The World Series of The Blues」のヘッドライナーの一人として出演したのがマディだったのです。

ノーマンの息子ニールによると、彼は自ら主宰したコンサートをしばしばプロ機材を使ってレコーディングしていたそうで、この音源もその一つでした。その後リリースされることはなく、ノーマンの自宅ガレージに保存されているのを1990年代になってニールが発見したのだそうです。

時代が時代だけにライヴ会場でのレコーディングというのはそう簡単ではなかったはずです。マディのヴォーカルとオーティス・スパンのピアノが前面にはっきりと聞こえ、他の楽器と客席の音は奥まっている感じで、音のバランス的にはよいとは言えません。恐らく、そんなに何本もマイクは使わなかったのでしょう。

しかし、音質は非常にクリアです。マディの気迫のヴォーカル、そして前のめりにガンガン弾きまくるスパンのピアノに完全にノックアウトされてしまいました。まさに彼らの全盛期のサウンド、それがライヴの熱気の中で展開されているのです。

ベーシストはいません。スタジオ盤ではイントロのベースが印象的な”I Just Want To Make Love To You”はジミー・ロジャーズがギターでそのパートを弾いているようです。スタジオ盤ではリトル・ウォルターのプレイがまったりと響き、曲の主導権を握っている感がありますが、ここではオーティス・スパンが存在感を示しています。特に彼とジョージ・スミスが煽りあうように盛り上げるソロ部は必聴です。

マディはスライド・ソロは弾いていませんが、”Baby Please Don’t Go”でメロディ・ラインをなぞったリードを弾いているのがマディでしょうか。その後ろでガッカガッガとリズムギターが響いていますので、そちらがジミー・ロジャーズかな。全体的にロジャーズは、スタジオ盤に忠実にプレイしている印象です。

“Interview”とあるのは実際にはインタビューというほどのものではなく、メンバー紹介です。ジーン・ノーマンがマディを紹介し、マディが各メンバーを紹介しています。

短い音源ではありますが、短いゆえに聴きだしたら止まらず、僕はもう無限ループで聴いてはまっています。マディもバンドも脂が乗っています。これが今リリースされること自体奇跡と言えるでしょう。せっかくの音源なので、願わくばもっと聴きやすいCDやダウンロードでも出てほしいです。聴かないと損ですよ、これ。

尚、この晩のイベントには他にギター・スリム、ジョニー・ギター・ワトソンも自分のバンドで出ているようです。そっちはレコーディングしなかったのかなぁ?聴いてみたいんですけど。晩年はボロボロだったと言われるスリムですが、1954年と言えば最大のヒット曲”Things That I Used to Do”をリリースした年。悪いはずがありません。

などと妄想も膨らむ新リリースでした。

マディと言えば、彼が長年住んでいたシカゴの家を今年になってシカゴ市が歴史的建造物に指定する方向で動き出したというニュースも入ってきました。以前からこの家をミュージアムにする計画があり、一時は頓挫しかかっていましたが、これが追い風になるのかもしれませんね。シカゴの新たな観光名所になったら素晴らしいですね。

[2021/10/14追記]
「日本国内で売っているショップはなく」と書きましたが、8月になってから名古屋のWalter's Jukeさんが販売を始めました。海外から購入するよりも若干お安く買えますし、待つ時間も短く済みそうです。何度か再入荷もしているようです。タワーレコードのオンラインショップでも販売されています。
このレコードについては、10/25発売のブルース&ソウル・レコーズ162号で大きく取り上げられています。内容について詳しく知りたい方はそちらもどうぞ。
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2021/8/2  14:38

投稿者:sumori

>maetatsuさん
本当によく保存状態もよいままで残っていたなと驚くやら、感激するやらです。今のようにスマホやICレコーダーでちゃちゃちゃっと録音できる時代じゃないですから、ライヴ録音があったというだけで凄いです。で、このメンツ、この演奏ですから。なんで今までリリースしなかったんだろうと思ってしまいますよ。

2021/8/2  10:11

投稿者:maetatsu

このブログでこの音源のこと知りました。即注文し聞いていますがこの音源はすごいですね、、、!54年のマディのライブ?そんなの残ってるわけないやん!と一刀両断していたような、そんな音が実際に現れた、て感じです。紹介ありがとうございました!

2021/7/22  7:57

投稿者:sumori

はい、内容的には是非聴いてほしいです。
でも、残念なことに送料は高いです。bluebeatで買った場合レコードは$20なのに対し、送料は$27.75かかっています。GNPクレッシェンド直で買うと送料はその倍以上だったと思います。

2021/7/20  8:45

投稿者:ちかげ

ああ、これ買わねばなやつですね。レコードだと送料結構かかるかな?でも買わねばなやつですね・・・

http://chicagedrums.officialblog.jp/

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