デスク・トップ・ブルース 第2回




第一回からだいぶ間隔があいてしまって大変申し訳ないです。


最近少々悪のり気味のDJ南沢は、P−VINEからでているマルコム・Xの演説を収録したCD MALCOM X SPEAKS (P-Vine #PCD-1510)を使ってAGITATION TRIP-HOPなるわけわからんものに挑んでいる。

そういえば知人がかつてラスト・ポエッツのウマーに会ったときに、ウマーのしゃべりはそのままラップだったと語っていたが、アフロ・アメリカン達のしゃべりは本当にリズミカルだ。ブレイクビーツにマルコム・Xの演説をのっけて聴いてみると、譜割りこそ合わないがちゃんとリズムにのって”ラップ”していることが解る。ジャングル等の細かいリズムが詰め込まれたブレイクビーツを使うと言葉のグルーヴ感がいっそう顕著になること請け合いだ。

 ブルースのミックスはというとドラムの入ってないフォークものが使いやすい。やはりジョンリー・フッカーが、リフもかっこいいしリズムもいろいろあって最高だが、ライトニン・ホプキンスのブギやサン・ハウスのデス・レターのプリーチなんかも見事にハマルし、ちょっとハズしてフロイド・ジョンソンなんかもなかなか味があっていい。意外に凄かったのはゴスペルのライブ盤。そのままかけたときの荘厳な雰囲気とプリーチャーの神聖な説教が、ブレイクビーツにのっかってDOPINGされると、急にものすごい勢いで暴走し始め、もりあがってくるとその辺のラッパーなんかより遥かに暴力的なライム(内容は福音だが)の後ろから暴動集団(クアイア)のとり憑かれたような叫び声が襲いかかってくる。

 これは趣味の問題だがサンプリングしてバックに使うブレイクビーツはヒップホップの重たいビートよりアシッド・ファンク系の方がスピード感があってかっこいいと思う。基本的にブレイクビーツの上に1曲かけっぱなしでのっけているので、リズムをちゃんと合わせることはできないが、短いギターのリフ等のサンプリングをシーケンサーで打ち込んだり、ループしたりしてリズムを合わせながらヒップホップでいう”うわネタ”として曲にかぶせてメリハリをつける位のことは可能だ。サン・ハウスやエルモア・ジェイムスのあの印象的なスライドのリフなんかをサンプリングすれば、いろんな所で使えるいいオカズになる。かつてアレステッド・ディベロップメントが使っていたハープのサンプリングなんかも探しやすいネタだ。オーティス・ラッシュやバディ・ガイ、マジック、サム等のチョーキング一発だけをサンプリングして各所にちりばめてチョーキングあてクイズなんかやったらおもしろいだろうなぁ。これは誰のどの曲のどこのチョーキングだ!とか。(そこまでわかるわけないか?) そういえば5月に急逸したジョニーギターを偲んで、あの”踏切遮断機サウンド”にループをかけてみたら、小田急線の開かずの踏切になってしまった。でもなかなかいい出来なのでこれを使って一つ曲を完成させて天国のジョニーギターにこの作品を捧げます。


「誰か教えて。ブルースは シャッフル何%?」

  昔からずっと疑問に思っていたことだが、「ブルースはアフタービートだとか、スネアがモタるってよく言われるけど本当にスネアのタイミングがちょっとずれているのか、ずれたように聴こえるだけなのか、ずれているとしたらどのくらいずれているのか、そこには何らかの正確な法則が存在するのか?」これらの疑問に対して明確な答えを誰からも聴くことなく今日まできてしまったことを最近後悔している。確かによく聴くとなんとなくずれているような気もするが、なんでずれるのか、なぜずれた方がかっこよく聴こえるのかは未だに解らない。

 アフリカの民俗音楽には5拍子の曲が多い、という話をブルースハーピストの妹尾隆一郎さんから聞いたことがある。しかもブルース ハープのプレイヤーがよく使うフレーズに5連譜というのがあって三連譜四拍子の中に五拍子五連譜を無理矢理詰め込むらしい。アフロ・アメリカンの音楽であるブルース独特のバック・ビート・シャッフルのタイム感覚の秘密は案外、その辺りに隠されているかもしれない。ドラムマシーンとシーケンサーを使ってswingを作るときは三連譜を使って、シャッフルを作り出すのが常識だが、どうもきれいすぎて違和感がある。ドラムマシーンのブルジョア的?音色のせいもあるが、ブルースマンの演奏自体がアバウトであると片づけてしまうのも可哀想なので、彼らの憂鬱リズムに音楽理論に基づく科学的根拠?をつけることはできないものか、と考えているところだ。ブルースを三連譜四拍子として認識するのは否定しがたいあたりまえの事実であり、どうこう言うつもりはないが、人のリズム感は微妙な個性を持っており、いくらシーケンサーの細かい設定をして打ち込みをしてもそれを忠実に再現する事はかなり難しい。

 コンピューター・シーケンサー・ソフト、パフォーマーのクゥオンタイズ機能にはシャッフルの度合いを%で変えられる機能がある。聴きながら色々数値を変えていくと各イベントの位置と音の長さが変わっているのが解る。かなり近い感じにはなるが、クオンタイズするとすべてのイベントが画一に揃ってしまうのでなんとなく味気ないノリになってしまうのは否めない。すこしでも本物に近づけるためにトラックを分けてバスドラは80%、ハイハットは100%とかやってみたが全体的な感じはたいして変らない。

パフォーマーのもう一つの機能にグルーヴ・クオンタイズというのがあって、HIP−HOP,ROCK,BLUES,FUNKなどあらかじめ曲調ごどに設定されたクオンタイズの編集値を曲にあてはめるというもので、これを使ってクオンタイズすると、イヴェントのべロシティ(音量)までクオンタイズされる。実際にやってみたが、参考程度の物で、まあ直接打ち込むのがよほど苦手な人以外は、あまり利点はない。

 ローランドのMIDI音源付きの練習用のドラムパッドをつかってフレッド・ビロウか誰かにやって実際にたたいてもらってそれをシーケンスしてみたらよく解るのだろうけど。  誰か詳しい人教えていただけませんか?


次回予告「Blues meets "Drum&Bass"」


Jungle の登場から2年、音楽の流行はさらに リズムの複雑化に向かい、ダンスミュージックは ついに”ポリ・リズム(死語?)”の芸術を模索し始めた。

ハウスやユーロ・ビートなど心拍数を無理矢理に駆り立て、踊りのリズムを強制的に単調にさせる、リズムに対して隷属的な立場をとらされる音楽を好まなくなった人々は、BLACK MUSIC, LATIN, 等の多様なグルーヴが複雑に絡み合う曲に耳を傾け、その中から自らの肉体が楽曲の一部となるようなステップを創り出し、新たなグルーヴを曲に加えていった。

ダンスミュージックのこれからの姿は、そういった個人のグルーヴの確立を補助する役割を担うものであるべきだと思っているのは私だけであろうか?  (廣田元太郎






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