デスク・トップ・ブルース 第3回番外編




今回はメールを頂いた方のお便り紹介です。ベーシストの方からのご質問と僕のお返事を少々手直ししたものです。

:ブルースの進行パターンは 1−4−1−1−4−4−1−1−5−4−1−5 ですよね!? 色んな本を読んでも「その外にもパターンある」と記述されているんですが、どこを見てもその外のパターンは載っていないです。その他の進行パターンは有るがあまり有名(実用)では無いと言う事でしょうか? もし宜しければ他のブルースパターンを教えて頂け無いでしょうか?

:ブルースのコード進行に関するご質問の件ですが、1−4−1−1−4−4−1−1−5−4−1−5のパターンが典型として確立されたのはつい最近のことだと思うのですが、(といっても初期モダンブルースあたりから?)それ以前はいろいろなパターンがあり、結構無茶なことを平気でやっていたようです。

戦前ブルースやカントリーブルースでは1コードだけのものや、演奏者の気まぐれでコードが変わっていくもの、R&Bっぽい曲など、挙げればキリがないほど多様です。(ライトニン・ホプキンスやロバートジョンソン、ジョンリーフッカー、ブラインドレモンジェファーソン等を聴いて頂ければよく解ると思います。)その他にもアルバムの中に変わったコード展開のブルースに挑戦している人は時代を問わずたくさんいます。

歴史的にみれば、初期にはかなりあった12小節以外のブルースが、色々な方向に形を変えていき、ついにはブルースと呼ばれずに多様な新しいジャンルとして分かれていったという言い方も出来るでしょう。

とはいっても、昔から上記の12小節3コード進行の曲が圧倒的に多いのは事実で、なぜこれがよく使われるようになったのか、という疑問は残ります。モダンブルース以降に限って、12小節のパターンがよく使われるようになった理由を考えた場合、これは推測ですが、バンドで演奏するようになったので、なにかきまりをつくらなければ、歌のバックでコード演奏(合いの手)をしにくい(それまでは一人で歌とコード伴奏をやることが多かったのできまりをあまり決める必要がなかった)のと、初期モダンブルース以降12小節の伴奏をもとに即興で歌を作るやり方やギタリスト等がギターソロやハーモニカソロ等を決まったコード進行の上で自由に即興演奏するスタイルが主流になった為であると考えられます。コードを色々展開させてメロディーを作っていくといった作曲手法はブルースの世界ではあまり試みられなかったのではないでしょうか。(基本的にブルースは民謡ですからね)

ジャズプレイヤーとってはブルースは即興演奏を最も自由にできるコード進行の一つであるとの認識が強いため、ブルース=コード進行的な考え方が一般的になっています。多くの教則本などはこういった視点から捉えているものが多く、ブルース専門の本でもその他のパターンを持った曲に関して触れているものはあまりありません。実用ではないという見解はおそらく即興演奏するという前提に基づいた意見でしょう。

取りあえず一般にブルース進行と呼ばれるコード展開では、上記のパターンのヴァリエーションで

1-1-1-1-4-4-1-1-5-4-1-5
1-1-1-1-4-4-1-1-5-4-1-1

といったものがありますが、あまり大差はありません。
T・ボーン・ウォーカー等は、大きくみれば3コードですがジャズに近いアプローチで、コード展開を細かく分解した、ある意味では複雑な進行をした曲作りをしているものが多くみられます。

リトルウォルターの曲で「マイ・ベイブ」と言うのがありましてこれは

1-1-1-1-1-1-5-5-1-1-4-4-1-5-1-1

とちょっと変わった進行ですが、シカゴ・モダンブルースの名曲のひとつです。

ブルース本来の醍醐味はコード進行ではなく、黒人音楽特有のタイム感覚と一般的なポピュラー音楽にはない音感(音階や音程?)であると僕自身はとらえています。それは、R&B、ジャズ、ソウル、そして今日のヒップホップにいたっても確実に受け継がれています。

追記
僕も詳しく調査したわけではありませんので、いい加減なところもあります。
お気にかかる点がありましたら何方でもご指摘ください。
 (廣田元太郎






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