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最近個人的にはまっているのが、ウォッシュボード・サム。この戦前の古いレコーディングを何故今聴くの?といわれても特に理由はないんですが、ただ「いいから」の一言につきます。担当楽器がウォッシュボード(つまり洗濯板ですね)ということから判ると思いますが、ジャグ・バンド、スウィング、ジャンプの要素がふんだんに盛り込まれた、何とも楽しいブルースの世界です。まず、この人は声がいい。ちょっとたるい雰囲気もあるのんびりとした調子で、でも伸びのある味なヴォーカルなんだよなあ。 本名ロバート・ブラウン、1910年アーカンソー生まれ。30年初頭にシカゴに出てきて、35年ブルーバードに初レコーディング。そこから49年までの作品を完全版として編集したのが全7巻のこのシリーズだ。どれをとっても本人の歌もいいし、この間ずっとよきパートナーとして殆ど全てのレコーディングに付き合ったギターのビッグ・ビル・ブルーンジーのプレイがたっぷり聴けるのも嬉しい。(サムをブルーバードに紹介したのもビルだったというし、サムとビルは血縁関係もあったらしい。) ラグ・スタイルなど、カントリー的な要素がストレートに出た初期の作品も素朴な中にも光るものがあるし、後期のより洗練されたシティー・ブルースもひけは取らない。一貫しているのは音楽の楽しさだ。ローズベルト・サイクスのレパートリーとしても有名な"Dirty Mother For You" (Vol. 1: (13))、または"Back Door" (Vol. 2, (3))などのピアノのついたバンドで繰り出す軽快さ、ゆったりとしたテンポに哀愁を感じる"It's Too Late Now" (Vol. 3, (1))、女性ボーカルとの掛け合いが楽しい"Ain't You Comin' Out Tonight" (Vol. 5, (13))、7つのCDどれにもお宝が沢山詰まっているのだ。サムは歌がいいと言ったが、もちろん彼の名前にもなっているウォッシュボードも悪いはずがない。彼のレコーディングにはドラマーはおらず、全て本人のウォッシュボードでリズムが取られているのだが、ドラムには出せない独特なビートが紡ぎだされている。通常の洗濯板にはない金属の部品を取り付けた、楽器としてのウォッシュボード。これって自分で作るのかなぁ。戦前のジャグ・バンド系の人にはウォッシュボード奏者ってのも結構いたみたいだけど、とは言え楽器屋で売ってるものでもないだろうしね。 後期 (Vol. 6, 7)あたりになるとバックにメンフィス・スリム (p.)、ウィリー・ディクソン (b.)、ローズベルト・サイクス (p.)、それにスリーピー・ジョン・エスティスとの活動で知られるランソム・ノーリング (b.)などの名手が揃い、彼らの演奏の素晴らしさにもほれぼれしてしまう。 50年代に入って演奏活動から一時引退し、シカゴで警察官として働いたのち数度復帰しレコーディングもしたサム。1966年11月13日、心臓発作で亡くなっている。シカゴ・ブルースと言えば、やはりマディーでありウルフであるわけだけど、サムの音楽もやはりシカゴのブルースの大切な遺産だと思うな。毛色は時代は違うけど。 (11/29/98)
Sonny Rhodes / Out Of Control (King Snake KS-031)
Produced By Bob Greenlee 去年新譜として紹介すりゃよかった!機を逸してしまったので、お気に入りディスクとして紹介させていただきます。テキサス生まれのブルースマン(最近はフロリダに住んでいるらしいけど)、サニー・ローズ。去年ロング・ビーチでライブを見る機会があり、本当に感動した。ギターはジャケットで構えているような普通のギターも弾くのだが、メインはラップスティールだ。彼の弾くフレーズは単純なのだが、一音一音に気合が感じられる。ギュイイイーン!とスライド・バーを滑らせた瞬間の音がたまらない。彼のアルバムは他のものもみんないいけど、この最新作は彼の充実ぶりを見せ付ける傑作だ。ファンキーなタイトル曲もいいし、ほのぼのした(6)も大好き。(12)では、女性に手を上げたりしてはいけないよ、と世の男性に問題を投げ掛けているのが彼らしい。彼ってフェミニストなんですね。全体的に元気いっぱいでファンキー。キャラクターも含めて、個性もたっぷりだ。(5)を除くすべての曲が彼か彼のバンドのメンバーのオリジナルであるのも、個性を感じさせる要因だろうと思う。 ちなみにロング・ビーチで彼を観て感激した僕は、ライブハウスでの単独公演も観にいってしまったのだが、ここでは2ステージでたっぷりと演奏してくれた。このときサインをもらった(このジャケットのものがそうです)のだが、僕が日本から来たことを伝えると、「日本か!ひょっとしたらいつの日か日本でもプレイするかも知れないね。それが実現するために、もし誰を日本に呼んで欲しい?って聞かれたら、サニー・ローズって答えてくれよ!」っと明るく言ってくれた。だからというわけではないが、是非彼には来日して欲しいな。パークタワーではどうでしょう?
SIDE TWO Produced By Higgins & Ervin of Wally Roker & Associates たまにはLPでも紹介しましょう。84年に来日もしたことがあるアメリカ西海岸のジミー・マクラクリン。このジャケットではギターを持ってますが、担当はピアノです。だが、ここではピアノ・プレイヤーとしての側面は殆ど見られず、ファンキーなシャウターに徹している。このアルバムをひとことで言うと、とにかくファンキー!本人の気合いもさることながら、フレディー・ロビンソンのギターがカッコいい。A(4)は、自らの持ち歌、"Every Night, Every Day"のリメイク(改作)。元曲とはガラッと雰囲気を変えた、ファンキー・ビートに乗せて届けてくれる。エディー・フロイドのB(6)もよかですたい!ベースもうねるわ、ホーン・セクションもビシバシ入るわで血沸き肉躍るぜぇぇ。因みに、このアルバムをリリースしたミニットというレーベルの音源は、現在権利の関係上殆どCD化がされておらず、中古レコードが高価でやりとりされているのが、現状。このアルバムもこんなにいいのにCDにはなってない。もったいないことです。中古盤で探せば見つかるはずだから、根気良く探しましょう。でも、ぼられないように。因みに僕は、アメリカに行ったときに10ドルで買いました。
Produced By Hammond Scott and Mark "Kaz" Kazanoff ロングビーチのフェスティバル・レポートなどでも触れたが、僕の注目している人のひとりがオースティン出身のこのW.C.クラークという人。このアルバムは、ブラックトップからのファースト。まず、冒頭のタイトル曲の気持ち良さだけでも、いいなぁと納得させてくれる。軽快なソウル・タッチなビートがホントにツボにはまっているのだ。続く(2)は、ちょっとサム・クックの"Twistin' The Night Away"を彷彿させるソウル・ナンバーだ。ソウル系を歌っているのを聴くと思うのだが、この人って本当に歌がうまい。でも、ブルースを歌ってもしかり。B.B.キングのカバーの(10)では、B.B.と張り合える堂々たる歌いっぷりを披露。ギターもブルージーだ。派手なプレイはないものの、ブルース・ナンバーではねちっこく、ソウル・ナンバーでは軽めにサラッと弾きこなす。さりげにニクいねぇ。因みに、スティーヴィー・レイ・ヴォーンに捧げられた(4)って、スティーヴィーのレパートリーとして有名だったけど、もともとクラークが書いたものなんですよね。
Produced By Rob Rio ロサンジェルスで活動するニューヨーク出身のピアニスト、ロブ・リオ。いいアルバムを出しているのに日本の雑誌などでは全然紹介されてない(と思う)ので、ここで紹介させてもらおう。彼は、ジミー・ヤンシー系の正統派ブギウギ・ピアノから、クラシック・ピアノを彷彿させる技巧的なものまで弾きこなすが、基本的にはノリが命のブギウギ・ピアニストだ。ノリは軽いが、パーティー系のジャンプ・サウンドなどはなかなか楽しいものを聴かせてくれる。ビリー・ボーイ・アーノルドのアリゲーターからのファースト、"Back Where I Belong"では、本作のタイトル曲(4)がカバーされているし、リオ本人も参加している。本作では、キャンド・ヒートのラリー・テイラー、ジュニア・ワトソン、それに元B.B.キング・バンドのテナーのエディー・シニガル(先日ローウェル・フルソンと来日しました)も参加。強力なメンツに支えられ、リオのピアノは絶好調だ。ソロ・ピアノも冴える。特にスワニー・リヴァーをブギウギ調にしたラストの(16)は圧巻だ。彼は他に同じボスからベスト盤を含むアルバム4枚、その他のレーベルから1枚アルバムを出している。
Produced By Robert West or Don Davis ブラックトップから出ている3枚が最近Pヴァインからまとめて日本盤になったりしているけど、ロバート・ワードといえば彼が在籍していたバンド、オハイオ・アンタッチャブルズなど60年代の録音がすごい!これはその頃の音源を殆ど全部まとめてCD化したもの。ソウルっぽさがたまらんですね。ときおり聴かせるシャウト、ビヤンビヤン鳴り響く奇怪なギター、ともにかなり飛んでるけどとにかくいい。でも、(9)みたいにほれぼれするほど美しい曲も多いんだよね。因みにオハイオ・アンタッチャブルズって、オハイオ・プレイヤーズの母体となったグループなんだもんね。そんなところからもロバート・ワードの偉大さを感じるなあ。論より証拠、一度聴いてみて!もちろんブラックトップのものもいいですよ。
Produced By Hammond Scott 元ルームフル・オブ・ブルースのピアニスト、アル・コプリーの第2作はハル・シンガーとのコンビときた。ハルはかつてジェイ・マクシャンのオーケストラにいたことで知られるベテランのテナーだ。おまけに本作にはゲストがついている。ルームフル・オブ・ブルースで一緒だったデューク・ロビラードとそれにスヌークス・イーグリンだ。これは面白い。内容は、冒頭のマック・ザ・ナイフのブギウギ・バージョンからスウィングしまくっている。(2)などではシンガーのブルージーなプレイが冴える。スヌークスは4曲に参加しているが、(4)あたりは彼の個性全開のソロが聴けて最高でした。(5)では、ピアノソロで技も見せてくれる。お薦め盤です。
Recorded Live At THE CINEGRILL, 彼女のライブの楽しさが詰まった「買い」の一枚。 曲間のお喋りにも彼女の人となりが見て取れる。R&B調のものはもちろん、ジャズ、ブルース、バラードと彼女の幅広い表現力が発揮されており、内容は濃い。
Produced By Hugh Fordin 今のところこれが最新作。キャロル・キングの(2)、(14)からオーティス・レディングの (13)までヴァラエティに富んだ内容となっている。コーネル・デュプリー、バーナー ド・パーディー、チャック・レイニーなどの一流メンバーが揃っているが、そのわりにはいまいちバンドに躍動感がないのが惜しいが、(1)、(5)などのしっとりとした曲を中心に彼女の円熟したヴォーカル印象的な一枚。ホーン・セクションも入ったラスト(15)のアレンジはなかなかよい。
Text by Masahiro Sumori unless otherwise noted. |