楽器というのは音が出てこそ意味があるので、いわゆる「ビンテージもの」でコンディションだけ良くて、音はイマイチなんてのは「楽器」ではないと思っています。そんなものはただの「骨董品」としてどっかに飾っておけば良いし、下手に弾くとキズが付いて「価値」が下がってしまうかも知れないので、コレクターの人たちの間だけでやり取りしてください(単に高い楽器の買えないただの貧乏人の話です)。 でも楽器は弾いてないと良い音が出なくなるのは本当のようで、ぼくの経験では楽器屋さんに飾ってある「古いけどきれい」な楽器はあんまり良い音はしません。これはアンプにも言えるようで、デッドストックものみたいので良い音が出た試しはありません。 ぼくは結構「古い楽器」が好きなんですが、これの理由としては
1.新品は音が馴染んでいない。 こんな所でしょうか。簡単に説明すると。
木と言うものは「生きている」ので、結構時間とともに変化します。ギターなんかは木でできている(そうでないものもあるが)ので、この変化がモロに効いてきて、時間とともに音が変わってきます。その時に弾かれながら変化するか、そのままにしておくかで変化の仕方が全然変わってくるみたいで、これが古い楽器の音の良し悪しの決め手になるようです。僕は古い楽器のあの「枯れた音」が好きなんで、どうしても新品よりは古いものを見てしまいます。
特に「枯れた音」とは関係なく、ギターなんかは初めの1年位で新品の「落ち着かない音」から「馴染んだ音」に変わってくるようです。
人間が良い木を採りまくってしまったために、良い木が少なくなってしまったためです。そのため昔よく使われていた「ハカランダ」なんかは現在ワシントン条約で自由に取り引きできなくなってしまいました。今ハカランダの使われている楽器は一部の超高級品に限られますが、昔はそんなに高くない楽器にも当たり前のように使われていました。まあ今でも高い金を出せば良い木を使っているギターはあります。
ギターメーカーも営利団体ですから製造コストを下げてより高収益をあげることがひとつの任務です。ギター工場も昔に比べ省力化や自動化が進み、製造方法も変わりました。しかし、その中で失われたものも多く「仕上げ」なんかは結構違うものが多し、構造まで変わってしまったものもあります。例えばレスポールなんかは昔はネックとボディーをつないで、指板の接着面を平坦にしてから指板を接着していたが、現在は指板をネックに接着してからボディーとつないでいるようです。これで指板とボディーの密着度は変わってくるため、音も変わってくるようです。ただし昔の方法は手間がかかるため、現在の方法を採用しているんだと思います。ただしこれは大メーカーの話で、この辺にこだわってコストよりも品質を重視して作っているメーカーは今でもあります。
ギターメーカーも自社製品をより良いものにするために、日夜研究に励んでモデルチェンジをしていますが、そのチェンジの結果「前の方が良かった」ケースが結構あります。例えばフェンダーのツインリバーブはブラックフェイスから銀パネになる時に「歪みを減らす」ために回路を変更しました。これはメーカーが進んでやったケースですが、メーカーとしても「しかたなく」のケースとして、マーシャルがアンプの出力管を EL34 から 5881 に変更したケースがあります。恐らくこれは EL34 の生産国が主に東ヨーロッパの為、現在内戦等の影響で部品の供給に支障がある為だと思います。
最近(でもないか)各メーカーともに僕のような古い楽器が好きな人が多いことに気づいて、リイシューを出しています。しかし、多くの「リイシュー」ものは「それっぽい」だけで内容は「全然違う」みたいなことが多く、「まあそれなり」的なところがあります。それはそれで「しょうがない」のですが、「じゃあ本当のリイシューを造ろうじゃないか」と言うメーカーもあります。このようなメーカーの製品は仕上げや作りなんかも非常に良くできていますが、お値段の方も結構します。良いものを作るには金がかかる様で、製品の値段は製造コストがモロに効いてくるため「良いものは高い」の法則が成り立ってしまいます。ところが古い楽器の場合、製造コストは値段に全く関係無く、値段は「人気」で決まります。世の中「人気は無いけど良い楽器」と言うのは結構あって、そんなものを買えば結構安かったりします。例えば Gibson ES335 は人気があるため非常に高価ですが、実はこの楽器はこのシリーズの中ではかなり「下のグレード」で、定価のもっと高かった「上のグレード」の楽器の方が現在は安く取り引きされています。
これは完全に好みの問題です。
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