CLARENCE GATEMOUTH BROWN on Peacock 1949 - 1961

ゲイトマウスは、1947年アラディンで4曲をレコーディングした後、ドン・ロビーのピーコック・レーベルの第一弾アーティストとして1949年よりレコーディングを開始しました。このレーベルは、ロビーがゲイトをリリースするために立ち上げたものでした。ピーコックには1961年までの長きに渡り在籍し、21枚のシングル・レコードで計41曲をリリースしたこととなっています。

但し、在籍13年のうちレコーディングは前半6年に集中しており、シングル41曲のうち33曲までが1954年以前のレコーディングです。特に1957年以降の後期5年間は、シングルをたった2枚しか出しておらず、ピーコック・レーベル自体はゴスペルを中心に作品を出し続けていたことから考えて、ゲイトは既に重要視されていなかったことがうかがえます。

ピーコックのゲイトは、Tボーン・ウォーカー系のテキサス・スタイルのギターと大所帯のスウィング・バンド・スタイルですが、レコーディングがまばらになった後期になってフィドルをプレイするようになったり（"Just Before Dawn"など）、フルートが入ったり（"Slop Time"）と変化が出てきています。

初期から中期の作品は、ほとんどの作品を色々なコンピレーション・アルバムで聞くことができますが、後期の作品はなぜか収録しているアルバムが少なく、多少聴くのが難しい曲があります。最後のシングル"Slop Time b/w Gate's Tune" (1961)は、2017年にジャスミン盤で初めてCD化されましたが、それまではアナログ盤でしか聴けない楽曲でした。そのアナログ盤も非常に少なかったので、CD化されて本当に良かったです。

初期の作品では、未発表曲を除き、1曲だけ僕も聴いたことがないものがあります。1949年録音の"Ditch Diggin' Daddy"がそれで、データ上は未発表曲ではないのですが、どのLP、CDにも収録されておらず、オリジナルのレコード（SP盤）も見たことがありません。オリジナルのレコードは、"Mercy On Me"の裏面としてリリースされていることになっています。だとすれば、"Mercy On Me"も同じくらい珍しいはずですが、そうではないのがミソです。"Mercy On Me"は、色々なアルバムで聴くことができます。

どうしてそんなことが起きるのでしょう？これには、ちょっとややこしいからくりがあります。"Mercy On Me"は、このレコードだけでなく、その前のレコード"Didn't Reach My Goal"の裏面としても使われており（このダブりがあるので、シングル曲が41曲と半端なのです）、恐らく今出回っている音源はそちらから取られたものではと思われるのです。

僕は、"Ditch Diggin' Daddy"が収録されたレコードは実はリリースされていないのではと思っています。でなければ、どこかでオリジナル盤が存在し、ひとつくらい収録したLPやCDが存在してもよさそうなものですから。

他にアルバム収録が少ない曲としては、1956年レコーディングの"Rock My Blues Away"があります。古くからのゲイト・ファンならば、「San Antonio Ballbuster」というLPに収録されていたのでお馴染みの曲ですが、LPではそれくらいしか収録がなく、CDでもその名も「Rock My Blues Away」という名前のアルバムと前述のジャスミン盤に収録されているくらいで、なぜかレアな1曲です。ゲイトが1999年のアルバム「American Music, Texas Style」で再演しており、曲自体は聴くことができますが、オリジナルのレコーディングでも聴きておきたいものです。

このリストでお判りの通り、ゲイトがピーコックに残したレコーディングは計53曲。うち"Ditch Diggin' Daddy"も含めれば41曲はシングルでリリース。1983年にラウンダーの「The Original Peacock Recordings」で未発表曲2曲が初登場しました。しかしいまだ、10曲は未発表のままです。53曲がきれいに収められたコンプリート盤のリリースを長年待ち望んでいるのですが、リリースされる日は果たして来るでしょうか。(2020.8.11加筆・修正）