アリゲーターからの第二段だ。前作は、彼らの旧友ジョーン・オズボーンをプロデューサーに迎え、かなり力のこもった作品となっていたが、今回は対称的に肩の力が抜けたと言うか、自然体に戻った印象を受ける。プロデュースを担当するのはノラ・ジョーンズの大ヒット作「Come Away With Me」をプロデュースしたことでも知られるクレイグ・ストリート。 ブルース・チャネルの1962年のヒット5.や、ライ・クーダーやプレスリーもやっていたジム・リーヴズの12.など、随所で聴かれるアクースティック・ギターを生かしたサウンド作りが新鮮だ。ボブ・マーリーの10.もアクースティック・ギターにポプシー・ディクソンが歌を取り、レゲエではなく、フォーク・ソングっぽい仕上がりになっている。 勢いに乗せたブルースも健在。ウェンデル・ホームズのオリジナル1.ではミディアム・シャッフルのリズムにウェンデルの力強い歌が気持ちよく響くし、有名なジミー・リードの8.もなかなかのノリのよさ。ラップ・スティールを加えているのが、また彼ららしい。続くウェンデルのピアノの弾き語り9.も、ゴスペルっぽさが出ててたまりません! 一瞬地味な作品の様で、適度な力の入れ具合が気持ちよい、なかなかの充実作だと思います。(12/27/2003)
ジェイムズ・ハーマン、5年ぶりの新譜である。同じL.A.のハーピストでは、ロッド・ピアッツァなどはその活躍ぶりが伝わってくるが、ハーマンも得難い存在。まずは久々のリリースを喜びたい。前作以降、所属レーベル(キャノンボール)の倒産や家庭の事情などで活動が減っていたそうだが、本作はブランクを感じさせない充実した内容となっている。軽快なシャッフル1.、マディを彷彿させるドロリとした8.、パーカッションも加えた怪しげな雰囲気の12.など、決してブルースからはみ出してはいないのだが、音の表情は豊かだ。曲によってプレイヤーを変えてきているところも、よいのだろう。参加メンバーの中ではピアノのカール・サニー・レイランドのプレイが特に印象に残った。他、ジュニア・ワトソン、カーク・フレッチャー、ボブ・マーゴリン、キッド・ラモスなど豪華な顔ぶれが堪能できる。(12/27/2003)
最近、オルガン・コンボを率いての活動が目立って来ているジョー・クラウンだが、今度の新譜は趣向が違う。通算5作目となるこのアルバムは、デビュー作以来となる全編ピアノ・ソロだ。と言うと地味な印象を受けるかも知れないが、そんな心配はご無用。ご存知プロフェッサー・ロングヘアの1.で、これぞニューオーリンズ・ピアノというところを聴かせ、アルバート・アモンズの4.で激しくブギウギでのりまくり、また2.、13.のような有名曲でも雰囲気たっぷりにメロディーを奏でている。ゴスペルのスタンダード9.もブギウギ仕立てのアレンジが痛快だ。同じピアノ・ソロでもデビュー作よりも音の幅が広がり楽しい内容になった。ニューオーリンズ音楽の血となり肉となったラグタイム、ブルース等を表情豊かに綴ったこのアルバムを聴いていると、ほっと心が落ち着くのである。(12/27/2003)
シカゴのギタリスト、ニック・モスの3作目。前作では、R&B色を濃くするなど、音の幅に広がりを持たせた内容となっていたが、今回はややシカゴ・ブルースに戻した印象だ。それを強く印象づけるのがボブ・ストロージャー(b.)、ウィリー・スミス(ds.)という鉄壁のリズム・セクションを迎えた2.と6.だ。特に2.は、モジョ・ワーキンのような曲調で躍動感に溢れている。8曲に参加のカーティス・サルゲイドのハープも、シカゴ的なサウンド作りに大きく貢献している。噛みしめるようにリズムを刻むシャッフル1.、アグレッシヴなギター・ソロが堪能できる9.など、全編を通してモスの気迫を感じる内容だ。サム・マイヤーズ、アンソン・ファンダーバーグの参加も見逃せない。ビッグ・ビル・ブルーンジーの14.では、サムらしい深みのある歌とハープが聴けます。(12/27/2003)
これはすごい映像が出てしまいました。近年は、ブルースのアーティストの映像も色々あるが、これは約40年も前の1960年代のもの。動く姿が記録されているだけでも珍しいようなアーティストが次々出てくるので、それだけでブルース・ファンなら鼻血を出してしまいそうな内容なのだ。 既にCDでは多くのレコーディングがリリースされているアメリカン・フォーク・ブルース・フェスティバル。1960年代のドイツで行われたこのフェスティバルは、現地のテレビ局が当時の最高の技術を駆使して、映像に記録されていた。全編モノクロながら、まず驚くのは映像と音のきれいさ。この歴史的な映像は、まるで昨日行われてものであるかのように鮮やかだ。 Vol. 1、Vol. 2ともにボーナス・トラック含め、それぞれ約70分くらい。ところどころ、演奏の前後にアーティストの喋りが入る以外は、無駄なく演奏がギッシリつまっている。映像は、観客の前で演奏したライヴと、テレビ番組用のセットでの演奏の2タイプ。セットものは、閉店後のバーや、古ぼけた街角、ベッドルームなどで演奏しているもので、わざとらしさも感じるが、演奏はよいしまぁご愛嬌。ライヴは、お客さんの異様なまでのお行儀のよさが、時代を感じさせる。多くが正装をして、きちんと座っている。アーティスト自ら、自分の次に登場するアーティスト観客に紹介する形式で進行しているのも面白い。サニー・ボーイのMCに乗って登場するロニー・ジョンソン、ロニーのMCに乗って登場するヴィクトリア・スピヴィーとそういう具合だ。 どのトラックも見どころ満載なので、ここでそれを全て触れていると切りがない。メンフィス・スリムとマット・マーフィーの黄金コンビがみれるのもすごいし、マディーの"Mojo Working"のハープを吹くのがサニー・ボーイだったりと、みていて「あっ!」「こ、これは!」といちいち興奮してしまう。リーゼント・ヘアの若きオーティス・ラッシュはギターと声にすごい張りがあるし、額に滲む汗も臨場感をかき立てる。ロニー・ジョンソンは人のよいお爺さん的風貌だが、やはりギターは冴えている。 特にすごいのは、Vol. 2のハウリン・ウルフ。多くの映像が残っているマディと違って、彼の場合映像自体が珍しいのに、3曲も収録。まだまだ元気に吠えているし、ヒューバート・サムリンのギターも切れ味抜群だ。ハーモニカを吹いてないのが残念だが(彼は3曲ともアクースティック・ギターを弾いている)、これだけの演奏を聴けば満足というもの。 ボーナス・トラックは、Vol.1はアール・フッカー、Vol.2はマジック・サム、ともに1969年の映像だ。マジック・サムはフッカーのギターを借りて弾いており、多分同じコンサートでのものと思われる。ともに珍しい映像なので、これを見るだけでもかなり価値があると思う。 Vol. 1とVol. 2のブックレットのライナーの内容が同じなのは、ちょっと手抜きかなぁとも思うが、使われている写真は違うし、個々のトラックのパーソネルもしっかり記載されているので、内容としてはよくできていると思う。尚、このDVDはアメリカ盤だが、リージョン・フリーなので、日本のプレイヤーでも見れます。安心して買って下さい。(10/16/2003)
カムバック後のチャールズ・ブラウンを支えた名ギタリスト、ダニー・キャロン。2003年になって初の自己名義のアルバムをリリースした。先日(2003年8月)、マリア・マルダーの来日の際バンド・メンバーとして彼が同行しており、このCDを会場で販売していた。自主制作で入手しにくい盤だが、なかなかの内容なので是非紹介したい。 4曲のオリジナルを含むインスト中心の内容で、基本的には彼がチャールズと一緒にプレイしてきたジャジーなブルース路線だ。メンバーは曲によって異なるがタワー・オブ・パワーのRon E. Beck (ds.)、ロバート・クレイ・バンドのJimmy Pugh (key.)など、手堅いメンバーを揃えた。丁寧なプレイが印象的なスタンダード2.など、彼のギターは、B.B.キングにも匹敵する甘いきれいなトーンで実によく歌っている。7.で聴けるようなアップテンポでの畳みかけるような軽快なプレイもまた魅力的だ。これを聴いて改めて、チャールズ・ブラウンのサウンドにおける彼の貢献の大きさを実感した。 本人のプレイが堪能できるだけでも充分嬉しいが、本CDの目玉は、なんと言っても、チャールズ・ブラウン参加のトラックが2曲(5.と11.)含まれていることだ。いずれも未発表のもので93年の録音、チャールズがピアノと歌をとり、ダニーのギターとルース・デイヴィーズのベースが加わったトリオ編成のもの。スローでメローなチャールズの世界全開でダニーのギターも光っています。こんな隠し球があったなんてニクイ! 現在、本CDは、CD Babyのウェブサイト(http://www.cdbaby.com/cd/dannycaron)及び、ダニーの公式サイト(http://www.dannycaron.com/)からのメールオーダーで入手可能だ。(8/19/2003)
「プレジデント・オヴ・ソウル」の愛称で知られる、ニューオーリンズのシンガー/ギタリスト、ロッキー・チャールズ。1996年のアルバム・デビュー作「Born for You」は、いかにも南部的なゆる〜いソウル・サウンドが癖になる佳作だった。一昨年に4曲入りミニ・アルバムがあったものの、フル・アルバムは久々だ。リリース元のソウルゲイトと言えば、チャールズが70年代に興したレーベルと同名で、本作は自主製作ということだろう。ファンキー・ブルース調のタイトル曲等、全体的にブルース色が濃く、ホーンや女性コーラスも配してビシッと決めている。前作とは対称的に実にタイトな音だが、裏返り気味な独特の歌声は変わらず健在、曲作りにもかつてO.V.ライト等ソウル界の大物のバックを務めた彼らしいセンスが、随所でキラリと光っている。(8/19/2003)
遂に遂に出ました!ハワード・テイトのカムバック作です。新作アルバムとしては、1972年のアトランティック盤「Howard Tate」以来だから31年ぶり。並外れた歌唱力を持ちながら、行方知らずになっていた彼がカムバックするきっかけになったのは、ニュージャージーのDJ、フィル・キャスデンが、彼に関する情報の提供を番組を通じて呼びかけたことに始まった。そして、2001年の正月に、元ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツのロン・ケネディーが、偶然にもニュージャージーのスーパーマーケットでハワードに出くわしたのだ。一時は死亡説まで流れたハワードの復活劇は、そうしてスタート。間もなく彼は、かつて共に名作を生みだしたプロデューサー/ソングライターのジェリー・ラゴヴォイと再会を果し、その年7月にニューヨークのクラブで復活コンサートを行う。超満員だった会場にはルー・リードなど、有名人も多く駆けつけたという。 作品が少ない上に30年のブランクがあるので、知名度は高くないが、彼の代表曲"Get It While You Can"を聴いたことのある人は多いのではないだろうか。そう、ジャニス・ジョップリンがカヴァーをして有名になった曲で、元々ラゴヴォイがテイトのために書き、ヴァーヴからリリースされたものなのだった。テイト/ラゴヴォイのコンビは、他にも"Ain't Nobody Home"(B.B.キングがカバー)、"She's A Burgler"(フレディー・キングがカバー)などの名曲を世に送り出している。 テイトの魅力は、艶と張りのある歌声と、強烈なファルセットを使ったシャウトだ。久々に再会してテイトの歌声を聴いたラゴヴォイは、30年のブランクが嘘のように、彼の歌声が全く衰えていないことに驚いたという。僕も一昨年の9月、ロングビーチ・ブルース・フェスティバルで彼のステージを観ることができたが、その声の力強さはゾクゾクするものがあった。ソウル歌手多しと言えども、これほどの歌い手はそういない。 前置きが長くなったが、復活第一弾のアルバム、もちろんプロデュースはラゴヴォイだ。曲もプリンスのカバーの10.を除き、全てラゴヴォイが書いたもの(共作含む)だし、彼はキーボード・プレイヤーとしても全面参加している。ラゴヴォイとテイトのコンビの完全復活だ。冒頭から3曲、ゆったりしたテンポのファンキーめなナンバーが続く。アルバムを通してアップテンポな曲は少なく、じっくりと歌を聴かせる重厚な音作りが印象的だ。ファルセットは抑え気味で、以前のアルバムより歌はおとなしめという印象を最初は受けたが、声の艶は衰えていないし、聴けば聴くほど、かつてないほどの円熟した歌声に、引き込まれる思いがした。やはり、この人はすごい、そう実感できる声なのです。 4.、5.など、ソウル・バラードもよし、8.のブルースもなかなかの迫力を持っている。目を引いたプリンスの10.は、プリンスの変態的なノリとは一線を画したカッコいいファンキー・ソウルに仕上がっていて、これも違和感は全くない。蛇足だが、4.と6.は、アーマ・トーマスが自身のアルバム「The Way I Feel」で歌っていたもので、元々はラゴヴォイがアーマのために書いたものと思われる。 そして、アルバムのラストは、"Get It While You Can"の再演。今回は、テイトがラゴヴォイのピアノのみをバックに、しっとりと歌い上げる。これは、じーんと来ます。「いいカムバックができたんだなぁ」と幸せな余韻を残して、アルバムが締めくくられます。確実に2003年ベスト10に入る、充実作です。(7/2/2003)
近年、ザディコの世界では若いプレイヤーがどんどん出てきて賑やかだ。そんな若手の中でも比較的年配(この言い方が微妙?)のジノ・デラフォース(1971年生まれ)が4作目、約4年ぶりの新作をリリースした。ライナーによると、4年もご無沙汰だったのは、ツアーで忙しくレコーディングの暇がとれなかったとのことだ。 いずれにせよ、ファンは待った甲斐があったと言える内容だと思う。冒頭数曲を聴いて思うのは、音に勢いがあるということ。それも気張ってゴツゴツした感じではなく、とてもポップで、真夏に食べる水ようかんのようにツルンと入ってくる。しなやかなスウィング感を生みだすJohn Popp Espriteのベース、効果的なコーラス・ワークの使い方などが音の仕上がりに大きく貢献していると感じた。タイトルの通り自然と体が動く。 ボーソレイユのマイケル・ドゥーセのフィドルが入る曲6., 7., 15.もいい味を出している。6.、15.はもともとドゥーセのレパートリーだし、7.はケイジャン大御所のネイザン・アブシールのワルツということで、いずれもケイジャン色だ。こういった音の広がりがより一層ルイジアナを感じさせてくれる。 カバー曲で目を引いたのはサム・クックの4.とタイロン・デイヴィスの9.だ。9.は、ベースのPoppが歌い、アコーディオンが入っていることを除けばタイロンのオリジナルに比較的忠実な演奏に仕上がっている。対する4.は、一瞬サムのあの曲とは気がつかないくらい、完全にザディコのダンス・ナンバーに変身していて面白かった。 アルドワン兄弟も元気だし、ジノもこのように好調で、ザディコ・シーンがますます盛り上がっていく気配を感じさせる。時代は、ザディコだ!(と勝手に言い放ってみたりして。(笑)) ちなみにこのCD、ジャケットが10ページのブックレットになっていて、全ページカラー。体裁がとても美しいのも特筆に値すると思う。 (6/11/2003)
あのテキサスの要注目レーベル、ダイアルトーンの2003年、最新の隠し球がこのリトル・ジョー・ワシントンだ。1939年生まれの彼は、60年代にフェデラル、ドナにシングルを数枚残してはいるが、その後はレコーディングはなかったようで、本当に知る人ぞ知る存在だったのだ。もちろん新録のフルアルバムはこれが初である。 その彼の存在を日本のブルース・ファンに強く印象づけたのが2002年暮れの新宿で行われたパークタワー・ブルース・フェスティバルだった。プログラムには彼の名前はなかったが、テキサス・イーストサイド・キングスのゲストという形で出演し、強烈な個性をまき散らした。何しろ、ブルースという型にはまった音楽をやるにしては、全てが型破りだったのである。風貌もジャケット写真をみて判る通り、ブルースマンというよりは新宿の路上のレゲエおじさんと言ったほうが近いし、プレイもステージでの振る舞いも、一発宴会芸のようで、はっきりいって度肝を抜かれた。ギターは素振りをみているとちゃんと弾いてんだかなんだか判らなかったけど、ギュイーンンンとアタックの強い音をしていた。頭で弾いて、足で弾いて、股間で弾いて(笑)、とにかく面白かったし、笑いが止まらなかった。 いかに彼のインパクトが強かったかは、Pヴァインの担当氏がその様子を見て、喜び勇んでダイアルトーンのエディ・スタウトと話を付け、こうして日本盤が出ることになったということからも判るだろう。 来日直後の2003年1月、このアルバムのレコーディングが行われた。バンドのメンバーには一緒に来日した名手クラレンス・ピアス(ギター)もいる。さすがにCDのレコーディングだけあって、あのときのライブに比べたら「きちんと作品を作りました」という感じではあるが、決して彼の個性は薄められていない。1.はのっけから勢いのあるインストで、ミュートを使ったプレイ(ステージでは、頭などにこすりつけてゴシゴシと弾いていた)など、彼のギターも個性がはじけている。続く2.はフェデラルのシングルの焼き直しだが、ホロッとさせるバラードでこれも素晴らしいできだ。なかなかの熱唱で、この人って歌も味があるなぁと思った。3.はディープ・パープルの"Black Night"の原曲?と思わせるベースのフレーズが印象的(もろそのまんまです。これも60年代のフェデラルの焼き直し)。ラテンというかムード歌謡風の6.も、怪しさたっぷりで面白い。10.、14.(共にスロー・ブルース)では彼はピアノまで弾いているが、これがまた何とも言えない独特な雰囲気を醸し出している。 うまいか下手かなんでどうでもいい。そう思わせる胡散臭い個性。(これ最高の褒め言葉のつもりです!)これは、天然記念物に値する貴重な存在です。まぁ、騙されたと思って一度聴いてみて!ただし、本当に「騙された!」って言われてもあたしゃ知りませんけど(笑)(6/11/2003)
随分前になるが、National Downhome Blues Festivalの映像をアメリカのテレビPBSで見たことがある。その出演者の中で、このプレシャス・プライアントは妙に印象に残っていた。別に特に目立つことをやっていたわけではなかったが、やはり演奏がよかったのだ。彼女は1942年、ジョージア州のタルボット・カウンティー生まれ。そしてこれが60歳にしてリリースしたデビュー作である。 内容は、僕の期待を裏切らなかった。牧歌的な雰囲気のブラインド・ウィリー・マクテルの1.で和ませてくれたと思ったら、続くメンフィス・ミニー2.では、ミニーっぽいギターのリズムをオリジナル録音以上に小気味よくつま弾き、なかなかの好演に仕上げている。 このアルバムは、トラディショナルな雰囲気で溢れてはいるが、昔の素材をそのまま演奏するだけの作品とも違う。フォンテラ・バスの8.やリトル・ウィリー・ジョンの11.などはいずれも、R&Bの曲として知られているが、ギター1本の弾き語りに料理されているのは見事だ。特に後者は、唸る歌い方がスピリチュアル的な雰囲気を出していて、アルバムのハイライトのひとつでもあると思う。この人は、スピリチュアル的な雰囲気の曲がなかなかよいのだ。歌に重みがある感じでもないのだが、妙に説得力を持って響く。6.、14.(いずれもトラディショナル)などがよい例だ。後者は、「聖者が街にやって来る」とは別曲で、ローダウンな雰囲気がいい感じ。ギターの腕も確かだ。インスト・ナンバー15.では、軽快なリズムでフィンガーピッキングをしっかりと聴かせてくれる。 21世紀を迎え、ブルースも世代交代が確実に進んでいる今、このように生き生きとしたカントリー・ブルースの新録が聴けるのは、ホントわくわくする。決して新しい音ではないけど、往年のヴィンテージ録音を聴いているのとは、明らかに違う新鮮味をこの作品には感じた。(5/2/2003)
過去のレビュー
Text by Masahiro Sumori unless otherwise noted. ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |