新譜レビュー


Muddy Waters / Live 1971 (P-Vine PVH-38)

( 1) Interview With Muddy
( 2) Long Dsitance Call
( 3) Hoochie Coochie Man
( 4) Mannish Boy
( 5) Walking Thru The Park
( 6) Crawlin' Kingsnake
( 7) She's 19 Years Old
( 8) Got My Mojo Working
( 9) Hold It

Produced by Richard Chalk
Recorded at Oregon University Oct. 20, 1970
時間:約41分、カラー

Muddy Waters Live

泣く子も黙るブルースの大御所、マディ・ウォーターズの未発表ヴィデオの登場だ。1971年10月、場所はオレゴン大学。ビッグ・ママ・ソーントン等とのパッケージ・ショーでのステージだ(但し、収録はマディのみ)。当初は、このショーをウッドストックのような映画にしようという計画があり、そのため撮影されていた映像だそうだ。計画は実現せず、今までフィルムはお蔵入りになっていたという。それがこうやって陽の目を見たのだから、嬉しい話ではないか。

演奏は文句なしによい。選曲も名曲揃いだ。マディのスライドで始まる(2)から、もう緊張感でゾクッとしてきた。目をギョロつかせながらナチュラル・トーンで快調なプレイを聴かせるハープのジョージ・スミスを始め、バンド・メンバーも充実。先日来日して元気な姿を見せてくれたパイントップ・パーキンズもいる。

(8)での熱気が特にすごい!ハープを吹きながらステップを踏みまくるジョージ・スミス。ウィリー・スミスの狂ったように激しいドラミング。もう、圧巻だ。演奏とは関係ないけど、ひとつだけ言えば(1)のインタヴューに字幕がないのが不親切だな。あと、カメラ・ワークなど不満のある点もあるのだが、まずは見て!の1本だ。(1/17/99) 





V.A. / Savoy Gospel Quartet Rarities 1 (P-Vine PCD-5442)

( 1) Progressive Four: I Cried Holy
( 2) Progressive Four: You Can Run On
( 3) Progressive Four: Old Time Religion
( 4) Progressive Four: I Ain't Ready To Die
( 5) Johnson Jubilee Singers: Rock My Soul
( 6) Johnson Jubilee Singers: Where Can I Go
( 7) Johnson Jubilee Singers: Heavy Load
( 8) Johnson Jubilee Singers: Humble Yourself
( 9) Jubilators: Mother Called My Name
(10) Jubilators: Seek, And Ye Shall Find
(11) Jubilators: I've Got Heaven On My Mind
(12) Jubilators: Get On The Road To Glory
(13) Selah Jubilee Singers: Gospel Train
(14) Selah Jubilee Singers: Who So Ever Will
(15) Selah Singers: Jesus Loves Me
(16) Selah Singers: Trouble In The Land
(17) Selah Singers: Don't Blame The Children
(18) Selah Singers: The Wicked Race
(19) Selah Singers: Music In The Air
(20) Selah Singers: Old Rugged Cross
(21) Selah Singers: Today
(22) Selah Singers: Here Is One

Compiled by Kenichi Sasaki

Savoy Gospel

恐らく世界一ゴスペルとブルースに造詣の深い酒屋さん、佐々木健一さんの5万枚にもなる膨大なコレクションにPヴァインが目をつけ、そこからサヴォイ・レーベルのゴスペル音源をCD化した。その名の通り、内容はレアなものばかりだ。サヴォイと言えば50年代にR&B、ジャズのヒットを多く生みだした名門レーベルだが、ゴスペルもドロシー・ノーウッド等、素晴らしいレコーディングが多々ある。今回登場の企画は、全6巻という大規模なもの。これは、はっきり言って快挙だ。恐らく、こんなことは2度とないのだろう。

とりあえずVol. 1を買ってみた。収録されたグループのうち、一番有名なのはナッピー・ブラウンも在籍していたセラ・ジュビリー・シンガーズだろう。録音は1955年。ナッピーがリードをとる曲(13)もある。コーラスで汽車の効果音を入れたりと、ポップでユニークな曲で、ナッピーらしいと言えるのかも。しかし、もっと素晴らしいのは、(15)以下のセラ・シンガーズ名義のトラックで、リード・ボーカルの美しさと迫力には感服してしまう。このセラ・シンガーズは、セラ・ジュビリー・シンガーズと同じグループだが、メンバー・チェンジを経ており、リード・ボーカルは全て別人で、別のグループと言ってもいいようだ。(15)を始め、数曲で聴かせるサム・クックを思わせるスタイルにはシビれる。でも、それだけじゃないオリジナリティーも感じるのが嬉しい。(17)は、イントロが何故か演歌風で面白かった。(イントロに続いて、港町ブルースを歌いたくなった。たはっ!)このグループの8曲は1958年の録音だ。

(1)から(8)の2グループは素性は不明なグループ。プログレッシブ・フォーは1947年、ジョンソン・ジュビリー・シンガーズは1943年の録音で、いずれもバック・バンドはなくアカペラだが、ハーモニーの深さと躍動感はたいしたものだ。セラの前身のジュビレーターズの4曲もアカペラだが、(10)など、リズミカルできれいなハーモニーはさすが素晴らしい。(1950年録音)

おれは決めた。全巻絶対買うぞ!これは、大枚はたく価値はあると思う。完全限定プレスなのでお早めにね。 余談ですが、佐々木さんの酒屋、いづみやもよろしゅう。日本酒を注文すれば、レア音源のテープが付いてくるかも?興味のある人はFAXを送って酒のリストを取り寄せよう!022-223-3792(TEL/FAX)まで。(11/29/98) 

その後買ってます!特に女性シンガーの巻(PCD-5446)のパワーにはやられました。マリオン・ウィリアムズはもちろんいいし、キャラバンズなどもう最高ですわ。(12/27/98) 





Keb' Mo' / Slow Down (OKeh/550 Music BK 69376)

( 1) Muddy Water
( 2) I Was Wrong
( 3) Everything I Need
( 4) Henry
( 5) Soon As I Get Paid
( 6) A Better Man
( 7) I Don't Know
( 8) A Letter To Tracy
( 9) Slow Down
(10) Rainmaker
(11) Love In Vain
(12) God Trying To Get Your Attention
(13) I'm Telling You Now

Produced by Keb' Mo' and John Lewis Parker

Keb' Mo'

このケブ・モーの3作目で初めて彼を知った人ならば、彼のことをブルース・アーティストとは思わないだろう。前作でみせたシンガーソングライターっぽさが、ここではより自然な形で馴染み、ストレートなブルース・ナンバーは殆どなくなってきている。((11)を除き、全てオリジナル曲だ)ただ、トラディショナル・ブルースの要素は薄くなっているわけではなく、ハープを随所にアクセントに入れてきたり、ドブロでブルージーなプレイを織り込んできたりと、うまい具合にサウンドの中に溶け込ませてあって、これがケブ・モーならではの独特な音を紡ぎだしているのだ。自分がロバート・ジョンソンらと並べて「ブルースマン」として語られることに戸惑いを感じると、ケブはインタビューで語っていた。本作での方向性は、彼として自然な流れなのだろう。

ロサンジェルスからニューオーリンズへ移住した彼だが、音にニューオーリンズ的な要素が目立ってはいっているわけではなく、マイペースに地を出してきているという印象を受ける。オリジナル曲で聞かせるこののんびりした感じの哀愁を持った響き、そうだこれは70年代のウェスト・コースト・ロック(ジャクソン・ブラウンあたり)にかなり近い雰囲気だ。(4)、(7)などはまさにそんな感じだと思うのだがどうだろうか。LA育ちだし、そういう世代だからなぁ。ブルースは(5)、(8)、(11)あたり。ロバート・ジョンソンの(11)は、これまでのカバーとは違って、オリジナルに忠実な演奏となっている。

特に変わったことをやっているわけではない。本作もこれまで同様、いかにも「普通の人」っぽい音を聴かせている。でも、聴いていると安らぐケブの人柄がよく出た、いいアルバムだ。彼がこれだけ受けているのは、この「普通っぽさ」に心の故郷を感じてしまう人が案外多いということなのかな。ゲストにアンダース・オズボーンが参加している。(10/27/98) 





Sista Monica / Sista Monica (Mo' Muscle MOR042756)

( 1) What Difference Does It Make?
( 2) The Sista Doesn't Play
( 3) I'm Falling Anyway
( 4) How Long Does It Take?
( 5) Festival Time Boogie
( 6) Stop Talkin' Bout Me Stalkin' You
( 7) Never Say Never
( 8) I Been Bamboozled!
( 9) I Don't Want To Hurt You Baby
(10) Don't Come Around
(11) Where Is My Teddy? (Dance JAM)
(12) Where Is My Teddy? (Radio Edit)
(13) I'm Unhappy You're Unhappy With Me
(14) Amazing Grace/Motherless Child

Produced by Danny Beconcini, Ron E. Beck, Larry Batiste and Monica Parker

Sista Monica

シスタ・モニカの約2年振りとなる新作。95年の彼女のデビュー作は、パワフルな歌いっぷりを聴かせた充実作で、僕はその年の本誌年間ベスト10のトップに挙げてしまったが、本国でもW.C.ハンディー・アワードにノミネートされたりと、注目度はなかなか高かったようだ。前作ではストレートなブルースのみならず、アル・グリーンのソウルも歌いこなす包容力を見せてくれたが、新作ではより自然な形でブルースとソウルが一体化している。サザン・ソウル調の(4)の迫力などは天晴れだ。声のつや、表現力ともにこれほど歌える女性歌手はヴァレリー・ウェリントン以来久しく登場していないのではと思う。フレッド・ウェズリー参加のホーンの健闘も華を添えている。特にファンキーな(11)では、ウェズリーのトロンボーン・ソロも決まっている。本作では、曲も殆どがオリジナルで、モニカはソングライターとしても才能を開花させた。ブギウギ調でブルースフェスの楽しさを歌った(5)など、茶目っけもたっぷりだ。最近はホームページも立ち上げ(www.sistamonica.com)、ツアーも精力的に行っているようで、これからが益々楽しみです。 (10/27/98) 





Otis Rush / Any Place I'm Going (House Of Blues 51416 1343 2)

( 1) You Fired Yourself
( 2) Keep On Loving Me Baby
( 3) Part Time Love
( 4) I Got The Blues
( 5) The Right Time
( 6) Looking Back
( 7) Any Place I'm Going (Beats Any Place I've Seen)
( 8) Laughin' And Clownin'
( 9) Pride And Joy
(10) Have You Ever Had The Blues
(11) Walking The Back Streets And Crying

Produced by Willie Mitchell, Otis Rush and Masaki Rush
Otis Rush

前作"Ain't Enough Comin' In"のリリースで、「ををを!17年振りの新作どわぁ!」と騒いでいるうちに、また4年もの歳月が経ってしまった。(んなアホな...)去る5月の来日のときも絶好調だったから、新作にも当然期待がかかる。LA録音だった前回とはうってかわって、今回はメンフィスでのレコーディング。プロデュースには、メンフィス・ソウル系プロデューサーの第一人者、ウィリー・ミッチェルを迎えた。

でも、オーティスのオーティスだ。ソウル寄りな選曲もあるが、基本的には彼らしいブルース・アルバムに仕上がっている。彼自身「お気に入りはアルバート・キング」と語っている通り、本作でもアルバートの(4)をカバーしているし、前作以上にアルバートっぽいプレイが多いのが、印象に残った。前作ではバックの音はややロックよりなタイトな音だったが、今回の方がより、しっとりした感じなのはメンフィス録音の成果だろうか。特にいいのは(6)や(11)のようなスロー・ブルースで、彼のギターの力のこもり方に思わずのめり込むように聴いてしまった。やはり調子はかなりよさそうだ。オーティスとウィル・ジェニングスによる新曲(7)は、ちょっとソウル色も感じるが、リズムはレゲエで、今までのオーティスにはなかった新境地を感じさせる。これが結構良いのだ。こういう曲調で彼がどういうギターを聴かせるかは聴いてのお楽しみ。マーヴィン・ゲイのソウル(9)もいい雰囲気だ。コブラのリメイク(2)のブレイクのところのギターの余韻、いいなあ。(ちょっとテープ編集したっぽい風にも聞こえるけど)でもこれぞ、オーティスのサウンドだ!この調子で、次作につなげてもらいたい。(8/22/98) 





Popa Chubby / It's Chubby Time (P-Vine/Non-stop PVCP-8716)
The Best of Popa Chubby
( 1) Money
( 2) Stoop Down Baby
( 3) Sweet Goddess Of Love And Beer
( 4) Feel My Eyes On You
( 5) It's Chubby Time
( 6) Show Me
( 7) Every Girl I See
( 8) Angel On My Shoulder
( 9) Don't Look Back
(10) Workin' Class Blues
(11) Nobody Knows You When You're Down And Out
(12) Dance The Night Away
(13) Laya What Ya Tryin' To Do
(14) Protected
(15) What's You're Problem?
(16) She's Not An Angel
(17) Ride Devil Girls Ride

Produced by Ted Horowitz
Popa Chubby

どないだす?スゲエインパクトでしょ?キワモノっぽいジャケで登場のギタリスト、パパ・チャビーだが、音はそんなこと全然ないっす。ビシッと芯の通ったブルース・ロックだ。95年にオーケーから"Booty And The Beast"というアルバムを出しているけど、その他に自己のレーベル、ラーフィング・ベアからアルバムが4枚ある。そのうちスタジオ作3枚から選曲したベストがこれ。日本独自の編集で、未発表曲2曲付き。

ファーストの頃のストレートなブルースのノリも最高だし、セカンド以降のロック寄りなアプローチもかなりいけてる。ルー・リードっぽい語りのボーカルを聴かせる(9)なんてスライド・ギターもいいし、絶品です。オリジナルの(3)などは、顔に似合わないきれいなメロディーを持っていて(失礼!)、ソングライターとしての才能も発揮している。バリバリにタフなサウンドで弾き倒すそのプレイは、迫力満点だ。11月には嬉しい初来日も決定。さあ、盛り上がるゾ。尚、このベスト盤と同時にライヴ盤"Hit The High Hard One"も同じPヴァインから発売されてます。尚、彼の情報は、彼のホームページでどうぞ。(8/22/98) 





Jimmie Vaughan / Out There (Epic K 67653-S1)

( 1) Like A King*
( 2) Lost In You
( 3) Out There
( 4) Can't Say No**
( 5) The Ironic Twist
( 6) Positively Meant To Be
( 7) Motor Head Baby
( 8) Kinky Woman
( 9) Astral Projection Blues
(10) Little Son, Big Sun



Produced by Jimmie Vaughan & John Hampton
*Produced by Nile Rodgers
**Produced By Jimmie Vaughan
Jimmie Vaughan

存在としては、弟スティーヴィー・レイの陰に隠れがちなジミーではあるが、そのプレイの表現力には、弟以上のものを感じる。スティーヴィー・レイは豪快で目立つが悪く言えば一本調子。(悪口じゃないっす。僕も彼は結構好きだし。)ジミーは派手さこそあまりないものの、スロー・ブルースでのタメなども素晴らしいし、その音色の奥深さは本当に素晴らしいの一言に尽きる。スティーヴィー・レイが、影響を受けたギタリストとしていつもジミーの名を真っ先に口にしていたのもうなずけるのである。ファビュラス・サンダーバーズが86年に来日したときのジミーのプレイは今でも、鮮明に脳裏に焼き付いている。でも、ファビュラス・サンダーバーズのレコードって、ライヴと較べてあまり面白くないし、ジミーもそういうところで、自分の魅力を聴き手に伝えきれてないような気がしてならない。


このアルバムはジミーの4年ぶりのソロで、2作目。前作では初めてヴォーカルも全面的に取り、シブめながらゴキゲンなブギをたっぷり聴かせてくれた。今回のアルバムは、方向性としてはちょっと変わっている。サンダーバーズのりのブギは影を潜め、スロー主体の更にシブ目な路線に行っている。でも、これが実にいい。最初聴いて肩透かしを食らったと思ったら、2度3度と聴いてみてほしい。僕はそれで、すっかりこのサウンドの合間に流れる空気がおいしく感じるようになった。前作で全面プロデュースを担当していたナイル・ロジャーズは、今回は冒頭の1曲のみ、作曲とプロデュースで関っている。個人的には、ロジャーズのプロデュースはクセがありすぎて、好きではないのだが、この曲は気に入ってしまった。いきなり結構シブい曲調ながら、内なるパワーを感じるし、今までのジミーの方向性と較べると、ひとひねりもふたひねりも工夫の感じられる、味のある曲だ。ジョニー・ギター・ワトソンのカバー(7)もテンポゆったりめで、オリジナルにはない魅力を放っており、実にクール。(5)、(8)あたりは得意なジミー流のブギで、こういう曲調のものも挟んでくれるから、ますますすんなりと入ってくる。ゲストでは、ドクター・ジョンが(9)に参加しているが、ハッキリ言ってあまり目立たない。

このアルバムのリリースを機に久々に来日なんかしてくれちゃったら、むちゃくちゃ嬉しいんだけど、どんなもんでしょうね。(6/22/98) 





内田勘太郎 / マイ・メロディ (Tone Records 1001)

( 1) ブリージン
( 2) 夢うつつ
( 3) スリープ・ヲーク
( 4) あのメロディ
( 5) スターダスト
( 6) 安心
( 7) ラグ・ア・ファンク
( 8) 美らフクギの林から
( 9) ていんさぐの花
(10) ボードー・イヴ
(11) 蘇州夜曲
(12) 明日の夜に
(13) 眠ってしまおう
(14) スモーキー・アイズ



企画製作 鷲巣功
Kantaro Uchida

憂歌団のギタリスト、勘太郎初のソロ・アルバム。憂歌団は、ご存知の通りもう四半世紀近く続いている大ベテランのバンドだが、これまで木村充揮は何枚かソロを出しているのに、勘太郎が今まで出していなかったのは、不思議といえば不思議。サポートするメンバーは、元りんけんバンドの金城浩樹(ベース)、シンガーソンライターの下田逸朗(ギター)らの面々。

録音は、沖縄のコザ。サウンドとしては憂歌団的な要素を踏まえてのもので、木村がいない分だけアクがなく、おしゃれな雰囲気、それに勘太郎のギターがクローズアップされている。ジョージ・ベンソンの(1)の気持ちよさ。のっけから、すっとはまる作品だ。何せ、出だしの軽快なスライドが最高なのだ。(3)はあのサント&ジョニーのスタンダード曲。ちょっとボサノバっぽいリズムがいい。勘太郎のギターは甘く落ち着いた音色を奏でているようで、後半は静かに燃えてくる。冒頭3曲インストが続くが、自作の(4)からは歌も歌う。どこか懐かしい雰囲気で心が和んでしまう、そんな雰囲気がある曲だ。一転してラグ・ギターとファンク、更にはヘヴィー・メタルっぽいプレイまで飛び出す(7)に驚かされたり、(9)は琉球民謡だったりと音に幅を持たせているが、全体を通してまとまりがあるのは、やはりブルース的ルーツが一貫しているからだろう。心のふるさとをみつけてしまったように、聴いていると和み、嬉しくなってくる作品です。(6/22/98) 



W.C. Clark / Lover's Plea (Black Top BTCD-1145)

( 1) Changing My Life With Your Love
( 2) Lover's Plea
( 3) Lonely No More
( 4) Someday
( 5) Pretty Little Mama
( 6) Are You Here, Are You There?
( 7) Everywhere I Go
( 8) Sunshine Lady
( 9) I'm Hooked On You
(10) Why I Got The Blues
(11) Do You Mean It?
(12) That's A Good Idea


Produced by Hammond Scott and Mark "Kaz" Kazanoff
W.C. Clark


絶対!何が何でもの大推薦盤!オースティンのギタリスト、W.C.クラーク。アグレッシブなだけがテキサス・ブルースじゃないということを証明する格好な1枚だ。彼の音は繊細でソウルフル、円熟した味。このアルバムは、彼のファンなら満足できると思うし、そうでなくてもソウル寄りなブルースが好きなら絶対これはハマります。スティーヴィ・レイ・ヴォーンの"Cold Shot"のオリジナルの人、と言えばスティーヴィー・レイのファンも興味がわくかも。

これは、ブラックトップからの3枚目となるアルバムで、過去の2枚も最高だったけど、今回も内容は負けず劣らず。冒頭からホーン入りのソウルで聴かせます、泣かせます。シャッフルの(3)、(11)もノリも抜群。この人のギターは特に弾きまくるタイプではないのだが、さりげなくうまい。このさりげなさがステキ!歌はもちろんギターにもソウルがこもってます。アル・グリーンの(9)など、ボーカルが表情豊かなこと!なんか、冷静に批評を、と思っても「素晴らしい」と言うたぐいの言葉しか出てこない。本当に傑作。

ブラックトップも本格的に活動を再開したようで、こちらも嬉しい。同レーベルからほぼ同時期に出た、ヘンリー・バトラーのアルバム、これもいいでっせー。彼 (p., vo.)とスヌークス・イーグリン (gt.)、マーク・カザノフ (hca.)の3人というしぶい設定で、ニューオーリンズ・サウンドを正面から追及してます。(5/29/98) 





Bobby "Blue" Bland / "Live" On Beale Street (Malaco MCD7489)

( 1) Intro, Bobby Bland Orchestra
( 2) When Your Love Is Not Around
( 3) That's The Way Love Is
( 4) Love Of Mine
( 5) As Soon As The Weather Breaks
( 6) Further On Up The Road
( 7) I Pity The Fool
( 8) Ain't No Sunshine When She's Gone
( 9) St. James Infirmary
(10) I'll Take Care Of You
(11) Get Your Money Where You Spend Your Time
(12) You've Got To Hurt Before You Heal
(13) Sunday Morning Love
(14) If You're Gonna Walk On My Love
(15) Bobby Rush, Johnny Taylor Introduction/Rap
(16) Stormy Monday
(17) (Medley) Double Trouble/She's Putting Somethin' In My Food
(18) Members Only
(19) 24 Hours Of The Day

Produced by Wolf Stephenson
Bobby

7月に久々の来日も決まったボビー・ブランド(10年振りくらいかなあ)。彼の長いキャリアの中で初のライブ盤となるのがこれ。必殺痰吐き唱法は好き嫌いがかなり別れるところだが、それはどうあれ彼がブルース歌手の最高峰の一人であることは事実。いきなり、冒頭から「カーッ! Good Evening!」と挨拶とともに最初の痰吐き(笑)。僕はやっぱりこれがないとブランドじゃないなあ、ってつくづく思う。最近、歳もとってきて体調を崩していると言われるブランドだが、このライブ盤はハッキリ言ってかなりよい。確かに声量は落ちているかなとは思うが、深みのある声質は健在で、全19曲、デューク時代からマラコの最大のヒットの(18)までお腹一杯な内容。ボビー・ラッシュとジョニー・テイラーがゲストで参加する(15), (16)も掛け合いが聴きもの。客も盛り上がってる。ボビーのハーモニカもカッコいいし。(18)はやはり、冒頭から泣けちゃうなあ。名曲です。来日公演、観ないと損だよ、きっと。ちなみにこのライブ盤は、ビデオも出ている。(5/29/98) 




過去のレビュー

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その9 (01/2〜03/2)

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その3 (97/3〜98/1)

その2 (96/8〜97/2)

その1(96/3〜96/7)



Text by Masahiro Sumori unless otherwise noted.




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