ロバート・クレイ・バンド、ルームフル・オブ・ブルースと渡り歩き、現在は自らのバンド、スティレットズを率いて活動する、シンガー/ハーモニカ・プレイヤー、カーティス・サルゲイド。2年ぶり、ソロ作としては4作目となるアルバムだ。以前よりもオリジナル曲の割合が増え、ソングライターとしての才能をも示した形となった。ブルースもやってるが、ソウル色のナンバーも多く音楽性は幅広い。タイトル曲(2)は、ファンキーなロックと言った感じだ。ハーモニカに関しては色を添える程度で、主役にはなっていないし、吹いてない曲も多い。あくまでも、彼は歌で勝負をかけているようだ。ドン・ブライアントの(3)での歌いっぷりなどは、オーティス・レディングを彷彿させる堂々たるもので満足できる。デューク・ロビラードのゲスト参加が目を引いたが、彼以上にバンドのギタリスト、ジョン・ウィードマイヤーのプレイが光っている。派手さはないのだが、躍動感があるし何と言ってもギターがすごくいい音していて気に入ってしまった。(6/26/99)
スウェーデン放送局が、1964年秋より21回に渡って放送したラジオのシリーズ番組"I Blueskvarter"(英訳"In The Blues Quarters" - ブルースの地区にて)の音源を収録するため、1964年5月、番組のDJ、Olle HelanderとエンジニアのHans Schweitzは、アメリカへと向かった。彼らはニューヨーク、シカゴ、メンフィス、ニューオーリンズと渡り歩き、貴重なレコーディングの数々を土産に故国へ帰っていったのだった。そして番組は大きな反響を呼び、北欧でのブルース・ブームの火付け役の一端を担ったのである。 それから30年以上が経ち、その音源がスウェーデン放送局とスカンジナビアン・ブルース・アソーシエーションの手により、CD化されることとなった。まずは、第1段:シカゴ編である。まず、登場するメンツにワクワクさせられる。それほど有名どころが顔を揃えているわけではないが、いずれも自分の世界を持った実力派、個性派ばかり。僕は、ジョニー・ヤングにヤンク・レイチェルというブルース・マンドリンの2人が入っているのがいいなあと思った。ブルースでは珍しいマンドリンを弾く、代表格2人が揃ったわけだから。若きマイク・ブルームフィールドがセッションに参加しているところなども嬉しいのだ。 予算の都合からスタジオではなく、休業中のバーで録音されたというこれらのトラックは弾き語り的なものが中心だが、どれも内容は素晴らしい。ウィリー・メイボンの完全なソロ・スタイルも洒落ているし、弾き語りのエディー・ボイドに絡みついてくるブルームフィールドのギターもアクースティックで地味目ながら魅力的だ。ヤンク・レイチェルは、いつもの弾きまくりスタイルが気持ちよく、思わずニヤけてしまう。マンドリンって本当に味のある音がするよね。ビッグ・ウォルター・ホートンのハーモニカもぶっとい音しててよい。共演のロバート・ナイトホークはスライドではなくバッキングに徹しているので、ちょっともったいないけど。レコーディングの環境としては万全とはほど遠い状態だっただろうに、全体を通して音がクリアなのも驚きだ。 このアルバムの中で、やはり一番僕が印象に残ったのは、サニーランド・スリムだった。ピアノの音の深み、声の伸び、まだこの頃のスリムは、脂が乗っている。こんなにシンプルなセッティングでも、これだけ自分の世界を作り上げられるなんて、本当に彼はすごい。ピアニストでここまで、個性的なプレイをする人はそういないだろう。 今後、このCDはシリーズ化して、同番組の音源をCD化していくとのことだ。第2段としてシカゴ編の続編が予定されている。こちらでは、ポール・バターフィールド・ブルース・バンドやウォッシュボード・サム(ラスト・レコーディング)が収録されるそうで、これは期待が否が応でも高まってくる。ほか残されたレコーディングの中には、メンフィスの分にはウィル・シェイド(メンフィス・ジャグ・バンドのギタリスト)やファーリー・ルイス(チャーリー・マッスルホワイトが共演)、ニューオーリンズの分にはスヌークス・イーグリンとパーシー・ハンフリーの演奏があるということで、これは今後リリースしてくれるのだろう。早く早く!と今から待ちきれないというのが正直なところだ。(6/19/99)
ベイエリアのギタリスト、3作目となるアルバムの登場だ。プロデューサーは前作と同様ジム・ゲインズが担当し、主要なバンド・メンバーもそのまま。しかし、アルバムとしての完成度は確実に上がっている。ヘヴィーなブルース・ロックというような見方もされているようだが、僕はファンキー・ソウルだと思う。1. は、いかにもギターのリフがサザン・ロック調のブギであるが、それでもソウルフルに聞こえるのは、ソウルの影響が色濃く出たカストロのヴォーカル、それにタイトなホーン・セクションが華を添えているからだろう。ギターも、全体を通してストラト本来のトーンを大切にしたいい音を出しており、骨太ながら大味なところは全くない。デルバート・マクリントンがゲストの4. は、特にファンキー。ウィルソン・ピケットのような6.も気持ちいい。力強いソウル・カラーでまとめたのは大正解。ドクター・ジョンの参加 (4.、5.)を知って手にした人は、彼がそう目立ってないのでがっかりするかもしれないけど、でもアルバムの内容には満足するのでは?(4/25/99)
エリック・サーディナス、彼の名前を初めて聞いたのは昨年のこと。アメリカの知人から、「ジョニー・ウィンターばりのギターを弾く、すごいやつがいるよ」と教えてもらったのだ。そのウィンターのツアーで昨年前座を務め、一躍注目を集めたサーディナスの待望のデビューがこれだ。近年スティーヴィー・レイ系のギターを弾く人は本当に多いが、ウィンターっぽいプレイを聴かせる人は、今まであまりお目にかかったことはない。しかし、彼は一聴して、かなり似ているので正直言って驚いた。冒頭のハードなブギなど、曲調自体ウィンターそのものな上に、スライド・ギターの音色、節回しだってウィンターだ。声質も似てるし、歌い方もかなり意識してるなあ。ただ、ソロの殆どがスライドであるところは違う。オリジナリティーを期待するのはこれからとして、ウィンターが一機に若返ったような演奏は痛快で(彼は現在29歳だ)、出来は上々だ。ウィンターのナンバー14では、本家のウィンターがゲストで共演。13ではヒューバート・サムリンも参加してる。(4/25/99)
ジョージア・ホワイトの2曲([DISK 1] 5., 6.; 36年) はいずれもセックスを題材にしたものだが、コミカルに軽快に歌っているのが楽しい。6.は、ルース・ブラウンがカバーしたことでも有名だ。トリクシー・スミスの[DISK 1] 9.(38年)は、本人の歌も去ることながらシドニー・ベシェのクラリネットが抜群のノリ。 ディスク2の冒頭のドナ・ハイタワーの曲(51年)は、ジョン・リー・フッカーの"I'm In The Mood"のアンサー・ソングとなっているのが面白い。「あんたはそういう気分でしょうけど、私は乗り気じゃないわね!」という内容だ。バックのスライド・ギターも名演。ビッグ・ママ・ソーントンの(プレスリーもカバーして)あまりにも有名な[DISK 2] 7.(52年)も貫録で聴かせるし、若き頃のエスター・フィリップスの[DISK 2] 11.(54年)には、色気もパワーもみなぎっている。先日75歳にして初のアルバムをリリースしたアルバータ・アダムス("Born With The Blues" このアルバムがまたいいんだなあ)のチェスに残した[DISK 2] 9.(53年)が入っていたのも嬉しかった。 僕のお気に入りは、マリー・アダムスの[DISK 2] 8.(53年)だ。高めの声が裏返るようなシャウトも魅力的だし、バックについたジョニー・オーティス・バンドも素晴らしい。特にギターのピート・ルイスのプレイがよい。B.B.かローウェル・フルソンかというような、モダンな洗練されたカッコいいソロを聴かせてくれる。 2枚目の後半はチェスを中心に名曲オンパレード。[DISK 2] 18.や20などの有名曲を今更、ここでどうこういう必要もないだろうて。ピーコックやエクセロの音源も出てくるし、ここら辺の版権を押さえているMCAってやっぱ強い。ラストのアイク&ティナは、B.B.のスロー・ブルースのカバー(69年)。ギターはアイクとあと、アルバート・コリンズが弾いてるよ! (4/15/99)
3回ほど聴いたんですけど、いやぁ、寂しい独りモンの三十路男が夜中にこん なモン聴いちゃぁいけません。いきなし "I put spell on you" を連想させる ようなオモォ〜い曲1. で始まって、軽快な曲やしっとりとしたジャズ風味の曲を 表情豊かに(この人のア行の発音、声のトーンがなんとなく美空ひばりチック です)歌い上げるのですが、何と言っても10. とラストの12.、この2曲ですっかりトドメ刺されて涙腺ユルユルにされました。 何より曲自体が良いことに輪をかけて、泣いてくれと言わんばかりのこのサウンドときたもんだ!仕事人 Duke Robillard 先生のフェンダー・アンプのトレモロがユルぅぅくかかったイナタいギターに、ハモンドB3+レズリーの最強タッグとホーン部隊が絡んで、メンフィス・STAX系R&B風味に仕上がったこの逸品の味わいたるや、まさに、「いやぁぁ、いぃ仕事してますねぇぇぇ」と言う他ありません。(それはちょっとホメ過ぎか!?) サスガは和田アキ子も淡谷のり子も平伏すR&B界の女帝!黒い野村沙知代!! (をいをい、ちっともホメてへんやないけ)鈴木その子は「痩せたい人は食べな さい」と言ったが Ruth なら「泣きたい人は聴きなさい」と言うに違いないっ! (えぇかげんにしなさい)さっく IKB (3/11/99)
トラディショナルなスタイルのアクースティック・デュオ、シーファスとウィギンズ。個人的で申し訳ないけど、ほんとに好きなんすよ、わたしゃ。前作は、彼らの音からするとちょっと意外なアリゲーターからのリリースで、ちょっとビックリだったが、今回も引き続き同じレーベルから。前作をこのコーナーで紹介したのは、ちょうどブルース銀座を立ち上げたころだったっけ。ということは、3年ぶりの新作ということですね。 今回も彼ららしい、ピードモント・ブルースを基調とした世界が展開されている。フィル・ウィギンズのハーモニカの表現力の豊かさには、本当に毎回毎回感心させられる。レコーディングの仕上がりも素晴らしく、ギターもハーモニカも音の響きのよさに心地よく酔える。ブラウニー・マギー&サニー・テリーの現代版などと言われる彼らだけど、いやそういう言われ方にも恥じない世界を持った人たちだと思う。現役のアクースティック・ブルースをやる人の中では、ピカいちです、マジで。 かつて、彼らが一緒にやっていたピアニスト、ビッグ・チーフ・エリスから教わったという11.(もちろんビッグ・メイシオのあの曲だ)は、彼の演奏を再現するかのようにピアノを入れた演奏となっていて、戦前のシティー・ブルース感覚のクールな仕上がりとなっている。(3/3/99)
53年のデビュー以来、ヴィージェイが倒産する66年まで同レーベルに在籍したジミー・リード。その間10枚のアルバムをリリース、19曲ものシングルをチャート・インさせる活躍をし、文字通りレーベルをしょって立つスターとなった。 ヴィージェイでのリードを完全版の形でお届けするのが、このボックス。英チャーリーでも同様のボックスがあったが、このPヴァイン盤はチャーリー盤には収録されていなかった未発表テイクも網羅しているのがミソ。全155トラックという豪華版だ。内容に関しては、今更多くを語る必要はないと思う。ヒットメーカーという華やかな言葉の響きとは裏腹に、ぬるま湯に浸かったようなゆるい雰囲気の音で、幅広い層を魅了したリード。そんな音の中にも、都会的なセンスも見え隠れするところが、またたまらないのだ。ギターのエディー・テイラーのプレイも、とくと味わってほしい。彼なくしてリード・サウンドはなかったと言っても過言ではないだろう。 コンプリートとあって中にはいかがわしい雰囲気のトラックもあるが(珍盤と名高い"Plays 12 String Guitar Blues"のトラックも当然入っているし。ボーカル・トラックを消して12弦ギターがメロディーを弾くという、カラオケのような変なアルバムだ)、でもそれも愛嬌。逆にそれらが作られた背景に想いを馳せて楽しむことだって出来るのだ。初回限定で、7インチシングルがおまけで付いてくる。 (2/21/99)
スモーキー・ウィルソンは、ロサンジェルスにかつてあったインディ・レーベル、ビッグ・タウンから70年代に2枚のアルバムをリリースしたが(いずれもPヴァインからCD化されている)、実は彼は3枚目も同レーベルに録音していた。ただ、レーベルも倒産してしまったので、結局これは陽の目を見ずに埋もれていた。それが今回、初めてリリースされたのだ。 リリースとなっている2枚のアルバム(デビュー作の"Blowin' Smoke" - 77年、"Sings The Blues" - 78年)は、そのプレイのワイルドさと、いい意味での田舎臭い味がもろに出た快作だった。幻の3枚目にも当然期待はかかる。未発表曲を全て突っ込んだのだろう。LP1枚分にしてはかなり多い、60分以上という長さになっている。 内容は、やはり期待に充分応えてくれるものだった。1.は、ローウェル・フルソンの"Tramp"を頂戴したもの。ダーティーなリフで、スモーキー流のエグ味たっぷりのファンキーさが炸裂している。エルモア・ジェイムズの5.のストレートなブルースでの活きのよさは、1枚目、2枚目にも通ずるもの。このアルバムの特徴は、よりファンキーな路線が強調されているところだろう。最後の2曲などは、大音量でプレイして、そのグルーヴで踊りまくりたい。13.のハチャメチャなギターなんかしかめっ面する人もいそうだが、これぞスモーキーと嬉しくなる。 77年/78年録音ということで、時代を意識してか異色のディスコ・ナンバー3.なんてものもある。ホーンやフルートまで入って、それっぽい雰囲気は出しているのだが、なんか違うゾ!その時代とのずれ具合がいかにもスモーキーなのだ。いや、これはホメ言葉です。やはり、何をやっても彼の地が勝ってしまっているということでしょう。同様なことは、11.などにも言える。マイナー・キーでクールな雰囲気の曲なのだが、ダーティー&ワイルドなスモーキーに"クール"と言う言葉はやはり似合わないのか。 何故今までリリースしてくれなかったの?と言いたくなる、大注目のリリースです。 (2/21/99)
久々の来日も決まっていたのに果たせず、97年12月、帰らぬ人となってしまったジミー・ロジャーズ。僕は、偶然その数カ月前にライヴで彼の元気な姿を観ていたので、よけいショックは大きかった。 本作は、亡くなる年の春にレコーディングしたもので、恐らくこれがラストとなるのだろう。ご覧の通り、選曲はジミーの代表的なナンバーとブルースのスタンダードで占められていて、ロック畑のアーティスト達を中心としたゲストがフィーチャーされている。このような共演盤は結構あるが、多くはアーティストの個性がぶつかり合って不協和音を生んでしまい、あまり成功していないのが現状だと思う。だけど、本作は率直に言って楽しめた。ジミーはブルースの大物とは言っても、例えばマディやウルフのように存在感で周囲を圧倒するようなタイプとは全く違い、バンドのアンサンブルの中で、スルメのように味を出して行く感じなので、変にゲストとぶつかることがない。いい具合にゲストに華を持たせており、和やかなセッションといった雰囲気となっている。息子のジミー・D・レイン、テッド・ハーヴィー、キャリー・ベルら気心の知れた面々がバックに付いていることも大きいのだろう。ジョニー・ジョンソンのピアノが随所でフィーチャーされているのも嬉しい。やはりこの人がいるとサウンドがしまる。 もちろん、参加しているアーティストがアーティストだけにチェス時代のジミーの音に近いものを求めるのは無理だし、ロックが苦手な人にはピンとこない作品なのかもしれない。だが、ゲスト陣はそれぞれの持ち味を発揮して楽しませてくれる。タジなどは、ごく自然に溶け込んでいる。4.でのジミーとのコーラス・ワークなどはいい感じだ。最近は不調が伝えられるフルソンの5.も目玉だ。調子よしとまでは言えないものの、味はたっぷり出ている。12.は異種交流と言った感じで一部からブーイングも起こりそうだが、まさにツェッペリン的な雰囲気のブルースになっていて、彼らが大好きなわたしゃ、これも嬉しいのじゃ。(1/29/99)
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Text by Masahiro Sumori unless otherwise noted. |