ジョニー・アダムス
1933 - 1998

ニューオーリンズのベテラン歌手、ジョニー・アダムスが1998年9月14日午前11:40、ルイジアナ州バトンルージュの病院で、前立腺ガンのため死去した。66歳だった。ジョニーは、ここ2年ほどガンのため闘病生活を送っており、入退院を繰り返していた。闘病生活中もたまにニューオーリンズのライヴハウスに出演しており、ニュー・アルバムも1ヶ月前にリリースしたばかりだった。ラスト・アルバムとなってしまったその新作"Man Of My Word"は、近年では一番いいと思える内容で、ますますジョニーの死がくやまれる。
ジョニー・アダムスは、本名ラテン・ジョン・アダムスJr.、1932年1月5日ニューオーリンズに生まれた。その美しいファルセットを効かせた唱法から、ファンから"The Tan Canary"(黒いカナリヤ)と呼ばれた。ソロ・シンガーとしてのレコード・デビューは1959年だが、それ以前からソウル・リヴァイヴァーズ、ベシー・グリフィン&ハー・ソウル・コンソリデーターズなどのゴスペル・グループでの活動をしており、その唱法はゴスペルを歌って培われたものと言えるだろう。1968年にSSSレーベルからリリースになったカントリー・バラード、"Release Me"が有名で、古くから彼を知る人の間では、カントリー系のソウル歌手というイメージもあるだろうが、近年のアルバムではブルース、ソウル、ジャズなど幅広いカラーを披露していて、それだけ器の大きい歌手だったということができるのではないかと思う。
デビュー曲は地元のRICレーベルから59年にリリースとなった、"I Won't Cry"。(プロデュースはドクター・ジョン)RICレーベルでは、この他"A Losing Battle"、"Life Is A Struggle"、"Come On"などの曲を発表した。それからはウォッチ、ゴーンといった地元レーベルを始め、モダンなど数多くのレーベルで多くのシングルを残している。
68年には前述の"Release Me"をヒットさせ、70年代には、地元DJテックス・スティーヴンズから「黒いカナリヤ」の愛称をもらったジョニーだが、本当に幅広く知られるようになったのは、ラウンダーからアルバムを発表するようになってからだ。84年には同レーベルからのデビュー作となる"From The Heart"をリリース。その歌声が健在であることを広く見せつけた。86年には、2作目の"After Dark"を発表し、同年7月にはアール・キング、ジョー・ルイス・ウォーカー等とともに初来日も果たした。僕はこのとき初めてジョニーのライヴを体験したが、スーツでビシッと決めたダンディーさもさることながら、本当にカナリヤという愛称に恥じることのない見事なファルセット、それにマウス・トロンボーン(口でトロンボーンの音を出す)が決まっていたのを今でもよく覚えている。
ラウンダーでのアルバムは、ラスト・アルバムまで14年間で9枚を数えた。素晴らしいバラード"I Don't Want To Do Wrong"を含む88年の"Room With A View Of The Blues"、それにパーシー・メイフィールドへのトリビュート・アルバム"Walking On A Tightrope"(89年)は個人的には特に愛聴盤だが、どれも充実作だ。闘病中に録音された新作の内容の濃さに感激したのもつかの間、訃報に接して、残念で何と言っていいかわからない。
僕が最後に彼のコンサートを観たのは去年5月、ジャズ&ヘリテイジ・フェスティバルでのことだったが(上の写真もそのときのもの)、調子はよさそうで特に新曲"One Foot In The Blues"で最後を締めて客から喝采を浴びるなど、現役シンガーとしての存在感を示してくれたのが印象的だった。今年のジャズフェスでは体調の悪化からジョージ・ポーターJr.のバンドのゲストとして数曲歌う程度に留まったそうだが、尚活動を続ける姿勢には感動的なものがあると思う。
ジョニーの死後地元ニューオリンズでは、9月17日にD.W.ローズ葬儀場でジョニーへのトリビュート・コンサートが開かれ、翌18日には同じ場所で葬儀が営まれた。トリビュート・コンサートでは、アラン・トゥーサン、レイモンド・マイルズ、アーニー・ケイドー、マーヴァ・ライト、ザイオン・ハーモナイザーズらが、ゴスペルをジョニーに捧げた。また彼の葬儀では、トレメ・ブラスバンドが賛美歌を演奏し、アーロン・ネヴィルがカルテット・スタイルでジョニーの新譜に収録されているゴスペル"Never Alone"(アルバムでは、アーロンとジョニーのデュエットになっている)を歌い、彼を追悼したということだ。葬儀はこの後、ニューオーリンズのトラディショナル・スタイルのジャズ・フューネラルとなり、ジョニーはルイジアナ州メテイリーのプロヴィンス・メモリアル・パーク墓地に埋葬された。
新作は、軽いタッチのソウルから力の入ったバラードまで、元気な歌声を聴かせてくれていて、早くも僕の愛聴盤となっている。彼が死んでしまった今、このアルバムもどことなくもの悲しく聞こえるが、この素晴らしきラスト・アルバムを聴きながら彼のめい福を祈りたい。 (9/28/98)
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MAN OF MY WORD
(Rounder 11661-2155-2)
- Even Now
- It Ain't The Same Thing
- This Time I'm Gone For Good
- Going Out Of My Mind Sale
- Now You Know
- Up And Down World
- I Don't Want To Know
- Man Of My Word
- You Don't Miss Your Water
- Bulldog Breaks His Chain
- It Tears Me Up
- Looking Back
- Never Alone (duet with Aaron Neville)
Recorded at Ultrasonic Studios,
New Orleans, LA, Feb. - Apr., 1998
Produced By Scott Billington
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その他ジョニー・アダムスのディスコグラフィー
- Heart & Soul (SSS), 1969
- Stand By Me (Chelsea 525), 1976
- After All The Good Is Gone (Ariola 50036), 1978
- From The Heart (Rounder 2044), 1984
- After Dark (Rounder 2049), 1986
- Room With A View Of The Blues (Rounder 2059), 1988
- Walking On A Tighrope: The Songs Of Percy Mayfield (Rounder 2095), 1989
- The Real Me: John Adams Sings Doc Pomus (Rounder 2109), 1991
- I Won't Cry (early recordings) (Rounder 2083), 1991
- Good Morning Heartache (Rounder 2125), 1993
- Best Of New Orleans Rhythm & Blues Volume One (Mardi Gras 9007), 1994
- The Verdict (Rounder 2135), 1995
- One Foot In The Blues (Rounder 2144), 1996
- Reconsider Me (Charly)
- Christmas In New Orleans (Hep Me 158)
- The Many Sides Of Johnny Adams (Hep Me 159)
- Sweet Country Voice Of Johnny Adams (Hep Me 160)
- Old Flames (P-Vine PLP-732)

  
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