• 5月5日(日)


    早かったというべきか、長かったというべきか、ジャズフェスも最終日が来てしまった。この日も天気はよく、結局フェアグラウンズでは一度も雨に降られなかった。これってかなり運がいいのではないだろうか?

    ポラロイド・ステージ側の入り口から会場に入ると、丁度ウィリー・ティー(Polaroidステージ、12:30)の演奏が聴こえてきた。軽快なのりで"Teasin' You"をやっていた。あのようにいかにもシンセっぽい音で弾いているのをみて、昔からのファンには解せないと感じる人もいるのかもしれないけど、僕はまあいいんじゃないかなと思った。

    続いてジョニー・アダムス(Ray Banステージ、12:20)を観に移動。久しぶりに観た彼は相変わらずという感じだったけど、ちょっとみかけはふけちゃったかなぁ。そんなこといってもしょうがないけどね。バックを務めていたジュリアス・ファーマー&ザ・ファーマーズ・マーケット・バンドは何者かは知らないが、手堅くサポートしていた。僕がステージに着いた頃にはジョニーのライブは半分以上終わっていたので、充分観れなくてちょっと残念。

    この日絶対観たかった人の一人がこの次に観たケイティー・ウェブスター(House Of Bluesステージ、13:40)。数年前に彼女は発作で倒れ、暫くアルバムも出していない。どの程度回復しているのか、観て確かめたかったのはファンとしては自然な心境だろうと思う。以前観たときは力強いブギウギ・ピアノが印象的で、それにいろんな音楽の要素を織り込んだ懐の深さにも感心した。

    まずバックを務めるヴァスタイ・ジャクソン・バンドが何曲か演奏。因みにこのヴァスタイ・ジャクソンという人は、ブルースの若手としてソロでも期待されている人だ。ちょっと、ギターがうるさいという気がしないでもないが、力のこもったプレイに満足。続いて"Who's Makin' Love"のイントロにのって、お待ちかねのケイティー登場。やはりかなりやつれたなぁ。かつてのビッグ・ママといった風貌は、影もない。おまけに、ピアノを弾かないで歌ってるんだから別人みたいだ。

    続いての曲からはピアノに向かった。右手はある程度弾けているが、左手が殆ど動いてない。ヴァスタイがそんなケイティーを必死でサポートする姿が僕には印象的だった。個人的には大好きなケイティーのこのような姿を観るのは正直言ってかなり辛かった。でも、同時にこんな逆境の中で、尚頑張る彼女に感動したのだった。ケイティー頑張れ!

    コンゴ・スクウェアの辺りで、しばしぷらぷら。エスニックな雰囲気の漂うここら辺には、おもしろい店とかがたくさん出ている。今年のテーマである「ハイチ」に因んでハイチ・パビリオンなんていうものも用意されていて、ハイチのアート展などが鑑賞できる。出店で、日本の友人のお土産などを観たりした。アフリカの打楽器、マルディグラ・インディアンの衣装など、色々売っていて見出すときりがない。


    なんてぼーっとしてるとザッカリー・リチャード(Polaroidステージ、14:55)の時間が来たので移動。この人がこんなにいろんな楽器を弾く人だったとは、このとき初めて知った。アコーディオンから始まり、次はピアノ、そいで次はフォーク・ギター、更に次はエレキ・ギターと忙しない。でも、音はよかった。なんか和んでしまうのでした。結構この人ってポップで、フォークっぽくもあると思うけどどうでしょう?

    と、この日はここら辺までは比較的のんびり観てきたような気がするが、さすが一大イベントの最終日である。そうあっさりは終わらない。これ後のスケジュールがすごかった。まずは2作目をだしたばかりのニューオーリンズ・クレズマ・オールスターズ (Bellsouth Tent、15:15)を観た。彼らは、その名の通りクレズマというユダヤ人の伝統的な音楽を演奏するニューオーリンズのバンドだ。でも彼らって伝統だけでは終わらない個性を持っていると思う。スカやニューオーリンズのブラスバンドなど、いろんな要素が彼らの音楽の肥やしとなっているのだ。どこまでマジなのか判らないところもあるが、演奏はとにかくうまい。でも、途中から乱入してきてステージで暴れていたニイちゃん、クレズマ・オールスターズのTシャツ着てたけど、彼もメンバーなのかな?変なヤツだった。観客席にカップを投げ込んでいた。昨日のディキシー・カップスのカップスに続いてこれも欲しいなと思ったが、こっちには飛んでこなかった。残念。このときやっていた曲は、クレズマのスタンダード(?)の"Ot Azoy"。

    この時間帯に重なっていた人は、ネイザン&ザ・ザディコ・チャチャズ(Fais Do-Doステージ、15:35)、ホワイト・イーグルズ(Congo Square、15:20)、ボビー・マーチャン(House Of Blues ステージ、16:00)、デイブ・マシューズ・バンド(Ray Banステージ、15:25)、マーヴァ・ライト(Polaroidステージ、16:15)などなど。く、く、く、苦しい選択だ。結局殆どをつまみ食いする形になったが、マーバとデイブ・マシューズは観ることが出来なかった。観た人たちもゆっくりは観てない。ボビー・マーチャンは、なんか元気がなかったなぁ。腕に点滴のあとのようなテーピングがしてあった。病気でもしてたのかな?

    それに対して元気一杯だったのはネイザン&ザディコ・チャチャズ。来日公演でもあのパワーには驚かされたが、相変わらずといった感じ。日本には来なかった彼のジュニアも一緒にステージに立ってたよ。しかし、このバンドのウォッシュボードのニイちゃんの暴れかたはマジですごいね。

    大トリに突入する前にゴスペル・テントでマイティ・クラウズ・オブ・ジョイ を 楽しむ。テントはすごい人で外まで溢れている。僕らは人をかき分け前の方まで行ってみた。以前彼らを観たときはTシャツ姿だったが、この日は赤いスーツでキメていてカッコよかった。ジョー・リゴンの低音のボーカルも迫力があって魅力だが、やはり感動的なのはソプラノ(というのかな?)の人の声だ。あんなきれいなファルセットはいったいどこから出てくるのだろう?

    さて、最終日大トリに突入!やはりジャズフェスのトリというとネヴィル・ブラザースを連想する人も多いだろうが、僕らはハウス・オブ・ブルースで彼らを観ていたので、ここでは観ないことにした。いくつかのステージをハシゴしたのだが、やはり最大の収穫は、アール・キング(House Of Bluesステージ、17:45)が観れたこと。彼のこの日のステージは、結局最初から最後まで観た。彼を観るのは初来日のときに観て以来だから、丁度10年振りだ。時の経つのは早いなぁ、などとつい年寄じみたことを言ってしまう。

    初来日公演の会場は、東京・渋谷のライブインだった。僕が渋谷駅から会場に向かっていくと、逆側の路地から緑色のスーツを着た黒人が手にワンカップ大関を持ってやってきた。「もしやこの人は?」とは思ったのだが、結局その彼と一緒のエレベーターでライブインまで上がった。後でライブをみたとき、そのままの格好でアール・キングが現われたのだった。いやぁ、なつかしいなあ。

    ジャズフェス会場でみたアール・キングは、殆ど以前のままだった。お世辞にも器用とは言えないステージでのそぶり。ギターのチューニングは合ってないし、ギター・ソロに熱中するとその後のボーカルがオフマイクになってしまうし、と書いていくとまるでいいところがないようだが、彼はそういう不器用さでさえ魅力となってしまう、不思議なキャラクターを持った人なのだ。でも、この人って本当にいい曲を書くと思う。それは本当にお世辞抜きで天性の才能です。

    この日の曲は"Trick Bag"から。ゆるゆるしたファンキーさがたまらん!その後、"It All Went Down The Drain"など、ブラック・トップ盤収録の曲を中心に展開していく。中盤ひとつのハイライトは、ギター・スリムの曲を演ったときのこと。演る前にアールは、生前のスリムとの思い出話しをする。「スリムは言ったよ、『俺がお前より先に逝っちまっても、俺の曲を演ったりするんじゃねぇぜ!』ってね。『もしそんなことしようもんなら、俺は天からお前のギターをいじって、張ってある弦を全部とっぱらってやるからな』っていうんだぜ。でも、俺はヤツを心から愛してる。ヤツとはいい思い出がたくさんあるんだ。俺の気持ちはきっと天の彼にも届くはずだよ。」彼がそう言って演ったのはスリムの十八番"Things That I Used To Do"。カッコいい!他に何が言えるだろう?ラストは、"Let The Good Times Roll"、"Big Chief"と続いた。どっちもいろんな人がカバーして有名になっているけど、彼がやるとまたひと味違うんだよね。マイペースで独自の世界を作り続けるアール・キング。彼の魅力は不滅です。感動しました。因みにこの日バックを務めたバンドには、ブラック・トップで活躍しているサックスのマーク“カズ”カザノフもいた。そんなに若くはないのだろうが、「ひとのよさそうな大学生のニイちゃん」的な風貌だった。

    アールのステージが終わったのは18:45頃。まだ、他のステージでは演奏が続いている。というわけで即移動!まずジャズ・テントに向かう。あのドク・チータムの演奏をちょっとでいいから聴いておきたかったのだ。「速報版」で書いたが、ルイジアナ・ミュージック・ファクトリーにスヌークスを観に行ったとき、入り口付近で彼がサイン会を開いていた。そのとき間近でその姿は拝見したんだけど、やっぱ演奏を聴かにゃね。かなりの高齢であろう彼は見た目はヨボヨボしているところもあるが、そのトランペットの音色がしっかりしているのには感心した。彼の吹き方も独特だな、しかし。天を仰ぐようにペットを上に挙げて吹いてる。ああいう吹き方をする人は、僕は他にあまり見たことがない。

    ドク爺さんを拝んだのもホンのちょっと。ボビー・ラッシュ(Congo Square、18:00)もちょっと観ておきたかったのだ。しかし、ハウス・オブ・ブルース・ステージならともかくコンゴ・スクエアで演るなんて、ボビー・ラッシュもちょっとイロもの扱いされてんのかな?彼は広いステージをこれ見よがしに暴れていた。ギターのヤツもガンガンソロを弾いたらその勢いで、ストラップでギターをぐるんぐるんまわしちゃうし。ラッシュの勢いはすごい。観に来てよかった。エッチな踊りをするダンサーのおネエちゃんが一人しかいなかったのはちょっと淋しかったが(以前見た地元ミシシッピーのクラブでの映像では、確か3、4人いた)。彼の持ち時間は7:00までだったのだが、司会らしき人が締めのコールを始めるとラッシュはムッとした表情で彼に何か怒鳴っていた。聞こえはしなかったがきっと、「バカやろう!俺はまだ演るんだ。勝手におめぇの判断で終わらそうとすんじゃねえ」とかなんとかいったんでしょうか?結局、彼は7:15くらいまで演ってくれた。ちょっとしか観れないと思っていたのに、これは嬉しかった。

    というわけで、とうとう終わってしまったフェアグラウンズでの6日間。今年はラインアップが小粒だなんて声も聞かれたが、いやいやどうして。確かにアリサもいなければ、グラディスも来てなかった。でもあれだけの豪華な地元のオールスターが揃えば、それだけでも僕は納得できる。「来年もまた...」などと考えつつ会場を後にしたが、実はまだこの後、(これが自分にとってホントのトリ)ブラック・トップのブルースアラマ・ライブが控えていたのだ。あらま?


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