4月26日(土)


本日のメニュー
Earl King (Polaroid, 12:20 - 13:10)
Little Freddie King (Bellsouth, 13:45 - 14:45)
Larry Garner (House Of Blues, 13:35 -14:30)
Keb' Mo' (House Of Blues, 14:55 - 15:55)
Zap Mama (Congo Square, 15:05 - 16:05) 少しだけ...
Allen Toussaint (Polaroid, 15:00 - 16:00)
Terrance Simien & The Mallet Playboys (Polaroid, 16:30 - 17:30)
Cubanismo (Congo Square, 16:40 - 17:40)

フェスティバルの初日は4月25日(金)だが、昨年同様僕らはこの日の夕方現地に着いたので、土曜日からの観戦となった。聞いた話だと金曜日はとても寒く、雨も降ったり止んだりで滑り出しから散々な天気だったそうだ。おまけに風も強く、会場のテントもかなり揺れていたとか。思わぬ天気に観客はふるえ上がり、グッズ売り場では初日だけでフェス前半分のトレーナーを完売してしまったということ。土曜日行ってみたらもうなかったもん。僕らはこれを「トレーナー特需」などと呼んで話のネタにしてたけど、ハッキリ言ってこの天気で観客動員数はガタガタだもん。そんなこと言って喜んでいる関係者はまずいなかったでしょうね。

で、僕らにとって初日の土曜日。この日の状況も甘くはなかった。朝10時過ぎ、どんよりして小雨もぱらつく優れない天気を見つめながらも、せっせと身支度をする僕らの部屋に電話が...。毎年ジャズフェスに来ているロサンジェルス在住の友人のK氏からだった。彼が言うには、夕べの暴風雨でフェスティバル会場では、テントがいくつか吹っ飛び、電気系統もやられてとてもまだ開場出来る状態ではないとのこと。スタッフをやっている彼の知人の言うには、どんなに早くても2時までは開場できないと言うことだった。いきなりエラく気が重くなってしまった。だって、12時過ぎからは大好きなアール・キングの演奏が予定されているのだ。うーん、困った。このまま2時近くまでホテルに待機するのか。

とりあえず、同じホテルに泊まっていた北海道のT夫妻(去年も会場まで車で送ってもらったりと大変お世話になっています)に電話をしてみる。彼らもそういう状況は聞いていなくてみんなで「困った」と唸ってしまった。でも、ホテルでうだうだしていてもしょうがない。とりあえず、様子を見に我々は会場へ向かった。

フェアグラウンズ入口に着くと、門のところはたくさんの人で混雑状態だった。やっぱりまだはじまってないようだ。スタッフらしき人は門の向こう側には見えるが、手前の群衆の中にはいないようだったので、そばの人に様子を聞いてみた。「いつごろ開場するのかなって?さあねぇ。主催者は何も言わないし、うちらもこうやってボーッと待ってるほかないよ」みんなウンザリしている感じだ。時刻は正午過ぎ。地元のラジオ局WWOZを聞いてみると、もうまもなく開場すると言う。でも入り口はそんな雰囲気は全然ない。中止になるんでないの?そんな、暗い気持ちが頭をよぎる。せっかく、日本から来てるのに。しょうがないから、路上に車を停めて暫く車内で待機する。

12時半過ぎ、門のあたりで動きが...。どうやら開場したらしい。慌てて僕らも荷物を持って入り口へ。なんとか中止にならずにすんだようだ。やれやれ。会場に入るともうあちこちから音が聞こえてくる。開場と同時の開演なのか。そりゃ、スケジュール押してるもんなぁ。通りすがりのステージを見ながらスケジュール表と照らし合わせてみると、どのステージも2バンド目が演奏していた。ということは、トップバッターはキャンセルを食らったのか。原因が原因だけにしょうがないけど、かわいそうだな。

おー、ボーッとしている場合ではない。ということは、アール・キングも始まっているということではないか!と猛ダッシュをかける。ポラロイド・ステージの方からは"Trick Bag"のリフが聞こえてきた。ちょうど始まったとこらしい。よかった!曲目はブラックトップのもの中心でほとんど去年と同じだったが、それでもわたしゃ彼を無事拝めて幸せです。でも、時間が押しているせいで演奏時間が40分弱くらいしかなく、もの足りなさは感じたのも事実。今年は彼はあまりライブハウスへ出演していないようだったので、ここで観ておかなければ、と思っていたのに天気とは無情なものです。

続いてラリー・ガーナー(HOBステージ)を観るので移動。まだ、雨はシトシト降っている。途中、ベルサウス・テントでリトル・フレディー・キングの演奏をちょっと覗いていく。テントの中は超満員状態でスゴイ盛り上がりようだ。雨の日はテントで演奏する人が得だな。やはり、みんな雨宿りが出来るテントに集まるもん。彼の演奏はゴキゲンでこりゃ盛り上がるわと思った。のりまくるぜ!ギャギャギャギャーン、と弾きまくるぜって感じだ。ハープの人もなかなかいいプレイをしていた。

ラリー・ガーナーは地味ながらなかなかいいアルバムを作っていたので、ライブは一度観てみたいと思っていた。実際みた感じでは、ちょっとクールに決めていたアルバムでの印象よりはずっとブルージーだった。時間が短かったのでもう少し聴きたいなとも思ったが、演奏はなかなかよかったのでまずは満足した。"Keep Playing The Blues"では、延々と「ブルースたぁ、こんなもんだぜい!」というような語りを間に挟む。この人、本当によくしゃべる人だ。因みにハープをやっていたのはシカゴ在住の日本人のワビさんという人。ステージが終わってちょこっと挨拶したが、ラリーがツアーするときだけ、彼のバンドに入るらしい。

お次は、同じステージでケブ・モーだ。雨が強くなってきた。休憩時間中にだんだん人の数が増えてくる。ケブ・モーが出てきた頃には、自分の前には、傘、傘、傘、でステージなんか殆ど見えない。ううう、油断していた!ケブ・モーっていつからこんなに人気者になったのだろうか。前述のワビさんが言うには、「ケブ・モーさんねぇー。どこへいってもスゴイ人気ですわ。特にヨーロッパね。あっちじゃ、フェスティバルのトリっつぅたら彼だもんね」。いやー、いつの間にビッグになっていたんですね。でも、ステージは相変わらずのマイペースな雰囲気だった。アクースティックの弾き語りスタイルは、来日時と同じ。セカンド・アルバムの曲が中心となった展開が違うところだ。演奏はよかったのだが、この頃天気は最悪だった。雨も風も強くなり、もっといやなのは雷がガンガン鳴りだしたことだった。それも、かなり近くに落ちまくっていたようで、おっかなくて落ち着いて聴いてられたもんではない。ケブも歌いながら、雷が落ちると"OH!!"と驚いていた。残念だったのは、この天気のせいか、演奏に雑音が入ったり音が途切れたり、サウンドの面で散々な状態だったことだ。おまけに傘が邪魔でろくにケブを見ることもできない。暫く聴いたあと、耐え兼ねて退散した。

がしかし、「耐え兼ねた」ことだけが移動した理由ではなかったのだ。この時間帯は、ケブとアラン・トゥーサンが見事に重なっていて、どちらを観ようか迷っていたのだった。途中コンゴ・スクウェアのザップ・ママをかすめて、トゥーサン父さんのいるポラロイド・ステージへ。ホーン入りの豪華なバンドはビシッと決まっていてカッコいい。曲はnynoのアルバムの者が中心だった。

歌詞が異様にモダンな"Computer Lady"なんかも結構いい感じ。"Sweet Touch Of Love"を聴きたかったが、この日はやらなかったみたい。でも、"Certain Girl"をやってくれて嬉しかった。途中、雨の中にいる観衆に気を遣ってか、彼が、「あいにくの天気だけど〜、思ったほど悪くないんじゃない?」なんて茶目っ気が入った即興の弾き語りをしてたのが面白かった。

実は、僕以前はアラン・トゥーサンという人がどうも苦手で、あまり熱心に聴いたことはなかった。なんというか、ポップっぽすぎるというか、垢抜けしすぎているというか、そんな印象を持っていた。(それもかなり偏見であることはわかっているのだが。)そんなこともあって、彼のライブを観るのはこの日が初めてだった。でも、こんないいライブを見せてもらっちゃ、父さんごめんねと言うしかないなあ。

トゥーサンのステージが終わった頃、あれほど激しかった雨もほぼ止んだ。他のステージも気にかかりながらも、うちらはテレンス・シミエンを観るためそのままポラロイド・ステージに居残る。昨年のフェスティバルで観そこねていたので、絶対観たいと思っていた。僕は89年に一度、ロング・ビーチ・ブルース・フェスティバルで観ているのだが、かなりノリノリのライブだったのが印象に残っていた。久しぶりに観たテレンスは以前よりかなりでっぷりしていた。ビーズを投げながら客を煽ったり、客の中にダイブしたりと、かなりドタバタ喜劇のようなステージでちょっとビックリしたが、楽しかった。 この人、暴れ回っていてもどこかふ抜けてて(すまん!)、全然こわもてなところがないところが独特の個性となっている。楽器を抱えて客席に乱入したはいいけど、何も弾かずに客の頭上をつたって吸い込まれていくその様(しかもハダシ)は、かなりマヌケな雰囲気を醸し出していた。これって褒め言葉なんだけど、そうは聞こえないかな?前みた印象とはかなりちがっていたけどよかったです、いやマジで。仕草+ヘア・スタイルが吾妻光良氏そっくりという噂も。(そんなんばっかだな)

テレンスを堪能してさて今日のシメは何かな?と考えたが、ちょっとひとつに絞れなかった。ジミー・ジョンソンカウボーイ・マウスガト・バルビエリもちょっとのぞいてなんて考えていたが、コンゴ・スクエアのそばを通ると気持ちのよいラテンのリズムが...。トランペッターのヘスス・アレマニ率いる、キューバのバンド、その名もクーバニスモの演奏だった。余りにもその音が気持ちいいので、足を止めた。

このとき時間は17:40頃。このバンドの終演予定の時刻だった。「ああ、もう最後の曲だな。もっと聴きたかったけど、残念。」と思っていたが、いやまだまだ、やったのです。18:00からは同じステージで、ジーン・ナイトがやることになっていたのに、結局クーバニスモは18:30過ぎまで演奏したのでたっぷり観ることができた。この日は、開演が遅れたこともあってスケジュールがメチャクチャだったようだ。多分スケジュールが押していたので、ジーン・ナイトのこの日のライブはキャンセルになったのだろう。彼女は後半のフェスでやっていたらしい。

しかし、このクーバニスモ。ピアノのアルフレド・ロドリゲスを始め、キューバのトップ・ミュージシャンを集めたオールスター・バンドで、演奏が悪いわけがない。彼らのやっているソンというタイプの音楽は、サルサほど音は新しくないが、腰で感じられる熱いダンス・ミュージックだ。ロドリゲスの弾くピアノがバンドのリズムにグルーヴを与え、それにホーン・セクションが強烈に入ってくる。アクースティック・ギターも気持ちよかったな。泥のぬかるみもお構いなしに踊り狂っている人も結構いた。

バンドのメンバーのひとりが、「ここまで来るのは楽ではなかったけど、来れて本当に嬉しい」とコメントすると、歓声が起こった。そうだよね。アメリカと最も仲の悪い国キューバからよくきたな、と感心した。因みに彼らのアルバムは、ハニバル(ライコディスクの傘下)から2枚出ている。(96年の"Cubanismo"と出たばっかりの"Malembe")内容はどちらも最高。この私が保証します。

熱いキューバの音楽を堪能し、まだ30分位時間があるので、他のステージに行こうと歩きだした。フェイ・ドー・ドーでのジュード・テイラー&ザ・バーニング・フレイムズは、ハードでブルージーなザディコを展開していた。でも、これはほんのちょっとだけ。もうステージは終盤だったから。うーむ、残念。

ジミー・ジョンソンとサンタナを少しずつのぞこうと思いまた歩きだすが、残念ながら、もうどちらも終わってしまったようだった。予定ではまだやっているはずだったのだが、前述の通りスケジュールがメチャクチャだったもので、仕方ないか。聞いたところだと、レイ・バン・ステージなどはこの日予定されていた5バンドのうち実際やったのは2バンドだけだったとか。そのためにトリのサンタナが繰り上げになって、予定より相当長くやったらしい。それでも、演奏し始めた時間が早かったから、スケジュールよりは30分近く早く終わっていたということだ。

フェスの終演予定時刻は7時。でも、18:40頃にはこの日は殆どのステージが終わっていた。ポラロイド・ステージからカウボーイ・マウスの演奏が聞こえていたが、そっちまで行くのも面倒になりこの日は、これにてお開きとした。ちょっと、あっけない幕切れか。でもクーバニスモを堪能したから今日は満足だ。



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