CONCERT REPORT

1997年のフェスの感想などを少々...



Flyer: Park Tower 97
JELLY ROLL KINGS
ビッグ・ジャック・ジョンソンがいなかったので、地味ではあったけど、マイペースでいい雰囲気を出していたと思います。フランク・フロストが、登場するなりキーボードを弾きだしたのでまさか、最新盤のようにハープはあまり吹かないなんてことは...とちょっと嫌な予感が脳裏をよぎったけど、そんな心配は無用でした。その後は、ずっとハープ吹いてたもん。やってる曲は特に変わったアレンジもないただのブルースなんだけど、フロストのハープはピカいちだった。"Scratch My Back"でのゆるいファンキーさも最高。サム・カーは、黙々とたたいていたけど、やはり個性的でした。曲の終わりに入るスネアのオカズに「あー、やっぱこの人でなくちゃね!」と嬉しくなったのでした。ベースとギターの2人のサポートぶりもよかったと思います。特にギターのフレッド・ジェイムズの好サポートが光りました。見た目もギターのスタイルもジミー・ヴォーン系な感じでしたけど、やはりフロストのソロ作にも参加している人でもあり、フロストのことをよく理解している人だと感じました。


THE CARTER BROTHERS
Pヴァインもすごく力を入れていた今回の彼らの来日。本人たちも遠く離れた日本の地で、こんなに歓迎されるとは夢にも思っていなかったようで、本当に幸せそうで、それが周囲にも伝わってきて、心が暖まりました。日本のファンの歓迎に応えようと、精一杯のステージを見せてくれて、目頭が熱くなったなぁ。ローマンは、どうやら張り切りすぎたようで、初日のリハで既に声を嗄らしてしまい、特に土曜日は声がガラガラだったのは残念ではあったけど、それでも手は抜かない。声が思うように出なかったら、気力と踊り(笑)で見せる。その心意気に感動したのでした。(日曜日は、やや声が回復しました。)アル・カーターのギターは、フレットが飛ぶときとかよく1フレットくらいずれるのでひやひやしたけど、彼の人柄が演奏に全面に出ていてすごくよかった。うまいギタリストはゴマンといるけど、彼はやはりひとりだけだよ。今回のサポートメンバーは、ジェリー・ロール・キングスのギターとベースの2人も含めて即席のメンバーだったそうで、そのため演奏されるレパートリーがあまりなかったけど、新作のナンバーを曲順通りにやっていく律義な構成には彼らの生真面目さを垣間見た思いでした。また、是非来日してほしいと思います。

The Carter Brothers
タワーレコードのイベントでのカーター兄弟。沢山の人で賑わいました。
(12月11日)

R.L. BURNSIDE
前回の来日公演がレストランでショボく演奏しているという設定で、ファンとしては情けないものがあったので、今回の公演は待望のものでした。実際、音量大きめの演奏は迫力があった。R.L.もサイドのケニー・ブラウンもいい音してました。前半はオープンチューニングで比較的トラディショナルなスタイルのブルースを中心に攻めていてこれは、まず言うことなし。後半は"Going Down South"、"Snake Drive"でぶっとばし、パンクな面も全開だった。こういう音には会場で会った人にも賛否両論があり、これを受け入れられるかどうかが一種「踏み絵」のような状態になっていた気もするが、個人的には大満足。中盤でのR.L.の弾き語りもカッコよかった。彼の年期を見せ付けた。最終日に飛び入りしたハープのNOBUという人、最初に吹き出したときは結構いい雰囲気だったんだけど、最後の"Snake Drive"で、ギターと一緒にリフをユニゾンでやっていたのは、ちょっと余計だったと思う。あの曲はギターがドライブしてナンボという曲だし、ギターの勢いに水を差しているようでした。でも、お祭り最終日だし、僕はよしとしたいです。


PHILLIP WALKER
この人がここまでいいとは、はっきり言って驚いたというのが正直なところ。ギターのフレーズも冴え渡っていたし、ギターの音自体が本当によくって、ギブソンのES-335系の音としては理想系だった。リードもいいけど、9thのコードを使ってのバッキングがまたいいんだよなぁ。見た目は老けた感じはしたけど、声も若々しくて文句のつけようもないという感じでした。他のアーティストは毎日ほぼやっている曲はおなじだったけど、この人だけは毎日やっている曲が結構入れ替わっていて、構成/進行に工夫が感じられた。初日は多少ルイジアナ系のサウンドも織り込んだけど、2日目は徹底したウェストコースト・サウンド、最終日はレイ・チャールズの"Cryin' Time"など甘めなものも挟み、また違う雰囲気を作っていた。"Hello My Darlin'"も軽快でよかったなぁ。あと最終日にはやらなかったけど、バンドなしのギター弾き語りでのライトニンの"Hello Central"はシブいぜ!ギターのスタイルが完全にライトニンになっていた。やはり、テキサスでギターを学んだ人だなって思いました。最終日には、アンコールで今回のフェス出演者が多数乱入しての"Sweet Home Chicago"ジャムなんてのもあり、これはこれで面白かった。(でも、シル・ジョンソンが盛り上がってしまい、なかなか終われずに何と30分もやっていた)このジャムでは、ハープを持ってきたシルが途中でウォーカーとギターとハープのとっかえっこをやるという場面もあり、フィリップ・ウォーカーがハープを吹くという、珍しい光景が見られました。結構ちゃんと吹いていたのには、感心しました。でも、どたんばでのジミー・ロジャーズのキャンセルのために急遽実現したウォーカーの来日。すごく得した気分になったのは僕だけではないんじゃないかな?


SYL JOHNSON
この人の徹底したエンタテインメント精神には、本当に感服しました。転がりでるような勢いでステージに登場し、終始ステージをところ狭しと暴れまわるあの勢いをもってすれば、多分彼を知らなかった人も楽しめてしまったんではと思います。選曲はブルースが多めで、トワイナイト時代のソウル系の曲が殆どなかったのが惜しいといえば言えなくもないですが、内容はよかったので思い残すことはなにもありません。2曲目から"Take Me To The River"でガンガンのせてくれて、毎日彼のステージが終わったあとはもうクタクタになってました(笑)。"Is It Because I'm Black"をやってくれたのは、嬉しかった。まさかやるとは思わなかったし。"Miss Fine Brown Frame"もレコードよりパワフルでした。

今年のフェスティバルは、出演者それぞれが違った個性を発揮していて皆甲乙付けがたかった。タイプも皆違うので、バラエティーにも富んでいた。同じ「ファット・ポッサム」という枠のR.L.とジェリー・ロールも内容は好対照だったし。敢えて言えば、「ピンチヒッターがフェスをさらった」という印象を持った。実際、フィリップ・ウォーカーとシル・ジョンソン(フェントン・ロビンソンの来日中止に伴う代役)の内容の濃さは、いくら強調してもしすぎることがないほどだったと思います。

さて、今年も堪能しました、パークタワー。来年もそのまた次の年も、ずっと続けて行ってほしいと思います。

(陶守 正寛 Dec. 16, 1997)




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