ブルースからはちょっと離れてしまうかもしれま
せんが、スラング辞典の紹介をさせて下さい。
ご存知の方も多いかと思いますが、R&B/
ソウル/ラップのライターや訳詞家として活躍
されている泉山さんの書き下ろしの辞典です。
構想7年(!)とのことですが、ヒップホップ
カルチャーから生まれたスラングを、豊富な
アーティスト取材や海外取材(LA,NY etc)のなかで収集してまとめた、まさに力作です。
ABC順に載っている単語には意味、発音や語源
などの他に、例文もついていて、これが
なかなかおもしろい。
たとえば、歌のタイトルや歌詞の中で
使われている例も多く取り上げられていて、
音楽ファンにはたまらない(笑)内容でしょう。
ラッパーたちが会話の中で好んで使う言葉
以外にも、アフリカン・アメリカン社会の歴史、背景を理解できるように、人物名や団体名
などもとりあげたとのこと。
付録で、関連文献や雑誌の紹介、歴史年表
などもついていて、
「最初から最後まで通して読んでも面白い辞典」です。
そういえば、発音についての考察の中の
「隙っ歯説」(笑)はなかなかスゴイです。
さて、その付録で、ラップのライヴでの
コール&レスポンスの決まり文句等も取り上げられているんですが、泉山さんに
訊かれてしまいした。
「ブルースのライヴでは、皆なんて言うの?」。うーん、普段なんて言ってるかなあ??
田中 智子
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いや、この本ってそんなに
ぶるぎんの趣旨から外れるもん
ではないよ、多分。確かに焦点が
当てられているのは、黒人英語とは
言ってもラップ、ヒップホップを
中心としたものだけど、
ブルースの歌詞に登場する
表現も現に載っているし、
ブルースをアフリカン・アメリカン
の音楽として見た場合、
その言語感覚を知ることは、
決してムダではないはずです。
でも、スラング辞典と名の付くもの
を見るといつも思うけど、
こういうものをまとめるのって
大変だろうなあ。
何せ、スラングってときとともに
流行ったりすたれたりするものだし、
「今」の言葉を載せてこそ、
意義があるもんだしね。
急いで一機に調べてまとめて執筆…。
わあ、大変だあ。
ご苦労様です、泉山さん。
辞書としては、決して語数は多くは
ないけど、その分読みもの的に
面白くなるよう工夫されています。
巻末の関連文献紹介はいいですね。
陶守 正寛 |