ニューオーリンズで観たスヌークス・イーグリン


スヌークスと言えば、初来日公演からまだそう時は経っていないが、このジャズフェス旅行でもフェアグラウンズでの公演を始め、3回も観てしまった。と言うわけで、来日公演レポートに続いてジャズフェスでのスヌークスも別枠でレポートしちゃいます。えこひいきのようでもあるが、実際全くその通りでそれ以上の理由は特にない。だって好きなんだも〜ん。さてっと、バカばかり言ってないで早速本題に移りましょう。



4月28日:フェアグラウンズ(Polaroidステージ、13:00)

意外にも早い時間に登場。このおかげで、僕は普段より早目に会場に着こうと、朝はちょっとバタバタしてしまった。午後1時なんて全然早くない、と思った人は私が夜に何をしていたか、夜の部のレポートで観てやって下さい。

因みに、僕がニューオーリンズに到着する前の4月25日、スヌークスがハウリン・ウルフというライブ・ハウスに出たときは、ベースはジョージ・ポーターではなかったそうだ。何でも、多忙なジョージはうっかりミーターズとダブル・ブッキングになっていたらしい。でも、28日のフェアグラウンズにはジョージがしっかりいた。ドラムスは、来日公演にも同行した“ジェリービーン”アレクサンダー。後は、キーボードはいなかったが3ピースのホーン・セクションが付いていた。

地元のラジオ局、WWOZのTシャツと帽子を身に付けたスヌークスは、何故か紫色のヘヴィー・メタル系デザインの奇妙なギターを持って現われた。よくみると、フロイト・ローズらしきものまで付いてる。このギターがチューニングが合ってなくて、結構本人も苦しんでいた感じだった。おまけにフロイト・ローズが付いていては、チューニングも合わせにくい。結局途中で彼はギターを代えた。このとき持ってきたのは、お馴染みのナチュラル・カラーのストラト。結局あの最初のギターは、何だったのだろうか?借り物だったのかな?

新作からの選曲を中心にせめるステージの進行は来日公演を思い起こさせるのり。でも、やや違いもあった。例えば、ここで演った"Oh Lawdy, My Baby"あたりは日本では演ってなかった。"Talk To Me"も演奏されたが、ここではホーン・セクションをフィーチャーした前奏が入った。ジョージ・ポーターがホーンの指揮をしていたのが面白かった。

率直なところ、このホーン・セクションも全体的にまとまりが悪く、スヌークス本人のギターのチューニングの問題もあって、この日のライブはスヌークスにしてはどうもしっくりいっていない面もあった。それでも尚、彼のあの個性は充分堪能できたし、聴衆も盛り上がっていた(もちろん僕も)。また、彼の茶目っけも相変らず。曲間の喋りで、マイクに口を付けて歌うと文句を言われるという話をしていて、彼は、「じゃあ、今度からマイクにコンドームでも付けたろうかな、ヒヒヒ」などと奇妙なことを言って辺りを和ませるのだった。



4月29日:ミッド・シティー・レーンズ



4133 S. Carrolton Ave., New Orleans, LA 70119
Phone: 504-482-3133
Cover Charge: $10.-


フレンチ・クオーターから車で10分位のところにある、このミッド・シティー・レーンズというクラブは、shigekoさんのジャズフェスHPなどでも触れられているが、ボーリング場とライブ・ハウスが無理やりドッキングした感じの奇妙な場所だ。あのナショナル・ジオグラフィック誌に「世界の秘境」のひとつとして紹介されたこともあるらしい。なんか、それも妙に納得できるスペースだ。89年に現在のオーナー、ジョン・ブランチャー氏が、ボーリング場の客寄せにライブを始めたのが大受け。現在では、ニューオーリンズのメジャーなハコのひとつになっているというわけだ。

ライブに熱狂している人たちのすぐ横で、お構いなしに「カコーン、カコーン」とボーリングに勤しんでいる客がいる。これは、結構他ではないシチュエーションではないかな?さっきまで自分の横でスヌークスに歓声を贈っていたオヤジがいない、と思ったら、ちゃっかりボーリングに戻っているなんていうわけの判らない状況にも出くわす、独特の空間なのだ。バー・カウンターもあり、結構ポー・ボーイ・サンド、バーガー系統の食い物がうまいのは嬉しい。値段も細かくは覚えてないが、比較的良心的だった。

スヌークスにとってこのミッド・シティー・レーンズは、ホーム・グラウンドのようになっているらしい。ここでの彼は、ジャズフェス会場で観たときと全然違っていて本当にいきいきしていた。

まず、いきなり前座もなしに出てきたスヌークスは客に、「何が聴きたい?」と聞く。みんなが口々に演ってほしい曲名を叫ぶ。するとスヌークスは、「"Drop The Bomb!"か?よっしゃ」とバンドに確認もせずにいきなり弾きだす。珍しい曲が次々飛び出し、彼が1,000曲以上のレパートリーを持っているという話しも納得できる気がした。それよりもバックを務めたジョージ・ポーターとジェリービーンの2人がよくついていけるなぁ、と感心を通り越して驚いてしまった。ジョージ・ポーターは、ときどきブレイクのところなどで間違えてペロっと舌を出していたが、いやでもすごいもんです、ホントに。

この晩演奏された曲の中には、"Lipstick Traces"、"Mary Joe"、"Sleepwalk"などのブラック・トップ盤収録曲だけでなく、ヒューイ・ピアノ・スミスの"Don't You Just Know It"やインペリアル時代の珍しい"If I Could"など盛りだくさん!何の曲のときかは覚えてないが、バッド・カンパニーの"Ready for Love"のコーラスが入ったのにはビックリしましたよ、わたしゃあ。本当に何が飛び出すか判らない、ジュークボックス爺ちゃんだなあ。"Apache"なんて曲も演ってた。

結局この晩は、スヌークスのショーは3ステージ(一回1時間弱くらい)あった。最後のステージでは、ついにギターによる"Tipitina"を披露。大いに盛り上がった。いやぁ、Pヴァイン盤のボーナス・トラックで聴いてはいたけど、生で聴けたのは貴重だと思うよ。カッコよかった。しかし、こんなにアット・ホームなスヌークスのステージっていうのもあるんだなぁと感慨深かった。きっと、慣れた場所と気心の知れたバンド、ファンの暖かい声援、と最高の条件がそろっているからこそなのだろうな。自由な雰囲気な進行だったのもそういう環境があったのと、バックを務めたのが2人という小編成ならではなのだろう。

そうそう、ちょっと話題は逸れるが、スヌークスの最初と2回目のステージの間に白人の 大男たち3人組みのブルース・バンドが出た。すごく大味なバンドで、ギターの音はバカでかいし、歌はがなりまくるし、残念ながら白人ブルースが結構好きな僕も2、3曲でウンザリした。選曲もエルモア・ジェイムズやジミー・リードあたりのいかにもといったものが多く、新鮮味にも欠けた。悪いけど、スヌークスのおやじさんが戻ってきてくれてほっとしましたよ、ぼかぁ。

スヌークス夫妻には来日のとき会っていたので、休憩のときにちょっとだけ声をかけた。スヌークスは、さすが声だけですぐに誰だか判るようで、僕が「スヌークス、こんにちは。覚えてますか?」と話しかけると、「Yeah! お土産のワイン(日本で会った時にチリ産のワインをあげた)ごちそうさま」と答えてくれた。なんだか、嬉しかったなぁ、やっぱり。



4月30日:ルイジアナ・ミュージック・ファクトリー


225 N. Peters St., New Orleans, LA 90130
Phone: 504-523-1094

フレンチ・クオーターの中のレコード屋さん。タワーと並んで、ジャズフェス期間中には店内ライブが連日豪華だ。それもフリー・コンサートなのだから嬉しい。この店のどこにライブをやるスペースが?と言いたくなる狭いウナギの寝床のような店なのだが、強引にやってしまうのです。今年もスヌークスを始め、ゲイトマウス・ブラウン、マーヴァ・ライト、カーミット・ラフィンズ、ワイルド・マグノリアスなど、よだれが垂れてしまうようなラインアップが用意されていた。

スヌークスのここでの演奏は、なんとソロ!前日と同じ赤いストラトを持って弾き語りをしたのだ。これは、そう観れるもんじゃないゾ!お客さんもすごく多くて、超寿司詰め状態。でも、ガッツで前まで行って観たもんね。前に行ったら、周りには「あれれ、昨日のライブでも会いましたね」なんて人が多い。皆すきもん、考えることも行動も似通ってるのかなぁ。そう言えば、現地滞在中、約束もしてないのにやたらと会う人は会ったなぁ。市内は、あんなに人で溢れているのに。そんなものかも知れない。

スヌークスの演奏は1人ということでどんな曲をやるのかと思って期待したが、期待を裏切らず色々やってくれましたよ。"Jesus On The Mainline"なんていう曲までやっちゃうし。でも、スピリチュアルの影響が強いスヌークスのことだから、これがまたいい感じなんだよね。レイ・チャールズのゴスペル色濃厚なナンバー"I'll Drown in My Own Tears"なんて曲も演ってくれた。スヌークスの歌は、やはりレイと似てる。改めてそう思った。客の1人がサム・クックの何とかって曲をやってくれとせがむと、スヌークスはニヤっとして、「サムは好きだからやるけど、その曲じゃないよ。ヒヒヒヒ」と言って演り出した曲は"Wonderful World"!いいなあ、いいなあ。皆にあのときの雰囲気を聴かせてあげられたらなぁ。"Lipstick Traces"では、客がコーラスの部分を合唱してスヌークスを盛りたて、すごく心の暖まったし、時間は短かったけど本当にいいライブだったです。不思議なのは、彼って1人で演ってもバンドでやってるときと同じノリで演っちゃうんだよね。でも全然音がスカスカな感じがしない。バッキングする人がいなくても、合間にカッティングを入れながらがんがんソロを弾いちゃう。いや、素晴らしい。

このライブ、多分持ち時間は30分くらいだったんだろうと思うけど、結局1時間やっちゃったんだよね。スヌークスものってたんだろうね。でも、彼はいつものライブ・ハウスのときと勘違いしていたのか、ステージを降りる際に、「短い休憩を挟んでまたやるから、待っててよ」なんていっちゃって、店の人が慌ててたけど。結局、もう1曲アンコールを演っただけで彼のステージは終わった。でも満足、満足。余談ですが、スヌークスって店内での演奏中、本当にビールを沢山のんでたなぁ。ハイネケンの空きビンがいくつも彼の周りに並べられてた(笑)。

店内演奏をする人は、通常気軽にサインに応じてくれるが、ステージで店員が、「スヌークスは、今日はサインはしないので皆せがまないように」とことわりを入れていた。彼は、目が見えないんだからそりゃそうだよね。スヌークスがその後甲高い声で"Thank you!"って言ってたのが可愛らしかった。スヌークスってもう結構な爺ちゃんだけど、妙に仕草なんかが可愛らしいところがあると思う。別に俺は、変な趣味はないけど。

因みにご存じの人も多いと思うが、この後7月から8月にかけて、スヌークスは2度目の来日公演を行った。初来日のときよりもルースでリラックスした感じの公演だった。それにしても、俺ってここ最近彼のコンサートをよくみてるよなぁ。


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