2021/6/30

Irma ThomasとJon Clearyの新譜  ニューオーリンズ

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先日到着したアーマ・トーマスとジョン・クリアリーの新譜。レコード・プレーヤーが故障してしまって聴けていなかったのですが、この度プレーヤーを新調し、やっと聴くことができました。

これはニューヴェル・レコードというレーベルの「ニューオーリンズ・コレクション」としてリリースされた4枚の中の2つです。LPレコード直販のみのリリースです。本当はあと二つ(エリス・マルサリスとリトル・フレディ・キング)も聴きたかったのですが、1枚60ドルとあまりにも高価でとりあえず2枚だけにしておきました。いずれもコロナ感染拡大直前にレコーディングされた新録アルバムです。

いずれも凝ったことはしていないものの、丁寧な音作りで、充実した内容です。

Jon Cleary / So Swell (Newvelle NVN003)
https://www.newvelle-records.com/collections/shop-newvelle/products/nvn003-jon-cleary
ジェイムズ・シングルトン(b)とジョニー・ヴィダコヴィッチ(ds)という鉄壁なジャズのリズム・セクションに加え、ベテランのサックス奏者、ジェイムズ・リヴァーズも参加し、安定したサウンドを聴かせます。曲はリー・ドーシーの”Lottie Mo”やジム・リーヴスの"I Get The Blues When It Rains”など過去の来日公演でもやっていたカヴァーが中心で、冒険するようなところはないですが、ノリノリです。ヒューイ・スミスの”Tu-Ber-Cu-Lucas and the Sinus Blues”も楽しさ一杯です。彼にこういう曲をやらせると天下一品ですね。

Irma Thomas / Love Is The Foundation (Newvelle NVN001)
https://www.newvelle-records.com/products/nvn001-irma-thomas
アーマ・トーマスは、2008年の「Simply Grand」を最後にラウンダーとの契約が切れたようで、以後シングルやベスト盤が若干あっただけで、新作アルバムは出ていませんでした。それだけに特に期待が高まりました。

多少声がざらついているのを感じますが、彼女の深みのある歌声は健在。もう今年80歳という大ベテランとなりましたが、流れた歳月が歌声に出ているというか、非常に円熟しています。特に”So Long”などバラードに心を動かされます。ここにもジョニー・ヴィダコヴィッチ(ds)が参加していますが、コンガではプロフェッサー・ロングヘアと活動していたことで知られるアルフレッド“ユガンダ”ロバーツも参加しており、華を添えています。彼は昨年5月に亡くなっており、恐らくこれがレコーディングとしては最後なのではと思います。

全体的にしっとりとした選曲が多く、大人しい感じなので、欲を言えば、もう少しアップテンポやブルージーに攻めてもよかったかなという気もします。

ジョン・クリアリーの方も音は非常にクリアで、ジャジーな空気を感じますし、アーマの方も音の仕上がりはジャズ寄りです。この音の仕上がりはレーベルの色なのでしょうね。でも、本人の個性を殺すようなものではありません。

せっかくリリースとなった新譜ですが、限定的な配給なので知らない人も多いのではと思い、紹介させてもらいました。LPレコードは分厚いゲイトフォールドのスリーヴに入っていてジャケットの写真も美しく、そのまま額装したいくらいです。LPはなんと透明な盤でこれはレコードの溝が見えにくく、途中の曲から聴きたい人には難儀な盤でしょう。明るくても殆ど見えないので、DJさんは苦労するかも。

リリースは嬉しいのですが、ファンに手が届きにくいリリース形態は残念です。限定盤なので、興味のある方はお早めに入手することをお勧めします。僕もあと2枚、どうしようかなぁ。エリス・マルサリスはレコーディング直後にコロナで亡くなっており、ニューヴェルの新譜がラスト・アルバムになってしまいました。

Ellis Marsalis with Jason Marsalis / For All We Know (Newvelle NVN004)
https://www.newvelle-records.com/collections/shop-newvelle/products/nvn004-ellis-marsalis-with-jason-marsalis

Little Freddie King / Going Upstairs (Newvelle NVN002)
https://www.newvelle-records.com/collections/shop-newvelle/products/nvn002-little-freddie-king
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2021/6/29

東京オリンピックと二重基準  政治

東京オリンピックまで3週間余り。首都圏でのコロナの状況は危うくなる一方ですが、関係者の動きを見ていると、このまま本気で開催するつもりなのでしょう。僕は反対の声を収めるつもりはありませんが、強行された場合、悲劇的なことが起きないよう祈るばかりです。

まだ政府やオリンピック実行委員会の人たちは、安心安全と念仏のように繰り返しています。まるで安全に行うための道を示すこともなく。先日のウガンダ選手団への対応のずさんさには開いた口が塞がらなかったです。高々9人でこの状況。この先が思いやられます。

色々な意見が飛び交っていますが、僕がどうしても解せないのは、国内のスポーツやライブ・イベントの開催は支持するくせにオリンピックに反対するのは二重基準だという意見です。

朝日新聞社がオリンピック中止を主張すると、「ではオタクで主催している高校野球はいいのか?」と来る。

そういう人に聞きたいです。現在国内で行われているイベントで東京オリンピックの規模と参加国数を持ったものがあるのか、と。

高校野球も含め、現時点で開催されているイベントの殆どは国内で完結しています。世界中から大勢のアーティストや観客が集まることで知られるフジロックでさえも、今年は海外からのアーティストは一切呼んでいません。

そんな中でも観客数を制限したり、中止に追い込まれたりしているのがイベントの現状でしょう。
だから声を大にして言いたいのです。

なぜオリンピックだけは特別なの?

特別な訳がありません。特別扱いにして人々の生命を危険にさらす権利などIOCにも政府にもありません。二重基準を言うのであれば、国民の生命が第一と言いつつ、感染が拡大しても開催に突き進む政府の方がよっぽど二重基準でしょう。彼らにとっての本当の第一は金ですよ。人の命は「大したことにならなければいいな」程度にしか考えていないからこんな対応になるのです。

東京オリンピック規模のロックフェスとか、今そういうものがあれば僕は当然反対します。でもそんなのはありません。元々あり得ません。

一方で、零細なライブハウスやミュージシャンたちには、満足にライブを行うことができない日々が続いています。僕は彼らが感染対策に気を付けながら活動をしていくのを応援します。オリンピック反対とそれは全く矛盾しないはずです。これが二重基準だというのであれば、どこがどう二重基準なのか、説明してほしい。

今東京オリンピックをやっても本当に問題がないのであれば、昨年から完全に止まっている来日公演もどんどんやったらいいんです。

そっちは止まったままなのにオリンピックは何が何でもやる。これこそ、本当の二重基準です。
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2021/6/25

BLUES & SOUL RECORDS 160号発売   BSR誌

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ブルース&ソウル・レコーズ最新号は大サザンソウル特集号です。4月10日に99歳で亡くなったハイ、ゴールドワックス・レコードの創設者、クイントン・クランチを追悼してゴールドワックスに焦点が当てられました。クランチと言えばわずか数年前、96歳にしてウィリー・ハイタワーのカムバック作「Out of the Blue」にプロデューサーとして参加し、大いに話題になったのでした。99歳と言えば、大往生だろうと思います。お疲れ様でした。

今回は、英エイス・レコードの協力の下、O.V.ライト、スペンサー・ウィギンズなど主要アーティストからなるゴールドワックス音源入りのCDも付いていますよ。

ブラック・キーズのインタビュー記事もあります。今回彼らは生前のR.L.バーンサイドやジュニア・キンブローと活動を共にしていたケニー・ブラウン、エリック・ディートンをゲストに迎えて、ヒル・カントリー・ブルースに敬意を込めた作品「デルタ・クリーム」をリリースしています。僕も発注しているのですが、今到着を待っている状況です。(笑)楽しみです。

僕は新譜リヴューコーナーでマリア・マルダー&チューバ・スキニーのCDを紹介。あと、海外ニュースもいつも通り書いております。

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BLUES & SOUL RECORDS NO. 160
2021年6月25日発売
定価: 1,800円+税(税込1,980円)
https://bsrmag.com/magazine/%e7%89%b9%e9%9b%86%e3%80%8e%e3%82%b4%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%83%89%e3%83%af%e3%83%83%e3%82%af%e3%82%b9%e3%81%a8%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%83%95%e3%82%a3%e3%82%b9%e3%83%bb%e3%82%bd%e3%82%a6%e3%83%ab%e3%80%8f/

表紙 ジェイムズ・カー
1964年にメンフィスで設立され、ジェイムズ・カー、スペンサー・ウィギンズ、オヴェイションズというメンフィス〜サザン・ソウルの歴史に欠かせないシンガー/グループの傑作を生み出したゴールドワックス・レコード。その創設者のひとり、クイントン・クランチが今年4月に亡くなった。彼が世に出したソウル名曲の数々をもう一度見つめ直し、60〜70年代に開花し発展したメンフィス・ソウルの世界を案内します。

★ ひたむきな現場主義者クイントン・クランチに捧ぐ[鈴木啓志]
★ メンフィス・ソウルのとびらをくぐると[濱田廣也]
★ ゴールドワックスCDガイド
★ メンフィス・ソウル/R&Bアルバム・ガイド22枚
★ ゴールドワックスの三本柱【1】ジェイムズ・カー[新井崇嗣]
★ ゴールドワックスの三本柱【2】オヴェイションズ[森島繁美]
★ ゴールドワックスの三本柱【3】スペンサー・ウィギンズ [妹尾みえ]
★ ゴールドワックス影の功労者〜メンフィス・ソウル最高のギタリスト クラレンス・ネルスン[鈴木啓志]

【付録CD】エッセンシャル・ゴールドワックス・シングルズ
ゴールドワックス・レコードを代表する3組、ジェイムズ・カー、オヴェイションズ、スペンサー・ウィギンズのほか、O.V.ライト、ウィリー・ウォーカーらによるメンフィス・ソウルの傑作を収録。
[音源提供 Ace Records Ltd. UK]

1. THE LYRICS: Darling
2. O.V. WRIGHT with THE KEYS: That's How Strong My Love Is
3. GENE “BOWLEGS” MILLER: Bow Legged
4. THE OVATIONS featuring LOUIS WILLIAMS: It's Wonderful To Be In Love
5. JAMES CARR: You've Got My Mind Messed Up
6. SPENCER WIGGINS: Old Friend (You Asked Me If I Miss Her)
7. GEORGE & GREER: You Didn't Know It But You Had Me
8. BARBARA PERRY: Say You Need It
9. WEE WILLIE WALKER: There Goes My Used To Be
10. JAMES CARR: A Man Needs A Woman

【その他の主な記事】
● ザ・ブラック・キーズ新作『デルタ・クリーム』/北ミシシッピ・ヒル・カントリー・ブルース傑作アルバム10選[井村 猛]
● アリサの心に火をつけた!? 名ソングライター・コンビ、チャック・ジャクスンとマーヴィン・ヤンシーの仕事/誌上プレイリスト付[林 剛]
● マイルスと仲間たちの“新時代ジャズ”〜CD『Directions In Music 1969 To 1973』を聴く/マイルス作品と共鳴する現代ジャズ・アルバム・ガイド8選[原田和典]
● ジャニスは生きている! ブロードウェイシネマ『ジャニス・ジョプリン』7月公開
● ギブソンからスリム・ハーポのシグネチャー・モデル登場
● デルマーク・レコード創設者ボブ・ケスター氏逝去
●[新作アルバム・リヴュー]ダンプスタファンク/スティーヴ・クロッパー/ロブ・ストーン 他

【連載】
☆ 永井ホトケ隆 好評連載「Fool’s Paradise」第8回
☆ KEEP ON KEEPIN’ ON ソウル/ファンク名盤のメッセージを読む 第3回 スティーヴィ・ワンダー 『インナーヴィジョンズ』/中田 亮
☆ SONS OF SOUL/林 剛
☆ ゴナ・ヒット・ザ・ハイウェイ〜西海岸と南部を結ぶ「I-10」沿道音楽巡り/日向一輝
☆ なんてったってインディ・ソウル 蔦木浩一×齋藤雅彦×編集部H
☆ フード・フォー・リアル・ライフ 〜歌詞から見るブルース&ソウルの世界/中河伸俊
☆ 小出斉の勝手にライナーノーツ「JOHNNY YOUNG / I Can’t Keep My Foot From Jumping」
☆ リアル・ブルース方丈記/日暮泰文
☆ 鈴木啓志のなるほど! ザ・レーベル VOL.89 「Fee」
☆ ゴスペル・トレイン「ブラインド・ジョー・タガート」/佐々木秀俊+高橋 誠
☆ BLUES IS MY BUSINESS no.236/吾妻光良
☆ いづみやの曲追い酩酊談/佐々木健一
☆ 原田和典の魂ブチ抜き音楽
☆ 文聞堂書房〜古書掘りコラム/出田 圭
☆ ICHIのチタリン・サーキット最前線
☆ International Music Stroll〜世界の音楽にぷらりと出会おう/ワダマコト
☆ ニッポンの。国内アーティスト新譜紹介/妹尾みえ
☆ ブルース&ソウルが流れる店/轟美津子/スカンクちかの
☆ Ain’t That Good News 国内ライヴ/イヴェント情報ほか
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2021/6/14

RIP Roger Hawkins 1945-2021  R&B/ソウル

マッスルショールズ・リズム・セクション(通称:ザ・スワンパーズ)のドラマー、ロジャー・ホーキンズが亡くなりました。75歳でした。

彼とザ・スワンパーズは、リック・ホールのフェイム・スタジオのセッション・ミュージシャンとして頭角を現し、パーシー・スレッジ、ウィルソン・ピケット、アリサ・フランクリンなどのレコードのその演奏を刻みました。

1969年には、バンドはリック・ホールから離れ、自らのマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオを立ち上げます。このスタジオではロック、ポップ系のアーティストも多くレコーディングを行い、1970年代にかけてボズ・スキャッグス、ローリング・ストーンズ、ステープル・シンガーズ、ポール・サイモンなど多くのアーティストの名作がこのスタジオから生まれました。ロジャーの演奏はその多くで聴くことができます。

ロジャー・ホーキンズは、5月20日、アラバマ州シェフィードの自宅にてなくなったそうです。75歳でした。慢性閉塞性肺疾患を含む複数の疾患で闘病中だったそうです。彼が亡くなったことで、スワンパーズで存命なのはベースのデイヴィッド・フッド一人となってしまいました。(キーボードのバリー・ベケットは2009年に、ギターのジミー・ジョンソンは2019年に他界しています。)

ロジャーとスワンパーズの活躍については、2013年の映画「Muscle Shoals(邦題:黄金のメロディ マッスル・ショールズ)」を見ることをお勧めします。ロジャーもインタビューで多く語っていて非常に面白い映画です。ウィルソン・ピケットが初めてフェイム・スタジオでレコーディングした際のことを語っているシーンで、「ドラマーがファンキーで素晴らしかった」と語っているのが印象に残ります。ザ・スワンパーズは全員白人でしたが、彼らはR&Bのスターたちをも満足させるグルーヴを持っていたのです。

映画「Muscle Shoals」
https://black.ap.teacup.com/sumori/1464.html
※これを書いた時点では日本公開は未定でしたが、翌2014年に公開になりました。

セッション・ミュージシャン、そしてスタジオの経営者のひとりとして活躍したロジャー・ホーキンズ。いわゆる裏方的存在ではありましたが、その存在は大きな大きな足跡を残しています。RIP。


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ウィルソン・ピケットをも唸らせたファンキーなドラミング
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