2011/4/15
Johnny Winter来日公演レポート ブルース
中止になった1990年の来日公演チケットを泣く泣く払い戻しに行ってから21年。待った、待った、長かった。
その間、本人の体調不安も伝わってきていたし、もう正直日本では見れないと思っていた。大震災後の大変な状況の中だったが、彼はちゃんと来てくれた。当たり前のことなのに、それだけでも感無量だ。
開演30分前、会場は既に多くのファンの熱気で溢れていた。ドリンクチケットを交換する列がロビーに果てしなく続く。ブルース系のライブで、こんなに賑わっているのを見たのは初めてかも知れない。ジョニーの人気健在なり。喉も乾いていたけど諦めてフロアへ。
そして定刻を5分ほどまわった頃、バンドの面々がステージに揃いアップテンポなインストをやり出すと、程なくジョニーが登場した。おおお!確かにジョニーだ。一機に周囲は前に行きたい客の押しくらまんじゅうが始まる。皆「この瞬間を待っていたんだぜ!」と言わんばかりだ。
近年の海外の公演を見た人から、一人では歩けないのでステージにも手を引いてもらって登場したとか、もう目は殆ど見えてないとか、そういう話しも聞いていたけど、この日は、そんな様子ではなかった。誰の助けを借りることもなく、足取り軽くステージ袖から登場。結構元気そうだ。でも、腰が曲がっているので、そそくさと歩いて来たその様子には巨匠らしき風格はなく、何だか「遅れてゴメン!」と詫びを入れながら入って来た小坊主のようで、妙に可笑しかった。
しかし愛用のヘッドレス・ギター、黒のレーザーを手にして、一旦弾きだすと、その音はまさにジョニー・ウィンター。かつてのような早弾きはなく、ミスタッチも結構あったけど、あまり気にならなかったのは全体的にプレイに切れがあったからだと思う。もちろん、僕が興奮していたからというのもあるんだけどね。
1曲目はフレディ・キングの"Hideaway"。ブルースのツボフレーズがびしばし決まる。その後も、2004年の「I'm A Bluesman」からの選曲を含め新旧織り交ぜた選曲が続く。殆どがアップテンポなブルースナンバー。聞くところによると、セットリストが作ってあって、その通りに演奏していたそうだ。
やる前に曲名を言う以外は殆ど語らず、黙々と次々曲を繰り出す。ファースト収録の"Good Morning Little School Girl"では、鋭く切り込むイントロのギターが響くと、待ってましたとばかりにファンは大きな声援を送った。やっぱり、皆が熱心に聴いていたのはこの頃の作品なんだよね。
マディ・ウォーターズの"Got My Mojo Working"、そして"Johnnny B. Goode"では、自然と大合唱に。ジョニーの調子も更に上向いて行った。
フレディ・キングの"Tore Down"では、ドラマーのVitoが歌う。"Don't Take Advantage on Me"では、途中、クリームの"Sunshine of Your Love"のリフを弾いたり、後半は"Gimme Shelter"になるというやや強引な展開も見せた。
ラスト2曲、"Bony Moronie"から"It's All Over Now"への展開がまた熱く、その曲の流れは「Captured Live」の演奏を思い起こさせた。前者ではセカンド・ギターのネルソンとのツイン・リードでリフを紡ぎ出す。まだまだ行けるじゃん、ジョニーさんよぉ。
そして、最大の見せ場はアンコールに。それまで、ずっとレーザー一本で通していたジョニーが、遂にファイヤーバードを持ち出し、この日初めてスライドをプレイした。「ミシシッピのブルースだ」と言ってやり出したのはエルモア・ジェイムズの"Dust My Broom"。ブルース・ファンにはすっかりおなじみの曲だが、ジョニーが近日リリースする新作「Roots」に収録されているそうだ。レーザーの鋭い音もいいけど、ファイヤーバードの音は得難いものがあった。
もうこれで終わりかな?アンコール2曲はやらないよね?と諦めていたけど、続いてやった、やった"Highway 61 Revisited"。もう、最高!ボトルネックが弦の上を滑る滑る!ギュイイイーン!これ1曲だけでも見に来た価値があったというもの。
アンコールを入れても正味80分程度と短めのステージだったが、ずっと以前に見た時も正味1時間そこそこだったし、今回は間髪入れずに沢山演奏してくれたので、満足感は高かった。
67歳のジョニー。その姿を見た瞬間、「だいぶ老けこんだな」と思ったのも事実。昔と比べると音も勢いの点では明らかに落ちているが、この日聴かせたのは、逆に年輪を重ねた今だからこそできる音だったと言えるのではないか。スピード感こそ落ちたが、存在感は変わらなかった。
ジョニーに対し、あちこちから「ありがとう!」「Thank you!」と声が上がっていた。僕も本当に来てくれてありがとうと言いたい。
Johnny Winter Setlist
Wed., April 13, 2011
Zepp Tokyo
19:05-20:30
1. Hideaway [Live in NYC '97, 1998]
2. Sugar Coated Love [I'm a Bluesman, 2004]
3. She Likes To Boogie Real Low [Hey, Where's Your Brother?, 1992]
4. Good Morning Little School Girl [Johnny Winter, 1969]
5. Got My Mojo Working [Live in NYC '97, 1998; Roots, 2011]
6. Johnny B. Goode [Second Winter, 1970]
7. Black Jack [Live in NYC '97, 1998]
8. Tore Down (Vito Liuzzi on vo.)
9. Lone Wolf [I'm a Bluesman, 2004]
10. Don't Take Advantage on Me [Guitar Slinger, 1984]
11. Bony Moronie [Saints & Sinners, 1974]
12. It's All Over Now [Captured Live, 1976]
-encore-
13. Dust My Broom [Roots, 2011]
14. Highway 61 Revisited [Second Winter, 1970]
[Personnel]
Johnny Winter - gt., vo.
Paul Nelson - gt.
Scott Spray - b.
Vito Liuzzi - ds., vo.
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